「……様?」
「…姐様…!」
遠くで寧々ちゃんが私を呼ぶ声がする…
目を開けて起きなければと思うのに…
瞼が重くて…起きられない…
脈を打つたびに何かに叩かれているよう頭がガンガンと痛む…
「鈴蘭……鈴蘭!」
低く響く心地良い声が聞こえる…
「何があったんだ?」
「薬師様が言うには…湯あたりされたのではと…。
長く湯殿からお出にならなかったので、心配になって覗いてみたら脱衣室にお倒れに…。」
寧々ちゃんが声の主にひと通りの説明をしている。
恥ずかしい…
私は大丈夫だと早く伝えたいのに…
頭が重い…身体も強張っていて、まるで金縛りにあったかのように動けない…。
どうすれば…霧がかかった意識の中で、私は独り焦りもがき苦しんでいた。
「何か…よくなる薬はないのか?」
「水分を取って安静にしていれば大丈夫だと…ただ、目を覚ましてくれない事には水分も取れなくて…」
いつも勝気な寧々ちゃんの、今にも泣き出しそうな声…
突然…上半身が抱き起こされて…誰かの逞しい腕に支えられる。
すると…唇に生暖かい温もりが…と思っていると冷たい水が注ぎ込まれる…
美味しい…身体は水を欲していた。
何度となく注がれる水が熱った身体に染み渡る。
朦朧とする意識の中で、その事だけが記憶として鮮明に残った。
次に目が冷めたのは丑の刻近く
シンっと静まり返った真っ暗な世界に、突然独り置いて行かれたような、心細さでなかなか目を開ける事が出来ないでいた。
頭の痛みはもう無いけど…お腹が空いた…
夕飯を共にと晴明様との約束を思い出し、気持ちが落ち込む。この先、あの方とあと何回一緒にお食事が出来るのだろう…?
ずっとあの方の別邸に居座る訳には行かない…踊り子としての残り一年をちゃんと全うしたい。
私から離れなければ…
そんな事をふつふつと考えていると、涙がぽとりとまた溢れだす。鼻を啜りあげてどうにか平常心を取り戻そうと深呼吸する。
「…姐様…!」
遠くで寧々ちゃんが私を呼ぶ声がする…
目を開けて起きなければと思うのに…
瞼が重くて…起きられない…
脈を打つたびに何かに叩かれているよう頭がガンガンと痛む…
「鈴蘭……鈴蘭!」
低く響く心地良い声が聞こえる…
「何があったんだ?」
「薬師様が言うには…湯あたりされたのではと…。
長く湯殿からお出にならなかったので、心配になって覗いてみたら脱衣室にお倒れに…。」
寧々ちゃんが声の主にひと通りの説明をしている。
恥ずかしい…
私は大丈夫だと早く伝えたいのに…
頭が重い…身体も強張っていて、まるで金縛りにあったかのように動けない…。
どうすれば…霧がかかった意識の中で、私は独り焦りもがき苦しんでいた。
「何か…よくなる薬はないのか?」
「水分を取って安静にしていれば大丈夫だと…ただ、目を覚ましてくれない事には水分も取れなくて…」
いつも勝気な寧々ちゃんの、今にも泣き出しそうな声…
突然…上半身が抱き起こされて…誰かの逞しい腕に支えられる。
すると…唇に生暖かい温もりが…と思っていると冷たい水が注ぎ込まれる…
美味しい…身体は水を欲していた。
何度となく注がれる水が熱った身体に染み渡る。
朦朧とする意識の中で、その事だけが記憶として鮮明に残った。
次に目が冷めたのは丑の刻近く
シンっと静まり返った真っ暗な世界に、突然独り置いて行かれたような、心細さでなかなか目を開ける事が出来ないでいた。
頭の痛みはもう無いけど…お腹が空いた…
夕飯を共にと晴明様との約束を思い出し、気持ちが落ち込む。この先、あの方とあと何回一緒にお食事が出来るのだろう…?
ずっとあの方の別邸に居座る訳には行かない…踊り子としての残り一年をちゃんと全うしたい。
私から離れなければ…
そんな事をふつふつと考えていると、涙がぽとりとまた溢れだす。鼻を啜りあげてどうにか平常心を取り戻そうと深呼吸する。



