一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

「香蘭、よく頑張った。お疲れ様。」
式が滞り無く終わり香蘭が立席するタイミングで、陛下が手を差し伸べる。

「陛下…ありがとうございます。お疲れ様でございました。」

その手をそっと握り返し、ふわふわする足取りでどうにか舞台袖まで戻ると、分かりやすくホッと肩の荷を下ろした香蘭を、晴明は堪らずぎゅっと抱きしめる。

「陛下と呼んでくれるな。そなたにはどんな時でも名前で呼んで欲しい。」

「…はい、晴明様。」
恥ずかしそうに香蘭がはにかむ。

後は身内を交えての会食が残っているが、それほど堅苦しい式ではない。

先に挨拶をして頃合いを見て抜け出し、早く2人でのんびりしたいものだと、今日の主役である筈の晴明ですら思ってるくらいだ。

会食前に軽い衣に着替えた香蘭は、ここでやっと空腹を覚える。

「後は会食だけだからそなたはただ相槌を打ってくれれば良い。ご馳走が出るから心置きなく食べてくれ。」

晴明がそう言って香蘭の肩の荷を下ろしてくれる。やっと薄布が取れ、お互いの顔が鮮明に見る事ができた。それだけで嬉しくて笑みが溢れる。

「ところで、香蘭は酒を飲んだ事があるのか?」

「いえ、ありませんが…?」
首を横に振りながら香蘭は答える。

「そうか…それなら今夜は飲まない方が良い。勧められても口を付けるだけに。」
晴明は過保護に香蘭を心配する。

「はい、気を付けます。」
そんな話をしていると、廊下から女官に呼ばれて2人で会食の間へと足を運ぶ。