一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

夜も更けた暗がりに護衛してくれる残り2人を探してうろうろと歩く。

あっ!最後の1人。裏口の扉付近に、江(こう)さんらしき人を見つけて駆け寄る。

「お疲れ様です。あと少しで片付けが終わり…。」
話しかけながら見上げると、えっ…!?

なんで…どうして!?

その顔を煽り見て驚きの余り固まる。
どういう事?私、幻を見てるの…?

会いたい気持ちが募り過ぎてきっと幻覚を見てるんだ。と、瞬きを何度か繰り返す。

「ありがとう。香蘭、俺にくれるのか?」
優しい声が心に響き、思わず涙が溢れてしまう。

「…どうして?…本物、ですか…?」
自分の目が信じられくて見つめ続ける。

フッと笑ったその笑顔は紛れもなく晴明様で…
涙が流れ出て止まらない。

「俺に影武者はいないが…?
時間をやり繰りして早めに迎えに来たんだ。久しぶり、香蘭。」
フワッと頬を触れられて、気持ちが溢れてつい抱きついてしまう。

「…晴明様、お会い、したかったです…。」
ぎゅっと抱きしめ返してくれたその力強さに、嬉しくて嬉しくて、気持ちが上がる。

「俺もだ…。」
耳元でそっと伝えてくれる言葉は、きっと彼の身分には相応しくない言葉で…だからこそ本音だと受け取れる。

直ぐに泣き止む事が出来なくて、しばらく抱きしめて背中を優しく撫ぜてくれた。

「…鈴蘭姐様!何処ですか?」
私がなかなか戻って来ないのを心配して、寧々ちゃんが探しに来てくれている。

慌てて離れて、濡れた頬を手で拭う。

「香蘭、今は忍びで来てるから出来るだけバレたくないんだ。とりあえず、このまま護衛の振りをして宿まで着いて行くから、気付かない振りをして欲しい。」
サッと小声で言われて小さく頷く。

「いつまで…一緒に居られるんですか?」
私も寧々ちゃんに見つからないように小声で話す。

「都までの旅路はずっと一緒に居られるから大丈夫。ほら、寧々が来る前に戻って。」
それを聞いてホッとする。
そっと背中を押されて、小さく手を振って寧々ちゃんの元へ戻る。

「寧々ちゃん!心配させてごめんなさい。
裏でちょっと話し込んでしまって…早く馬車に乗り込みましょう。」
にこりと笑って大丈夫だと安心させる。
寧々ちゃんは私のお世話係と、護衛も兼ねているから、少しでも姿が見えないと心配させてしまう。

「良かったぁ。拐かされたのかと…。
姐様に何があればあの方に叱られるのは私ですから、あまり心配させないでください。」

今にも泣きそうな顔でそう言ってくるから、可愛くてつい頭を撫ぜてしまう。

「大丈夫。もう、どこにもいかないから。」
みんなが馬車に乗り込む姿が見えて、慌てて指定された馬車まで手を取り合って走る。

「姫様方。そんなに慌てなくても馬車は待ってくれますから。」
護衛隊長の周さん可笑しそうに着いて来てくれる。

「あっ!新しい護衛が1人追加で入りますのでよろしくお願いします。」

私に目配せしながらそう周隊長が言ってくるから、きっと晴明様が来た事は把握してるようだ。
こくんと小さく頷き馬車に乗り込む。