宿の部屋に到着して、羽を伸ばすようにベッドに転がる。
「お疲れ様でした。
それにしても…ふふっ…あの方、分かり易く嫉妬してましたねー。」
同室の寧々ちゃんが思い出し笑いをしながら言ってくる。
「えっ!いつ…?」
全く分からず聞き返す。
「どう見ても大人気ない嫉妬でしたよ?
姐様が、親しげに俊宇君に話しかけてた時です。」
「だって、あれは…ただ俊宇君が心配だっただけで…。」
「あの方は普段感情が表に出ないくせに、姐様が絡むと途端に分かり易いから面白くて、つい笑ってしまいます。」
「そんなに?」
「気が付かないのは姐様だけですよ。」
寧々ちゃんがまた可笑しそうに笑い出す。
私もつられてふふっと笑う。
「姐様、早くお支度してお部屋に言ってあげて下さい。多分かなり無理をして、時間を作って来てるはずですから。」
「そうね。…急がなくっちゃっ。」
こうしてはいられないとベッドから飛び起きて、舞台用に結った髪をほどき、化粧を落として浴室へと急ぎ入る。
温かいお湯に浸かるこの瞬間、舞台で張り詰めていた気持ちが一気に解放されて、元の自分に戻れる気がする。
いつもは1時間ほどゆっくり浸かって身体をほぐしていくのだけど、あれほど会いたかった晴明様が待っていてくれる。そう思うと気ばかり焦り、髪を乾かすのもそこそこにバタバタと支度をして部屋を出る。
すると部屋の前で護衛してくれていた周隊長が、
「こちらです。」
と、晴明様の居る部屋まで案内してくれる。
「周隊長は、あの方が来るのを知っていたのですか?」
道すがら聞いてみると、
「公務が終わり次第来られる事は聞いていましたが、今日だとは知りませんでした。」
と、教えてくれる。
「他の隊員の方達には?」
「お忍びで来られてますので、隊員には増員兵としか伝えていません。ご内密にお願いします。」
「分かりました。」
連れて来られたのは廊下を渡りずっと奥の角にある、この宿で1番高いだろうお部屋特別室だった。
「こちらの奥になります。」
周隊長はそう言って、私にまで臣下の礼をとる。
「周隊長…私にまで辞めて下さい。私はただの踊り子です。」
「しかし、貴女様は陛下が最も大切にするお方ですから。今回の事でそれが良く分かりました。どうか、今だけはこうさせて下さい。」
せっかく親しくなった関係が少し離れてしまったみたいで寂しく思う。でもきっとこれが、皇帝である晴明様の日常なんだと思うと、受け入れなければと思った。
「ありがとうございました。」
「今宵はこれで失礼致します。陛下には隠密の兵が着いておりますので、ご安心を。」
そうか…皇帝である彼がたった1人で、しかも護衛の真似なんて、万が一危険な目にあったらと心配していたけど、いつだって見えない所に隠密がいて、彼を守っていてくれるんだ。
この国にとってあの方はとても大事な存在だから。
「お疲れ様でした。
それにしても…ふふっ…あの方、分かり易く嫉妬してましたねー。」
同室の寧々ちゃんが思い出し笑いをしながら言ってくる。
「えっ!いつ…?」
全く分からず聞き返す。
「どう見ても大人気ない嫉妬でしたよ?
姐様が、親しげに俊宇君に話しかけてた時です。」
「だって、あれは…ただ俊宇君が心配だっただけで…。」
「あの方は普段感情が表に出ないくせに、姐様が絡むと途端に分かり易いから面白くて、つい笑ってしまいます。」
「そんなに?」
「気が付かないのは姐様だけですよ。」
寧々ちゃんがまた可笑しそうに笑い出す。
私もつられてふふっと笑う。
「姐様、早くお支度してお部屋に言ってあげて下さい。多分かなり無理をして、時間を作って来てるはずですから。」
「そうね。…急がなくっちゃっ。」
こうしてはいられないとベッドから飛び起きて、舞台用に結った髪をほどき、化粧を落として浴室へと急ぎ入る。
温かいお湯に浸かるこの瞬間、舞台で張り詰めていた気持ちが一気に解放されて、元の自分に戻れる気がする。
いつもは1時間ほどゆっくり浸かって身体をほぐしていくのだけど、あれほど会いたかった晴明様が待っていてくれる。そう思うと気ばかり焦り、髪を乾かすのもそこそこにバタバタと支度をして部屋を出る。
すると部屋の前で護衛してくれていた周隊長が、
「こちらです。」
と、晴明様の居る部屋まで案内してくれる。
「周隊長は、あの方が来るのを知っていたのですか?」
道すがら聞いてみると、
「公務が終わり次第来られる事は聞いていましたが、今日だとは知りませんでした。」
と、教えてくれる。
「他の隊員の方達には?」
「お忍びで来られてますので、隊員には増員兵としか伝えていません。ご内密にお願いします。」
「分かりました。」
連れて来られたのは廊下を渡りずっと奥の角にある、この宿で1番高いだろうお部屋特別室だった。
「こちらの奥になります。」
周隊長はそう言って、私にまで臣下の礼をとる。
「周隊長…私にまで辞めて下さい。私はただの踊り子です。」
「しかし、貴女様は陛下が最も大切にするお方ですから。今回の事でそれが良く分かりました。どうか、今だけはこうさせて下さい。」
せっかく親しくなった関係が少し離れてしまったみたいで寂しく思う。でもきっとこれが、皇帝である晴明様の日常なんだと思うと、受け入れなければと思った。
「ありがとうございました。」
「今宵はこれで失礼致します。陛下には隠密の兵が着いておりますので、ご安心を。」
そうか…皇帝である彼がたった1人で、しかも護衛の真似なんて、万が一危険な目にあったらと心配していたけど、いつだって見えない所に隠密がいて、彼を守っていてくれるんだ。
この国にとってあの方はとても大事な存在だから。



