耽美なる箱庭





 人生初の居酒屋。

 大学生や社会人で賑わっていて、アルコールの入った笑い声や話し声が、右からも左からも聞こえる。

 テーブルには、焼き鳥や唐揚げ、枝豆、だし巻き玉子などの定番メニューが並んでいて、どれから食べようと悩んでるうちに、乾杯の音頭がされた。

 襖で仕切られている個室みたいな席で、主役のように真ん中に座らされたわたしは、千佳くんと麗くんの間に挟まりながら、ノンアルをちびちび。

 なにもかも、引きこもりにはハードルが高い。


「のーのちゃん、どれ食べたい? 俺が取るよ」

「んん、唐揚げ……?」

「唐揚げね。はい、あーん」


 自分の箸あるんだけどな。麗くんも過保護だ。

 食べさせてもらうか迷ってると、わたしの代わりに千佳くんが食べた。そしてなぜか「ん」と自分の箸で唐揚げをわたしの口元に差し出してくる。


「自分で食べれるよ」

「知ってる」

「は〜、器ちっせぇ」

「黙れ」


 このふたり、ほんとに仲良いんだよね?

 言い合いしてるふたりを傍目に、わたしは辺りを見渡してみる。個室にしてくれたのは配慮なのかな。人目が少ないおかげで、フードを外せる。