一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

宴もたけなわになって来た頃。
壇上の2人も食事を終えて武士団の余興を楽しんでいた。

「晴明、私は今日しか居られないから挨拶させてもらうよ。」

気さくな感じで段を上がって来た男が1人、手には酒瓶を持っている。よく見ると豪華だが見慣れない衣装を着ているから、きっと身分高い諸外国の要人だろうと香蘭は一気に緊張する。

「景勝(けいしょう)来てたのか。」
陛下の立場である晴明が珍しく笑顔で立ち上がり、手を差し伸べて握手をしている。香蘭も慌てて立ち上がり頭を下げて出迎える。

「香蘭、こいつは学生時代悪友だった景勝だ。こう見えて聖国の皇太子なんだ。」
晴明に紹介された景勝が、香蘭に近寄り握手を求めるように手を差し伸べてくる。

「香蘭と申します。どうぞ、よろしくお願い致します。」
慌てて両手を差し出せば、ぎゅっと握られなかなか離してもらえなくなる。

「初めまして、景勝と申します。
遠目で見ても綺麗だったが、近付くとより美しい人だ。」

景勝はそう言って褒め称えるてくれるが、今まで座長からお前は華がないと罵られ、罵倒されながら育って来た香蘭は、美しいだの綺麗だのは自分には無縁だと思い込んでいる。だからただのお世辞だとしか思っていない。

「そんな…どんでもない。私なんて…。」
と、首を横に振って恐縮する。

「なんて謙虚な女人なんだ。気に入った!晴明なんてやめて、私にしませんか?」

景勝はずっと握っていた香蘭の手を突然ぎゅっと引っ張る。
香蘭は危うくバランスを崩して景勝の懐に入ってしまいそうになり、寸でのところで晴明によって引き戻され、何故か晴明の腕の中…