耽美なる箱庭




 固まる千佳くんを前に、わたしも食べたはいいものの扱いに困って、仕方なく指を吸ってみる。

 すると、呆れたような音色で、


「おしゃぶりじゃねぇんだけど」


 と言われてしまった。

 わたしの口の中から引き抜いた指を、なぜかぺろりと自分の舌で舐めた千佳くんが「手は雑菌多いから以後禁止」と、また禁止事項を増やしてくる。

 それからお粥を作ると寝室を出て行ってしまい、ひとり残されたわたしはぼんやり天井を見上げた。


「(甘やかされてるなぁ……)」


 甘えているし、甘やかされている。

 今回熱出したのも、タイミングがよすぎて、自立したい気持ちを拒まれてるみたいだ。

 課題が山積みで、なにから手をつけていいかわからないまである。

 熱で朦朧としてくる意識。

 ぼーっと、考えを巡らせていると、どこからか着信音がした。


「ん? 千佳くんのスマホ? 相手は──」


 画面に表示されていたのは、【ミレイ】という名前。

 千佳くんのスマホを手に取ったまま、動揺したわたしは、操作をまちがえて通話ボタンを押してしまった。


「……わっ、え、どうしよう……。あの、わたし、幼なじみのもので……」


 通話相手の〝ミレイさん〟に、弁解する。

 だけど、返答はなく。無言で切ってしまえば良かったと思ったのも束の間──


《……え? まって、ののちゃん?》


 通話口からは、野太い──男の人の声がした。