一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

僧侶達の読経も終わり、再び鈴蘭が舞台に上がる。
衣装が変わり先程よりは、温かそうだと少し胸を撫で下ろす。

だが、やはり足元は裸足だ。

「陛下、先程舞台を確認したところ、中央部は濡れておりませんでしたのでご安心を。後、衣を1着多く着込んで頂きましたので。」
李生が戻って来て耳元で報告を受ける。

「分かった。ありがとう。」
俺も安堵し彼女の舞台を堪能しようと向き合う。

それにしても…鈴蘭が舞台に上がった途端、周囲は静まり返り、皆が彼女の虜になっている。

伸びやかな歌声と舞踊、そして纏う空気でさえも色を変える。

美しい、綺麗、そんな言葉では言い表せない。
神々しさを纏い、この場にいる全ての者を魅了する。

そして30分程にも及ぶ舞は歓声と拍手の中で幕を閉じる。鈴蘭は全霊全身をかけて、これを5日間も続けなければならないのかと、何も知らなかった己を恥じる。

祈祷の全てが終わり、上皇后の言葉で締めくくる。俺の出番は無いだろと、そそくさと席を後にする。

すると、上皇后から声がかかる。

「皇帝ともあろう方が上皇に会わずして帰るのですか?」
いつもながら上から人を見るような態度が鼻に付く。

「上皇陛下にはまた、後ほど伺うつもりであります。
恐れながら申し上げます。
私も含め、官僚の中には執務を残して来ている者もおります。これが5日続くとなると、世の動きが停滞するのではと懸念されます。明日からは手が空いた者のみとさせて頂きたい。」
軽く頭を下げてお伺いを立てるのだが、

「上皇の命、そなたにとってそれ程軽い物なのか?
国中上げて祈祷するべき事であるぞ。
まぁよい。好きにしなさいな。上皇にもしもの事があったらそなたのせいじゃ。」

上皇后はそう言い放ち、フンっと鼻を鳴らして踵を返し去って行く。

子供じみた言い分をため息混じりに聞き流す。

「明日からは希望参加者のみで良いと通達してくれ。あの人のわがままで国を揺るがす訳にはいかない。全責任は私がとる。」

「御意に。」
残っていた官僚達にそう告げて先を急ぐ。

「陛下、恐れながら申し上げます。」
後ろから慌てて着いて来た李生に止められる。

「何だ。」
手短にして欲しいとぶっきらぼうに聞き返す。

「その格好では、鈴蘭殿に気付かれるのでは…と思われますが。」

ああ、そうか…。早く会いたいと気持ちばかりが焦り、自分の衣装が皇服だった事を見逃していた。

「…そうだな。急いで着替えるぞ。」

バタバタと役人の服に着替え、彼女がいる控室へとひた走る。