婚約が決まってから前にも増して甘く優しく、容赦のない溺愛ぶりだ。その過保護な感じに慣れる事なく、いつだってドギマギしてしまう。
「愛されてますねー。」
事の成り行きを全て知ってる寧々ちゃんに、揶揄われてしばし居た堪れない時間を過ごす。
「陛下はちょっと、心配症が過ぎるのでは…?あと、1週間でここを離れなければならないのに…これだと、離れ難くなってしまうわ。」
つい、心配事を露としてしまう。
「本当ですよねー。
…もしかして、それが陛下の企みなのかもしれませんよ。姐様が離れたくなくなるようにきっと構い倒しているんですよ。」
「それは…意地悪です。」
「それはそうですよ。あの方が勝利を納めて今の地位を得たのは、戦略家であり交渉術にも長けているからです。本気で来たら私達には敵いません。
でも、姐様にはちゃんと逃げ道を作ってくださっているから、願いば必ず叶えて下さいます。」
皇帝陛下としての彼を観たのは、上皇様のご祈祷の儀の時だけだから、あの優しい眼差しでどのように皆を動かしているのか疑問ではある。
「皇帝陛下としてのあの方はどのような感じなの?」
素朴な疑問を寧々ちゃんに問う。
「一言ではとても言い表せません。
戦ではまるで冷酷な鬼の様ですし、人前に立つ時は堂々として品があり、誰もが目を奪われるような人を惹きつける魔力があります。恐れ慄く武人も、神のように奉る官僚もおります。人に寄って捉え方はいろいろですから。」
「寧々ちゃんにとってはどんな方?」
「そうですね…無理難問を押し付けてくる困った上司です。だけど不思議と、あの方の為ならなんでも叶えてあげたいと思ってしまいます。」
「それは分かる気がします。」
ふふふっと2人でこっそり笑う。
たまに見せる駄々っ子のような無邪気さも、あの方の魅力の一つ。いろいろな顔を持つ陛下の本当の顔は誰も分からないのかもしれない。
「なんだ?2人して楽しそうだが、寧々が俺の悪口でも言いふらしているんじゃないだろうな。」
思っていたよりも早く戻って来た陛下が、私達を怪訝な顔で見つめてくる。
「まさか、とっても素晴らしい方ですとお話ししていたとこですよ。」
「嘘っぽいな。寧々の話しは冗談半分で聞いた方がよいぞ。ろくな事を言わないからな。」
「酷いです、陛下。いつだってあなたの手となり足となり働いているこの私に、なんて言いががりなんですか!」
寧々ちゃんは、腰に手を当てプンプンと怒っている。
「寧々はいつだって不平不満ばかりじゃないか。ああしろこうしろと煩くて敵わん。」
陛下も楽しそうに話す。
ふふふっと、私もまるで兄妹のように戯れる2人が微笑ましくてつい笑ってしまう。
「2人が仲の良い事は以前から感じておりますから。寧々ちゃんが、1番陛下の事をきっとご存知なんじゃないかと、お話を聞いていたんです。」
「香蘭、今の話しの中に2点訂正を要求したい。
まず1点目そなたと俺は対等な関係なのだから、今まで通り名前で読んで欲しい。
そしてもう1点は寧々の事は赤子の頃から知っているが、寧々は俺の事を半分も知らない。ゆえに寧々に聞くより俺に直接聞くべきだ。」
「大人気ない…。
陛下は私に嫉妬されてるんですよ。姐様と私が仲良しだから。大丈夫です。2人の仲を引き裂くような事はしませんから、心より応援しております。」
寧々ちゃんは、いつだって歯に衣着せぬ物言いを陛下である晴明様にしているけれど、きっと場は弁えて居る筈だから、こうして軽口を叩けるのは単(ひとえ)に晴明様の懐が深いからだと理解できる。
「晴明様がお優しいから、きっと寧々ちゃんも本音で話せるのですね。素敵な関係だと思います。」
「俺としては、香蘭と早く何でも話せる仲になりたいのだが…。」
不服そうな目線を投げられる。
「…善処、します。」
「陛下、お言葉ですが、私の姐様脅さないでくださいませ。嫉妬はかっこ悪いですよ。」
寧々ちゃんが私の代わりに果敢にも歯向かって行く。
「脅してなんかいないだろ?願望を述べたのみだ。
