「このほど集まって頂いたのは、他でもない余の為に力をお貸し下さる方を探しての事。
どうだろうか、誰か力を貸してもらえる者はいないか?」
意味ありげな話し方で始まった皇帝晴明の話しは、三親子にとって、とても魅力的で三者三様それぞれの心を惑わした。
その話術は自由に育った幼少期に、町の商人達との売り買いで自然と培った才能であり、今では国を納める武器にもなっている。
晴明が話し聞かせた内容はと言うと、香の国との平和的解決の為、側室の中から誰が1人を嫁がせたいという申し入れだった。
それは悪い話しではなく、香の国に嫁げば贅沢三昧に遊び暮らし、この後宮でのつまらぬ暮らしより遥かに楽しいだろうと言う。
もしも世継ぎを産めば、未来永劫贅沢な暮らしが出来るのではと、畳み掛けるように魅力的な言葉を投げかける。
「どうだろう。悪い話しではあるまい。その一族ごと香の国では引き受けてくれるそうだ。豪邸に使用人それに治める土地まで分配してくれると言う。
この国で寂しく老いて往くよりは、未来がある良い話しではないか?」
そう語りかけ夢を見させる。
これは確かに、今の香の国の国王に交渉を仕掛け勝ち取った取り引きだった。
先に送り込んだ密偵の調べで分かったのだが、現国王は40歳を過ぎてはいるが部類の女好きで、特に諸外国の貴族出の品のある女子を好みとするらしい。
今現在の寵妃は病弱で子を産めそうに無く、3人いる側室も他国から嫁いだ貴族の娘だと言う事だ。しかも3人は既に中年の域に入っており、この先、子を成すことは難しいとされる。
世継ぎは乏しく、花柳という遊び人の王子が1人のみ。後は女姫のみだと言うから、この先もしも嫁げば自分の子が王になる可能性は秘めている。
(だが、秀英が率いるクーデターが近々起こるからそうは行かないのだが…)
そこで晴明は、我が側室はどうかと交渉した。側室を他国に委ねる事はこの時代良くある交渉の一つであるし、戦の勝利品として側室を貰い受けることもザラにある。
側室達はまだ20歳も超えていない貴族の娘であり、のし上がりたい欲もあるから、この上手い話しにきっと飛びつくだろうと見込んでの事だ。
1番に声を上げたのは、最年長の1番目の側室、高琳だった。
彼女は今年で20歳になるから、今、子を成せなければ行き遅れ同然の身となる。自分の旬の期限が迫っているのだ。
それも全て読んだ上で、晴明は3人に話しを持ち出している。
「私が1番適任かと、かの上皇后様の出身国であり、香の国は贅沢三昧だと言うお話しは兼ねてより聞いておりました。きっと、夢のような毎日を送れることでしょう。」
嬉しそうに高琳はそう話す。
晴明は後の2人に目を配り、
「では、高琳殿で良いか?
