病院に行き、腕を3針縫った千佳くん。
事の仔細を語ることはしなかった。なんて誤魔化したかは知らないけど、親にも医者にも言わなかった。
わたしはというと、事件のあと一週間熱を出して寝込んで、悪夢にうなされた。
「のの、俺のせいだから」
「ちがうよ。わたしが、怪我させた」
「それこそ事実が違うだろ。のの、誰にも知られたくないなら、黙ってていい。なかったことにして忘れていい。こわいなら、俺にだけ縋れ」
罪悪感を滲ませた千佳くんが、わたしに寄り添う。
甘えたらだめだとわかっていても、優しいぬくもりを拒否できなかった。
その日から外がこわくて、がんばって学校にも通っていたけど、告白で呼び出されて男の人とふたりきりになる度にフラッシュバックしそうになる日々。
頼れる先は千佳くんしかいなくて、完全に依存した。
だから、依存が恋になるのも、自然流れで。
「千佳くん、好きな人いるの?」
部屋で、同じベッドに横になりながら、わたしは我慢できずに訊いてしまった。
返ってきたのは、
「……いる」
という短い答え。
失恋の痛みが、ちくりと心臓を刺激した。
「ののは?」
「……いない」
好きな人がいるなんて、はったりもできない。
わたしの世界は狭くて小さくて、好きな人がいるなんて言ってしまえば、それは千佳くん以外ありえなかったから、すぐばれると思った。