香蘭はいつも遠慮し過ぎるところがある。もっと寧々のように思った事を話して欲しいのだ。」
「あの…物心ついた頃から周りには座長以外の男性は居ませんでしたし…その、殿方とお話しした事があまり無く…。
晴明様が初めてと言うか…本当に免疫がないのです。ちゃんと話せるように、努力します。」
私の事情など晴明様は、気にも留めないのかもしれないけれど、恋愛初心者の前に、男性にすら初心者なのだから、どうかお手柔らかに願いたい。
「その事だけは唯一、座長に感謝しなければならんな。その封鎖された環境だからこそ、香蘭に変な虫が付かなくて済んだのだから。
ただ、これから10ヶ月はそうはいかないだろう…。
先の祈祷の儀のさえに、沢山の官僚達に香蘭の素晴らしさを気付かれてしまった。身請けしたいと申し出る輩も増えると懸念している。」
「そこは心配されなくても、この私が立派に香蘭姐様をお守りしますから。」
寧々ちゃんが自信ありげに胸を叩く。
「寧々ちゃん、いつもありがとう。」
私も、ここで感謝の言葉伝えられて良かったと、今までの後ろめたさとか申し訳なさが少しだけ軽くなった。
「姐様の為ならどこまで着いて行きます。私の主人はもはや姐様だと思ってますから。」
ニコニコと笑顔で抱きついて来る寧々ちゃんが可愛くて、私も抱きしめ返すと、
「おい…。香蘭は俺のだ、勝手に触れるな。」
と、独占欲丸出しで、私から寧々ちゃんを引き離すし、シッシッと片手で追い払う。
「全く大人げない…。」
寧々ちゃんは頬を膨らませて部屋の外へと出て行った。彼女といると晴明様は子供っぽくなる。そんな彼も愛おしいと思ってしまうから、私も大概だわ、と微笑する。
「何が可笑しい?俺はあ奴が1番の敵だと思っているからな。」
そう言いながら私の手をぎゅっと握るから、ドキンと心臓が高鳴る。この人の事をいつになったら慣れるんだろう…頭の片隅でそう思いながら、こっそりと深呼吸を一つする。
それから2人で夕飯を食べ、いつものようにお茶をして、楽しいひと時を過ごす。
「愛されてますねー。」
事の成り行きを全て知ってる寧々ちゃんに、揶揄われてしばし居た堪れない時間を過ごす。
「陛下はちょっと、心配症が過ぎるのでは…?あと、1週間でここを離れなければならないのに…これだと、離れ難くなってしまうわ。」
つい、心配事を露としてしまう。
「本当ですよねー。
…もしかして、それが陛下の企みなのかもしれませんよ。姐様が離れたくなくなるようにきっと構い倒しているんですよ。」
「それは…意地悪です。」
「それはそうですよ。あの方が勝利を納めて今の地位を得たのは、戦略家であり交渉術にも長けているからです。本気で来たら私達には敵いません。
でも、姐様にはちゃんと逃げ道を作ってくださっているから、願いば必ず叶えて下さいます。」
皇帝陛下としての彼を観たのは、上皇様のご祈祷の儀の時だけだから、あの優しい眼差しでどのように皆を動かしているのか疑問ではある。
「皇帝陛下としてのあの方はどのような感じなの?」
素朴な疑問を寧々ちゃんに問う。
「一言ではとても言い表せません。
戦ではまるで冷酷な鬼の様ですし、人前に立つ時は堂々として品があり、誰もが目を奪われるような人を惹きつける魔力があります。恐れ慄く武人も、神のように奉る官僚もおります。人に寄って捉え方はいろいろですから。」
「寧々ちゃんにとってはどんな方?」
「そうですね…無理難問を押し付けてくる困った上司です。だけど不思議と、あの方の為ならなんでも叶えてあげたいと思ってしまいます。」
「それは分かる気がします。」
ふふふっと2人でこっそり笑う。
たまに見せる駄々っ子のような無邪気さも、あの方の魅力の一つ。いろいろな顔を持つ陛下の本当の顔は誰も分からないのかもしれない。
「なんだ?2人して楽しそうだが、寧々が俺の悪口でも言いふらしているんじゃないだろうな。」
思っていたよりも早く戻って来た陛下が、私達を怪訝な顔で見つめてくる。
