鈴蘭は晴明の別邸に戻り、やっと一息ついていた。
大役をどうにか成し遂げた達成感と、晴明に少しでも恩返し出来たのではと思う安堵感が、疲れた身体に染み渡る。
「鈴蘭姐様。今夜は若様も夕方にはお戻りだそうです。一緒に夕食をとの事。良かったですね、お会い出来て。」
寧々が自分の事のように嬉しそうだ。
「寧々ちゃん、今夜晴明様に会えたら、一座に帰りたいと伝えようと思うの。」
居心地の良さに、今までずっと引き伸ばしてしまっていた事を初めて寧々伝える。
「えっっっ!!な、なんでですか?
これほど、穏やかな場所なんて他にありませんよ?月光一座に戻ったところで、また辛い毎日戻るだけですよ?」
困惑しながら寧々が聞く。
「ここはとても過ごしやすいし、みんな温かい人ばかりで…ずっと居たいくらいだけど、これ以上晴明様にご迷惑はかけられない。
それに…踊り子でいられるのもたったの一年。
私の役割を全うしたいの。そうしなくちゃきっと後から後悔するわ。」
寧々はこの3年、誰よりも側にいて鈴蘭を見守り続けた。姐様には絶対幸せになって欲しい。
だから、それが叶うのならば自分はなんだってしてやりたい。
それが出来るのは、主人である晴明ただ1人だと思っている。
「私は、勝手ながら姐様を本当の姉のように慕っております。誰よりも近くで姐様の事を見守って参りました。
だから…月光一座に戻るのはどうしても阻止したい。…だけどそれでもお戻りになりたいのなら、私も一緒にお供します。」
寧々の決意も硬い。駄目だと止めてもついて来るだろう…。
「寧々ちゃん、あなたの人生を私の為に費やしては勿体無いわ。」
「私は最初、主人である若様から指示で姐様のお側におりましたが、今は自分の意思で側にいたいと思うのです。だから、なんと言われましても絶対ついて行きますから。」
キッパリという寧々は堂々としていて、誰よりも自分の立場を誇っている。
「そう…。寧々ちゃんはちゃんとやりたい事をしているのね。」
ふふっと優しく笑って少しだけ寂しくなる。
香蘭には自分自身の人生でさえも、寧々のように自分で選ぶ事は許されない。そんなやるせい人生をこの先も、ずっと独りで生きて行かなければならないのかと…。
「姐様だって、ご自分で選んで良い筈です。姐様の人生は既に、今だって姐様の物なのですから。座長への恩を思っているのならもう既に、必要以上に返しております。」
寧々の力強い励ましが聞こえる。
「でも私…今までそうやって、誰かに支配されて生きてきたから、自由になったところでどうしたら良いか分からないの。」
鈴蘭が小さく笑う。
「姐様の心の中にいる方を頼れば良いのです。姐様が望めば、その方が全てを助けて下さいます。」
「それは…許される事ではないわ。」
寧々の言いたい事はよく分かっている。だからと言って1番頼っては行けない人なのだと鈴蘭は思う…。
大役をどうにか成し遂げた達成感と、晴明に少しでも恩返し出来たのではと思う安堵感が、疲れた身体に染み渡る。
「鈴蘭姐様。今夜は若様も夕方にはお戻りだそうです。一緒に夕食をとの事。良かったですね、お会い出来て。」
寧々が自分の事のように嬉しそうだ。
「寧々ちゃん、今夜晴明様に会えたら、一座に帰りたいと伝えようと思うの。」
居心地の良さに、今までずっと引き伸ばしてしまっていた事を初めて寧々伝える。
「えっっっ!!な、なんでですか?
これほど、穏やかな場所なんて他にありませんよ?月光一座に戻ったところで、また辛い毎日戻るだけですよ?」
困惑しながら寧々が聞く。
「ここはとても過ごしやすいし、みんな温かい人ばかりで…ずっと居たいくらいだけど、これ以上晴明様にご迷惑はかけられない。
それに…踊り子でいられるのもたったの一年。
私の役割を全うしたいの。そうしなくちゃきっと後から後悔するわ。」
寧々はこの3年、誰よりも側にいて鈴蘭を見守り続けた。姐様には絶対幸せになって欲しい。
だから、それが叶うのならば自分はなんだってしてやりたい。
それが出来るのは、主人である晴明ただ1人だと思っている。
「私は、勝手ながら姐様を本当の姉のように慕っております。誰よりも近くで姐様の事を見守って参りました。
だから…月光一座に戻るのはどうしても阻止したい。…だけどそれでもお戻りになりたいのなら、私も一緒にお供します。」
寧々の決意も硬い。駄目だと止めてもついて来るだろう…。
「寧々ちゃん、あなたの人生を私の為に費やしては勿体無いわ。」
「私は最初、主人である若様から指示で姐様のお側におりましたが、今は自分の意思で側にいたいと思うのです。だから、なんと言われましても絶対ついて行きますから。」
キッパリという寧々は堂々としていて、誰よりも自分の立場を誇っている。
「そう…。寧々ちゃんはちゃんとやりたい事をしているのね。」
ふふっと優しく笑って少しだけ寂しくなる。
香蘭には自分自身の人生でさえも、寧々のように自分で選ぶ事は許されない。そんなやるせい人生をこの先も、ずっと独りで生きて行かなければならないのかと…。
「姐様だって、ご自分で選んで良い筈です。姐様の人生は既に、今だって姐様の物なのですから。座長への恩を思っているのならもう既に、必要以上に返しております。」
寧々の力強い励ましが聞こえる。
「でも私…今までそうやって、誰かに支配されて生きてきたから、自由になったところでどうしたら良いか分からないの。」
鈴蘭が小さく笑う。
「姐様の心の中にいる方を頼れば良いのです。姐様が望めば、その方が全てを助けて下さいます。」
「それは…許される事ではないわ。」
寧々の言いたい事はよく分かっている。だからと言って1番頼っては行けない人なのだと鈴蘭は思う…。