他2人は意見がなければ決定する事にしよう。」
そこで、もう1人の側室が手を挙げ話し出す。
「私の方が適任では?この中で1番若く今年で17歳でございます。何より琴や舞には自信がありますわ。」
この中で1番若い杏がそう言い出す。
「杏さんは黙ってらして。貴方はこの先まだまだ貰い手がありますわ。高琳様の方が深刻な状況ですわよ。」
2人の真ん中に入るのは19歳の洋である。
しばらく3人の押し問答が繰り広げられ、父親達は呆れ返る。そして晴明も、一言も口を挟まず黙認し続ける。
誰が行く事になっても、この先厳しい現実と向き合う事になる。それを知っている上で行かせるのだから…せめて自分の運命は自分で決めるべきだと、腹の底で思っての事だ。
この薄汚い欲望紛れの人間達の中で、それを操ろうとしている自分こそが悪魔のような存在なのではないかと思い、無意識に胸元に隠してある香蘭のペンダントに触れる。
これは、この国の皇帝として国をより良くする為に、必要な事なんだと自分自身に言い聞かせる。
どうだろうか、誰か力を貸してもらえる者はいないか?」
意味ありげな話し方で始まった皇帝晴明の話しは、三親子にとって、とても魅力的で三者三様それぞれの心を惑わした。
その話術は自由に育った幼少期に、町の商人達との売り買いで自然と培った才能であり、今では国を納める武器にもなっている。
晴明が話し聞かせた内容はと言うと、香の国との平和的解決の為、側室の中から誰が1人を嫁がせたいという申し入れだった。
それは悪い話しではなく、香の国に嫁げば贅沢三昧に遊び暮らし、この後宮でのつまらぬ暮らしより遥かに楽しいだろうと言う。
もしも世継ぎを産めば、未来永劫贅沢な暮らしが出来るのではと、畳み掛けるように魅力的な言葉を投げかける。
「どうだろう。悪い話しではあるまい。その一族ごと香の国では引き受けてくれるそうだ。豪邸に使用人それに治める土地まで分配してくれると言う。
この国で寂しく老いて往くよりは、未来がある良い話しではないか?」
そう語りかけ夢を見させる。
これは確かに、今の香の国の国王に交渉を仕掛け勝ち取った取り引きだった。
先に送り込んだ密偵の調べで分かったのだが、現国王は40歳を過ぎてはいるが部類の女好きで、特に諸外国の貴族出の品のある女子を好みとするらしい。
今現在の寵妃は病弱で子を産めそうに無く、3人いる側室も他国から嫁いだ貴族の娘だと言う事だ。しかも3人は既に中年の域に入っており、この先、子を成すことは難しいとされる。
世継ぎは乏しく、花柳という遊び人の王子が1人のみ。後は女姫のみだと言うから、この先もしも嫁げば自分の子が王になる可能性は秘めている。
(だが、秀英が率いるクーデターが近々起こるからそうは行かないのだが…)
そこで晴明は、我が側室はどうかと交渉した。側室を他国に委ねる事はこの時代良くある交渉の一つであるし、戦の勝利品として側室を貰い受けることもザラにある。
側室達はまだ20歳も超えていない貴族の娘であり、のし上がりたい欲もあるから、この上手い話しにきっと飛びつくだろうと見込んでの事だ。
1番に声を上げたのは、最年長の1番目の側室、高琳だった。
彼女は今年で20歳になるから、今、子を成せなければ行き遅れ同然の身となる。自分の旬の期限が迫っているのだ。
それも全て読んだ上で、晴明は3人に話しを持ち出している。
「私が1番適任かと、かの上皇后様の出身国であり、香の国は贅沢三昧だと言うお話しは兼ねてより聞いておりました。きっと、夢のような毎日を送れることでしょう。」
嬉しそうに高琳はそう話す。
晴明は後の2人に目を配り、
「では、高琳殿で良いか?
他2人は意見がなければ決定する事にしよう。」
そこで、もう1人の側室が手を挙げ話し出す。
「私の方が適任では?この中で1番若く今年で17歳でございます。何より琴や舞には自信がありますわ。」
この中で1番若い杏がそう言い出す。
「杏さんは黙ってらして。貴方はこの先まだまだ貰い手がありますわ。高琳様の方が深刻な状況ですわよ。」
2人の真ん中に入るのは19歳の洋である。
しばらく3人の押し問答が繰り広げられ、父親達は呆れ返る。そして晴明も、一言も口を挟まず黙認し続ける。
誰が行く事になっても、この先厳しい現実と向き合う事になる。それを知っている上で行かせるのだから…せめて自分の運命は自分で決めるべきだと、腹の底で思っての事だ。
この薄汚い欲望紛れの人間達の中で、それを操ろうとしている自分こそが悪魔のような存在なのではないかと思い、無意識に胸元に隠してある香蘭のペンダントに触れる。
これは、この国の皇帝として国をより良くする為に、必要な事なんだと自分自身に言い聞かせる。