「まさか、とっても素晴らしい方ですとお話ししていたとこですよ。」
「嘘っぽいな。寧々の話しは冗談半分で聞いた方がよいぞ。ろくな事を言わないからな。」
「酷いです、陛下。いつだってあなたの手となり足となり働いているこの私に、なんて言いががりなんですか!」
寧々ちゃんは、腰に手を当てプンプンと怒っている。
「寧々はいつだって不平不満ばかりじゃないか。ああしろこうしろと煩くて敵わん。」
陛下も楽しそうに話す。
ふふふっと、私もまるで兄妹のように戯れる2人が微笑ましくてつい笑ってしまう。
「2人が仲の良い事は以前から感じておりますから。寧々ちゃんが、1番陛下の事をきっとご存知なんじゃないかと、お話を聞いていたんです。」
「香蘭、今の話しの中に2点訂正を要求したい。
まず1点目そなたと俺は対等な関係なのだから、今まで通り名前で読んで欲しい。
そしてもう1点は寧々の事は赤子の頃から知っているが、寧々は俺の事を半分も知らない。ゆえに寧々に聞くより俺に直接聞くべきだ。」
「大人気ない…。
陛下は私に嫉妬されてるんですよ。姐様と私が仲良しだから。大丈夫です。2人の仲を引き裂くような事はしませんから、心より応援しております。」
寧々ちゃんは、いつだって歯に衣着せぬ物言いを陛下である晴明様にしているけれど、きっと場は弁えて居る筈だから、こうして軽口を叩けるのは単(ひとえ)に晴明様の懐が深いからだと理解できる。
「晴明様がお優しいから、きっと寧々ちゃんも本音で話せるのですね。素敵な関係だと思います。」
「俺としては、香蘭と早く何でも話せる仲になりたいのだが…。」
不服そうな目線を投げられる。
「…善処、します。」
「陛下、お言葉ですが、私の姐様脅さないでくださいませ。嫉妬はかっこ悪いですよ。」
寧々ちゃんが私の代わりに果敢にも歯向かって行く。
「脅してなんかいないだろ?願望を述べたのみだ。
香蘭はいつも遠慮し過ぎるところがある。もっと寧々のように思った事を話して欲しいのだ。」
「あの…物心ついた頃から周りには座長以外の男性は居ませんでしたし…その、殿方とお話しした事があまり無く…。
晴明様が初めてと言うか…本当に免疫がないのです。ちゃんと話せるように、努力します。」
私の事情など晴明様は、気にも留めないのかもしれないけれど、恋愛初心者の前に、男性にすら初心者なのだから、どうかお手柔らかに願いたい。
「その事だけは唯一、座長に感謝しなければならんな。その封鎖された環境だからこそ、香蘭に変な虫が付かなくて済んだのだから。
ただ、これから10ヶ月はそうはいかないだろう…。
先の祈祷の儀のさえに、沢山の官僚達に香蘭の素晴らしさを気付かれてしまった。身請けしたいと申し出る輩も増えると懸念している。」
「そこは心配されなくても、この私が立派に香蘭姐様をお守りしますから。」
寧々ちゃんが自信ありげに胸を叩く。
「寧々ちゃん、いつもありがとう。」
私も、ここで感謝の言葉伝えられて良かったと、今までの後ろめたさとか申し訳なさが少しだけ軽くなった。
「姐様の為ならどこまで着いて行きます。私の主人はもはや姐様だと思ってますから。」
ニコニコと笑顔で抱きついて来る寧々ちゃんが可愛くて、私も抱きしめ返すと、
「おい…。香蘭は俺のだ、勝手に触れるな。」
と、独占欲丸出しで、私から寧々ちゃんを引き離すし、シッシッと片手で追い払う。
「全く大人げない…。」
寧々ちゃんは頬を膨らませて部屋の外へと出て行った。彼女といると晴明様は子供っぽくなる。そんな彼も愛おしいと思ってしまうから、私も大概だわ、と微笑する。
「何が可笑しい?俺はあ奴が1番の敵だと思っているからな。」
そう言いながら私の手をぎゅっと握るから、ドキンと心臓が高鳴る。この人の事をいつになったら慣れるんだろう…頭の片隅でそう思いながら、こっそりと深呼吸を一つする。
それから2人で夕飯を食べ、いつものようにお茶をして、楽しいひと時を過ごす。



