一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

鈴蘭の演目が終わり、観客である官僚達から感嘆の声が聞こえて来る。

俺はそれを誇らしくも思い、またライバルが増えるのかと、焦りにも似たザワザワと波立つ思いに生唾を飲んだ。

要らぬ心配を増やしながら、ひたすら雪よ止めと祈り続ける。

鈴蘭の舞が終われば、その後は15分程僧侶達の読経があり、その間鈴蘭は小休憩に入ると李生から情報を得ている。

「休憩の間に舞台の絨毯を確認してくれ。濡れているようなら取り替えを。」
隣に控える李生に耳打ちし指示を出す。

「御意に。」
そう一言いい残して李生は隠密のような動きで暗がりに消えていった。この間に鈴蘭の様子を見に行けないだろうかと、俺は周りを伺い見る。

すると周りも集中が途切れたのか、こそこそと無駄話しをし始めていた。

側室達なんかはいつの間にか、茶と菓子を食べ始めているではないか。

これは祭りでも見せ物でも無く、上皇の回復を願い祈りを込めた厳かな祈祷式だ。何を血迷っているのかとその場で罵倒したくなる。

なんなら後宮から追い出せる手っ取り早い手段かもしれない。そう思いながら俺は無意識に立ち上がり、鈴蘭の居る楽屋へと足を向ける。

それなのに、近くにいた軍師が話しかけてくる。
大事な用かといえばそれはたわいも無い娘自慢で、この場に相応しく無い会話でもあった。

隣を見れば上皇后でさえも、気に入った若い官僚を集め、楽しそうに話しを弾ませている。

この中にいったい何人が、純粋に上皇の為に祈りを捧げているのだろうか…。

俺も然り…。

もしかしたら、この場で1番上皇の回復を思い、祈りを捧げているのは鈴蘭だけかもしれない。

そんな事を思いながら、結局足止めを余儀なくされ、その場を離れる事が出来ずにいた。

こうして15分があっという間に過ぎ去った。