「お支度は整いましたか?」
玄関で待っていられなかった李生が、気付けば扉の向こうまでやって来ているようだ。
「お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。ただ今参ります。」
香蘭は立ち上がり自ら部屋の扉を開ける。
「急がせてすいません。陛下が待ち切れずそわそわしてまして、早めに迎えに来てしまいました。」
晴明は李生がどんなに言い聞かせても、自分で迎えに行こうとするので、それをなんとか制止して迎えに来たのだと言う。
「すいません…急ぎましょう。」
頭から足先まで着飾った香蘭は、とても綺麗で李生でさえもハッ吐息を飲む。
「香蘭様。お衣装が乱れてしまいますので、ゆっくり行きましょう。ゆっくりで大丈夫です。」
李生は慌てて走り出そうとすると香蘭を止める。
「陛下を待たせてはいけませんから、出来るだけ急ぎましょう。」
香蘭としてはそわそわしている晴明が目に浮かび、何よりも早く行かなくてはと焦ってしまう。
寧々が裾元を持ち、
「姐様、男は待たせてなんぼですから、気にせず優雅に行きますよ。」
この中で1番年若い筈なのに、1番落ち着きを見せている。
この婚約の儀はごく一部の官僚と、親密な隣国にしか知らせていない。おめでたい事ではあるけど、決定し通達を出したのはここ2、3日と急だった為、参列者もそう多くは無いだろう。
当の本人である香蘭でさえ、何がなんだか分からないままバタバタと今日を迎えていた。
香蘭は黒塗りの重厚感がある馬車に乗り宮殿に向かう。ああ、私の婚約者は本当に皇帝陛下だったんだなと、この時始めて実感した。
外門から真っ直ぐに伸びた広場を抜けると、見上げるほど高い石段が行く手を阻む。
馬車はその手前でゆっくりと止まる。
「香蘭様、宮邸に到着でございます。これより先、厳格な儀式の元に行われますので、手順通りに粛々と執り行われる事を祈っております。」
李生が馬車の扉を開けて、跪いて臣下の礼を取る。
もう、始まっているんだわ。
ピリッとした空気に包まれて、香蘭も緊張気味に馬車から降り立つ。
玄関で待っていられなかった李生が、気付けば扉の向こうまでやって来ているようだ。
「お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。ただ今参ります。」
香蘭は立ち上がり自ら部屋の扉を開ける。
「急がせてすいません。陛下が待ち切れずそわそわしてまして、早めに迎えに来てしまいました。」
晴明は李生がどんなに言い聞かせても、自分で迎えに行こうとするので、それをなんとか制止して迎えに来たのだと言う。
「すいません…急ぎましょう。」
頭から足先まで着飾った香蘭は、とても綺麗で李生でさえもハッ吐息を飲む。
「香蘭様。お衣装が乱れてしまいますので、ゆっくり行きましょう。ゆっくりで大丈夫です。」
李生は慌てて走り出そうとすると香蘭を止める。
「陛下を待たせてはいけませんから、出来るだけ急ぎましょう。」
香蘭としてはそわそわしている晴明が目に浮かび、何よりも早く行かなくてはと焦ってしまう。
寧々が裾元を持ち、
「姐様、男は待たせてなんぼですから、気にせず優雅に行きますよ。」
この中で1番年若い筈なのに、1番落ち着きを見せている。
この婚約の儀はごく一部の官僚と、親密な隣国にしか知らせていない。おめでたい事ではあるけど、決定し通達を出したのはここ2、3日と急だった為、参列者もそう多くは無いだろう。
当の本人である香蘭でさえ、何がなんだか分からないままバタバタと今日を迎えていた。
香蘭は黒塗りの重厚感がある馬車に乗り宮殿に向かう。ああ、私の婚約者は本当に皇帝陛下だったんだなと、この時始めて実感した。
外門から真っ直ぐに伸びた広場を抜けると、見上げるほど高い石段が行く手を阻む。
馬車はその手前でゆっくりと止まる。
「香蘭様、宮邸に到着でございます。これより先、厳格な儀式の元に行われますので、手順通りに粛々と執り行われる事を祈っております。」
李生が馬車の扉を開けて、跪いて臣下の礼を取る。
もう、始まっているんだわ。
ピリッとした空気に包まれて、香蘭も緊張気味に馬車から降り立つ。



