人は美味しいものを食べると幸せになれる単純な生き物だと、今日身を持って知った。
幸せな気持ちで2人、大きな寝台に寝転ぶ。
「さすがに、もうこれ以上は食べれないな。」
隣には晴明が同じように大の字になって寝転んでいる。それを見て香蘭もまた幸せな気持ちになって、眠気さえもやって来る。
ああ、幸せとは無縁の人生を送って来た私だけど、今こんなにも手を伸ばせば直ぐ側に愛しい人がいて、多くの人に守られて、安心出来る世界にいるのだと香蘭は実感した。
「香蘭の居ない世界はもう考えられない。
それに…さすがに疲れた。
少しだけ早めに嫁に来てはくれないだろうか…。
例えば…そうだな、半年後。その頃までにそなたが住みやすい環境を整えるつもりだ。」
晴明は、片肘を枕に香蘭を覗きこむ。
「はい…私も、晴明様がいない世界は寂しくて…。自分で決めた事ですら既に根を上げてしまいそうです。」
香蘭も晴明の方に横向きになり、その整った綺麗な顔を見つめて微笑む。
晴明は腕を伸ばし、その白く餅のような柔らかな頰を撫ぜ、
「それは、早めに嫁に来てくれると言う事か?」
と、もう一度問う。
「私はあなたのお側に居られるのなら、なんだって構わないのです。」
と、また欲のない事を言う。
「ならば正妃でもよいではないか。」
「それは…私にはとても務まりません。世の中の人々が許してはくれないでしょう。」
「なかなか首を縦には振ってくれないのだな。そなたは変なところで頑固で困るが…嫌いではない。むしろその意志の強いところが好ましくもあるから、無理強いは出来ない。
半年後、事が全て整ったらそなたを迎えに行こう。その時には、俺も皇帝の座を兄に譲る事にしよう。」
突然、思い立ったように重大な事をサラッと言ってのける。
「な、何を…言ってらっしゃるのですか⁉︎」
香蘭は驚きバッと身体を起こす。
「今に思い立った事ではない。
いつか政権は兄に帰そうと思ってはいたのだ。俺にはそなたが必要だ。しかし、正妃にはなりたくないと言うのならば、俺が皇帝を辞めればよい。簡単な話しだ。」
でも、でも世の中が…彼を支えて今も奮起しているてわあろう沢山の家臣が…それを許すとは思えない。
「この国にあなたは必要なお方です。」
泣きそうな顔で香蘭は訴える。
「皇帝の代わりは誰でも出来る。だけど、香蘭の隣にいる男は誰にも譲れない。」
そう言う晴明の目は真っ直ぐで揺るぎない。
香蘭はたまらず晴明の胸元に抱き付き、自分の浅はかさを恥じる。
「ごめんなさい…考え無しに正妃は嫌だとわがままでした…少し時間を下さい。私に正妃が務まるのか…ちゃんと考えます。」
「俺が思うに、出来る出来ないではなく、成せばなるようになるのだ。俺がそうだったように…そなたはそなたのままで充分だ。」
声明は大切な宝物を抱きしめるように、そっと香蘭を抱きしめて目を閉じる。
「今夜は疲れた。もう、寝よう。」
そう言って晴明は目を閉じる。
彼女を失うくらいならこの地位なんて簡単に手放せる。いつでもそう出来るように、未だ軟弱な地盤を硬める事を早めなければ…。
夢と現実の狭間でそう思い、フッと意識を手放した。
幸せな気持ちで2人、大きな寝台に寝転ぶ。
「さすがに、もうこれ以上は食べれないな。」
隣には晴明が同じように大の字になって寝転んでいる。それを見て香蘭もまた幸せな気持ちになって、眠気さえもやって来る。
ああ、幸せとは無縁の人生を送って来た私だけど、今こんなにも手を伸ばせば直ぐ側に愛しい人がいて、多くの人に守られて、安心出来る世界にいるのだと香蘭は実感した。
「香蘭の居ない世界はもう考えられない。
それに…さすがに疲れた。
少しだけ早めに嫁に来てはくれないだろうか…。
例えば…そうだな、半年後。その頃までにそなたが住みやすい環境を整えるつもりだ。」
晴明は、片肘を枕に香蘭を覗きこむ。
「はい…私も、晴明様がいない世界は寂しくて…。自分で決めた事ですら既に根を上げてしまいそうです。」
香蘭も晴明の方に横向きになり、その整った綺麗な顔を見つめて微笑む。
晴明は腕を伸ばし、その白く餅のような柔らかな頰を撫ぜ、
「それは、早めに嫁に来てくれると言う事か?」
と、もう一度問う。
「私はあなたのお側に居られるのなら、なんだって構わないのです。」
と、また欲のない事を言う。
「ならば正妃でもよいではないか。」
「それは…私にはとても務まりません。世の中の人々が許してはくれないでしょう。」
「なかなか首を縦には振ってくれないのだな。そなたは変なところで頑固で困るが…嫌いではない。むしろその意志の強いところが好ましくもあるから、無理強いは出来ない。
半年後、事が全て整ったらそなたを迎えに行こう。その時には、俺も皇帝の座を兄に譲る事にしよう。」
突然、思い立ったように重大な事をサラッと言ってのける。
「な、何を…言ってらっしゃるのですか⁉︎」
香蘭は驚きバッと身体を起こす。
「今に思い立った事ではない。
いつか政権は兄に帰そうと思ってはいたのだ。俺にはそなたが必要だ。しかし、正妃にはなりたくないと言うのならば、俺が皇帝を辞めればよい。簡単な話しだ。」
でも、でも世の中が…彼を支えて今も奮起しているてわあろう沢山の家臣が…それを許すとは思えない。
「この国にあなたは必要なお方です。」
泣きそうな顔で香蘭は訴える。
「皇帝の代わりは誰でも出来る。だけど、香蘭の隣にいる男は誰にも譲れない。」
そう言う晴明の目は真っ直ぐで揺るぎない。
香蘭はたまらず晴明の胸元に抱き付き、自分の浅はかさを恥じる。
「ごめんなさい…考え無しに正妃は嫌だとわがままでした…少し時間を下さい。私に正妃が務まるのか…ちゃんと考えます。」
「俺が思うに、出来る出来ないではなく、成せばなるようになるのだ。俺がそうだったように…そなたはそなたのままで充分だ。」
声明は大切な宝物を抱きしめるように、そっと香蘭を抱きしめて目を閉じる。
「今夜は疲れた。もう、寝よう。」
そう言って晴明は目を閉じる。
彼女を失うくらいならこの地位なんて簡単に手放せる。いつでもそう出来るように、未だ軟弱な地盤を硬める事を早めなければ…。
夢と現実の狭間でそう思い、フッと意識を手放した。



