わたしの戸惑いが通話口から伝わったのだろう。麗くんの舌打ちとため息が、聞こえてきた。気まずい沈黙が漂う。
《ほんとになんも聞いてない?》
「……うん」
《じゃあさらっと説明する。今回の春夏コレクションは、海外の有名デザイナーとコラボするから結構気合い入ってて、その目玉になる企画のコンセプトに合うのがののちゃんだと思ったから、モデルになってくれないか千佳経由で打診したわけ》
ふむ。モデルって、そういうこと。
幼少期に一度会っただけのわたしがモデル? という疑問もあったけど、それも麗くんは分かりやすく解消してくれた。
飲み会で千佳くんのスマホをうっかり覗いたら、成長したわたしの写真があり、これだ!となったらしい。
《身元も非公開で顔も半分隠す。ランウェイを歩かせたりしない。だから今回の広告塔になってほしいことを伝えてって言った。そしたら、あっさり無理って返事が返ってきて、諦められなかったからしつこく本人に1回会って説明させてって頼んでたんだけど……》
麗くんの口から、再び呆れ混じりのため息が零れた。
ここまできたら話の流れがわかる。千佳くんはわたしにモデル依頼を伝えてない。でも恰も本人が嫌がってるとして断っていた。こんなの、騙されたも同然だ。



