一座の一行は本日泊まる宿へと向かう。
赤い提灯が並ぶ繁華街を通ると、名前を呼ぶ声援が聞こえて来る。
きっと今夜の公演を見てくれた客が、ほろ酔い気分で繁華街を歩いていたのだろう。
同じ馬車に乗る春麗がすかさず手を振って答えている。
「鈴蘭ちゃーん!」
数人の男性が揃って少し向こうから手を振って来る。
私も春麗に習って小さく手を振る。普段はここまでの繁華街はないから、それだけで都に近いことが実感出来る。
「鈴蘭!握手してー!」
先程の酔っ払いの1人が馬車の後を走って着いて来る。
「危ないのでおやめ下さい!」
窓から顔を出して寧々ちゃんが叫ぶ。
すると、すかさず護衛の俊宇が馬から飛び降りて、走って来る酔っ払いを止めに入る。馬車はそのまま先へと急ぐから、揉み合う2人がどんどん小さくなって行く。
「俊宇君…大丈夫でしょうか?」
私は心配になって、左窓近くにいる周隊長に慌てて尋ねる。
「大丈夫です。ああ見えて奴は格闘では負け知らずですから、直ぐに戻って来ますよ。」
馬上から落ち着いた雰囲気で隊長が言うので、私は少しだけ肩を撫で下ろした。
隊長は一礼して俊宇君が抜けた前方へと移動していく。隊長が抜けた場所に、今度は真後ろを着いてきてた晴明様が、馬を巧みに操って左窓近くまで移動して来た。
彼の乗馬姿なんて初めて見るから、そつなくこなす姿につい見惚れてしまう。
その目線に気付いたのか、寧々ちゃんが不審な顔を彼に向ける。
護衛は普段から頭に黒い頭巾を被り、口元は黒い布で覆われているから目元しか見えないのだけど、寧々ちゃんは一生懸命目を凝らし、その鋭く綺麗な眼差しを見つめ、
「あっ!!」
と、突然奇声を上げて慌てて口元を両手で抑える。
ああ…もう直ぐにバレてしまったようだ。
寧々ちゃんを騙す事なんて難しい…。
「寧々ったら突然どうしたの?」
向い側に座る春麗が驚いている。
「すいません…忘れ物を思い出して。」
上手く誤魔化し事なきを得る。
そして、窓から寧々ちゃんは身を乗り出して、
「新しい護衛さん、何故こんなとこにいるんですか?もっと大切な任務があるのでは?」
と平然と晴明様に向かって嫌味を言ってのける。
護衛に扮した晴明様が、
「この護衛の仕事ほど大事な任務がどこにありますか?」
と、平然と言ってのける。
そのタイミングで、パカパカパカパカ…と早馬が近付いてきて馬車の後ろに並走する。
私は右窓から顔を出し、
「俊宇君大丈夫だった⁉︎」
と声をかける。
「問題ありません。警察に引き渡すのに手間取ってしまって…。」
「良かった…怪我はない?」
「大丈夫です。ご心配には及びません。」
と、返答が帰って来たのでホッとした。
「鈴蘭殿、危ないですので窓から頭を出さないように。」
護衛に扮した晴明様が、咳払いしながらそう言ってくる。
「ごめんなさい…。」
ハッとして、シュンとなって小さく謝る。
「ふふっ…ふふふ…」
すると寧々ちゃんは何故か突然笑い出すから、どうしたのだろうと首を傾げた。
赤い提灯が並ぶ繁華街を通ると、名前を呼ぶ声援が聞こえて来る。
きっと今夜の公演を見てくれた客が、ほろ酔い気分で繁華街を歩いていたのだろう。
同じ馬車に乗る春麗がすかさず手を振って答えている。
「鈴蘭ちゃーん!」
数人の男性が揃って少し向こうから手を振って来る。
私も春麗に習って小さく手を振る。普段はここまでの繁華街はないから、それだけで都に近いことが実感出来る。
「鈴蘭!握手してー!」
先程の酔っ払いの1人が馬車の後を走って着いて来る。
「危ないのでおやめ下さい!」
窓から顔を出して寧々ちゃんが叫ぶ。
すると、すかさず護衛の俊宇が馬から飛び降りて、走って来る酔っ払いを止めに入る。馬車はそのまま先へと急ぐから、揉み合う2人がどんどん小さくなって行く。
「俊宇君…大丈夫でしょうか?」
私は心配になって、左窓近くにいる周隊長に慌てて尋ねる。
「大丈夫です。ああ見えて奴は格闘では負け知らずですから、直ぐに戻って来ますよ。」
馬上から落ち着いた雰囲気で隊長が言うので、私は少しだけ肩を撫で下ろした。
隊長は一礼して俊宇君が抜けた前方へと移動していく。隊長が抜けた場所に、今度は真後ろを着いてきてた晴明様が、馬を巧みに操って左窓近くまで移動して来た。
彼の乗馬姿なんて初めて見るから、そつなくこなす姿につい見惚れてしまう。
その目線に気付いたのか、寧々ちゃんが不審な顔を彼に向ける。
護衛は普段から頭に黒い頭巾を被り、口元は黒い布で覆われているから目元しか見えないのだけど、寧々ちゃんは一生懸命目を凝らし、その鋭く綺麗な眼差しを見つめ、
「あっ!!」
と、突然奇声を上げて慌てて口元を両手で抑える。
ああ…もう直ぐにバレてしまったようだ。
寧々ちゃんを騙す事なんて難しい…。
「寧々ったら突然どうしたの?」
向い側に座る春麗が驚いている。
「すいません…忘れ物を思い出して。」
上手く誤魔化し事なきを得る。
そして、窓から寧々ちゃんは身を乗り出して、
「新しい護衛さん、何故こんなとこにいるんですか?もっと大切な任務があるのでは?」
と平然と晴明様に向かって嫌味を言ってのける。
護衛に扮した晴明様が、
「この護衛の仕事ほど大事な任務がどこにありますか?」
と、平然と言ってのける。
そのタイミングで、パカパカパカパカ…と早馬が近付いてきて馬車の後ろに並走する。
私は右窓から顔を出し、
「俊宇君大丈夫だった⁉︎」
と声をかける。
「問題ありません。警察に引き渡すのに手間取ってしまって…。」
「良かった…怪我はない?」
「大丈夫です。ご心配には及びません。」
と、返答が帰って来たのでホッとした。
「鈴蘭殿、危ないですので窓から頭を出さないように。」
護衛に扮した晴明様が、咳払いしながらそう言ってくる。
「ごめんなさい…。」
ハッとして、シュンとなって小さく謝る。
「ふふっ…ふふふ…」
すると寧々ちゃんは何故か突然笑い出すから、どうしたのだろうと首を傾げた。



