一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

「晴明様…。お夕食の後…少しお話しがあります。
お時間頂けますか…?」
緊張な面持ちで鈴蘭が言って来る。

晴明はついに来たかと天を一瞬仰ぎ、
「分かった。ひとまず、腹が空いた食事にしよう。」

何事も動じない風に振る舞いたいが、重たい空気が慣れている筈の晴明でさえ緊張させる。

今までも官僚達との取引に他国との交渉事のたび、類稀な話術と精神力で討ち取って来た経験がある。交渉事にはれそなりに長けていると自負しているが…。

恋愛となるとまるで駄目だと15歳の寧々にさえ呆れられるくらいに疎い。そんな自分が彼女が離れて行く事を止められるだろうか…晴明は不安しかない。

「はい。今夜は、郷土料理を作りました。辛いものは大丈夫ですか?」

「ああ…美味そうだ。辛いものは嫌いじゃない。その豆腐の炒め物を貰おう。」
何気ない話しをしながらも彼女の顔をつい見つめてしまう。

「この豆腐…少し形が崩れているな。寧々が作ったものじゃないか?」
俺がそう言うと、

「さすがです。よく分かりましたね。」
鈴蘭が微かに微笑む。

次に口にしたのは、野菜を卵と一緒に炒めた物で、優しい味付けがなんとなくホッとさせた。
「これが、そなたが作った物か?」
そうだろうと確信を持って聞く。
すると、鈴蘭が目を丸くして驚き顔を見せる。

「良く分かりましたね!!
油淋様の言いつけ通りに作ったつもりなのですが、どこかいつもと違いますか?」
不思議そうに聞いてくる。

「どこがとは上手く言えないが、優しい味がしたから尖ってないと言うか…。油淋の味は辛味、甘味、塩味とも全て尖って主張してくる。味付けにも性格が出るのだな。」

ふふふっと可愛く笑ってくれるから、幾分か晴明も肩を撫で下ろし緊張を解いた。

最後のデザートは、晴明の気に入っている麩菓子で、これも鈴蘭が作ったのだと言う。

「鈴蘭は料理の才もある。店の物だと言っても分からないくらい上手い。」

「ありがとうございます。喜んで頂けて良かったです。」
いつもの和やかな雰囲気で夕飯が終わる。

そして最後はいつもお茶を飲み、2人でまったりとした時間を過ごすのだが、今夜は緊張感に包まれる。