可愛く着飾って、もっと愛して〜強引でめちゃくちゃな私のクチュリエ様〜

一成のちょうどいいとこまでを待って帰る支度をした。しっかり汗を拭いてから制服に着替えて、コートを着てマフラーを巻いて、外はそれくらい寒いから。

「完全防備過ぎるだろ」

「健康管理も必須事項だから!」

そう言ったら、くすって一成が笑った。

一成はたまに柔らかい表情を見せる。

私を見て笑う時、そんな顔をする。

それを見て私は少しだけ恥ずかしくなっちゃって頬を染めるの。

「じゃ、帰るぞ」

「うん…っ」

一成を追いかけて隣を歩く、ひゅーっと吹く風が冷たくて染まっていた頬はすぐに平穏を取り戻した。

「ファッションショーまであと少しだよね」

「そうだな」

「テレビでも言っててびっくりしたんだけど」

「久しぶりの日本での活動らしいからな、そりゃ注目されるだろ」

「……。」

チケットは即完だったらしい。

そっか、そうだよねチケットいるよね。

お金払わなきゃ見られないよね、だってKAZUSHIのファッションショー…

「緊張してんのか?」

「するよ!めちゃくちゃするよ!!」

聞けば聞くほど自信はなくなっていくんだもん。

「ナノはいつも通りでいい」

前を見て歩いて行く、そんな一成の顔を見るように少しだけ視線を上げた。

「いつも通り歩けば上手くいく、俺がそう思ってんだから大丈夫だ」

…何にも自信はないけど、私があんな大舞台を歩けるなんて到底思えないけど。 

でも、一成の言葉だけは信じられる。

「うん、がんばる」