翌朝…
白々しく夜が明けていく朝の光に、ハッと目が覚めてバッと飛び起きると、見慣れぬ寝台の上で1人眠っていた。
ここは…どこだ?
周りを見渡せば近くに小さな寝息を聞く。
ハッとして足元を見れば、小さく丸まって眠っている鈴蘭を見つける。
寒くなかっただろうか…彼女の為の寝台を奪ってしまったのだと理解して、慌てて布団の中に彼女を入れる。
それにしても…丸まった姿が猫のようで可愛いな。
身体を冷やさなかっただろうか。ちゃんと寝れたのだろうか…。心配になって布団の中でそっと抱きしめ温める。
すると少し身動いだかと思うと、そっとその綺麗な瞳がゆっくりと開いていく。
焦点が会ってしばらくじっと見つめてくるから、
「おはよう。」
と、声をかけてみる。
すると、
「ひゃあ…。」
と、鈴蘭は声にならない声を上げて、びっくりした顔を見せ飛び上がりそうになるから、咄嗟に抱き止める。
「すまない。そなたの寝台を奪ってしまったようだ。布団も掛けずに眠っていたから心配だ。体調を崩していないだろうか?」
「だ、大丈夫です。どこでも寝れるのが特技ですから…。」
まだこの状況がちゃんと分かっていない顔でそれでも、一生懸命返事をしてくれる。
「その特技はいささか心配だが…。
寝れたのなら良かった。
…俺はそろそろ自室に戻らなければ李生に怒られそうだ。」
ここで寝入ってしまった事で、既に小言は覚悟の上だが、この柔らかな温もりを手離すのは勇気がいるなと、言葉とは裏腹にぎゅっと抱きしめてしまう。
「きっと李生様なら大丈夫だと思います。昨夜、このまま寝かせて欲しいと言っておりましたから。」
鈴蘭の優しい声を聞き、そうか…それならこの極上のひと時を、もう少し味わったとて何も言われないだろう。と、たかを括る。
「もう少し眠られますか?私は、席を外した方が…。」
鈴蘭の与えられた部屋なのに、彼女が部屋を出て行こうとする。
「ここは鈴蘭殿の為に用意した部屋なのだから、出て行くのは俺の方だ。」
彼女が起き上がるのを慌てて止める。
「いえ、その…隣の続き間にお布団を敷いてもらっているので…そちらに行きます。
その…やはり、この状況は良くないのでは…。」
恥ずかしそうに頬を染める彼女を見て、残念な気持ちをひた隠し腰を起こす。
「そうだな…。この状況は、俺の気持ちを一方的に押し付けてるだけかもしれない。」
「いえ…あの…私も決して嫌ではないのです。ただ…慣れなくて…恥ずかしくて…。」
真っ赤なった顔を両手で隠してしまう。
「嫌われていないのなら安堵した。
俺は自室に戻るから、そなたはもう少しゆっくり寝てれば良い。」
頭を優しく撫ぜて、俺は重い腰をあげ寝台から降りる。
昨夜寝る前に脱がしてくれたのであろう上着が、綺麗に畳まれていた。それを手に取り、自分で身なりを整えようとする。
すると鈴蘭も慌てて起きて来て、俺の身なりを一緒に整えてくれる。そんな彼女をよく見たら、自分は薄手の着物一枚だから、俺は慌てて近くに掛けてある打ち掛けを羽織らせる。
「ありがとうございます…。」
恥ずかしそうにお礼を言う、彼女が愛しくて仕方がない。
俺が廊下までの扉を開けて歩き出せば、
「廊下までお供します。」
と、ついて来てくれる。
この時ほど、5重もの扉があって良かったと思った事はないだろう。
「あの…その、またお会い出来る時間があれば足を運んで下さいませ。」
「ああ、もちろんだ。時間を見つけて必ず来よう。」
そう約束を交わして最後の扉の前で、しばしの別れを告げる。
「そのような格好でいつまでもいたら、本当に風邪を引いてしまう。さぁ、早く寝台に戻ってもう一眠りして欲しい。」
足元をよく見ると裸足だったから、驚き慌てて自分の下履きを脱ぎ彼女に履かせる。
それは彼女にはいささか大き過ぎたが、ついそこまでの距離だから問題ないだろうと思う。
「だ、大丈夫です。それでは晴明様が寒くなってしまわれます。」
こう言う事にはいつだって、なかなか首を縦に振らない強情さがある。
「俺は靴下も履いているから大丈夫だ。次に来た時に返してくれたら良いから。」
半ば強引に履かせて、その場を足早に立ち去る。
同じ場所にいるのだから、時間を遣り繰りすれば直ぐに会えるとこの時はたかを括っていた。
白々しく夜が明けていく朝の光に、ハッと目が覚めてバッと飛び起きると、見慣れぬ寝台の上で1人眠っていた。
ここは…どこだ?
周りを見渡せば近くに小さな寝息を聞く。
ハッとして足元を見れば、小さく丸まって眠っている鈴蘭を見つける。
寒くなかっただろうか…彼女の為の寝台を奪ってしまったのだと理解して、慌てて布団の中に彼女を入れる。
それにしても…丸まった姿が猫のようで可愛いな。
身体を冷やさなかっただろうか。ちゃんと寝れたのだろうか…。心配になって布団の中でそっと抱きしめ温める。
すると少し身動いだかと思うと、そっとその綺麗な瞳がゆっくりと開いていく。
焦点が会ってしばらくじっと見つめてくるから、
「おはよう。」
と、声をかけてみる。
すると、
「ひゃあ…。」
と、鈴蘭は声にならない声を上げて、びっくりした顔を見せ飛び上がりそうになるから、咄嗟に抱き止める。
「すまない。そなたの寝台を奪ってしまったようだ。布団も掛けずに眠っていたから心配だ。体調を崩していないだろうか?」
「だ、大丈夫です。どこでも寝れるのが特技ですから…。」
まだこの状況がちゃんと分かっていない顔でそれでも、一生懸命返事をしてくれる。
「その特技はいささか心配だが…。
寝れたのなら良かった。
…俺はそろそろ自室に戻らなければ李生に怒られそうだ。」
ここで寝入ってしまった事で、既に小言は覚悟の上だが、この柔らかな温もりを手離すのは勇気がいるなと、言葉とは裏腹にぎゅっと抱きしめてしまう。
「きっと李生様なら大丈夫だと思います。昨夜、このまま寝かせて欲しいと言っておりましたから。」
鈴蘭の優しい声を聞き、そうか…それならこの極上のひと時を、もう少し味わったとて何も言われないだろう。と、たかを括る。
「もう少し眠られますか?私は、席を外した方が…。」
鈴蘭の与えられた部屋なのに、彼女が部屋を出て行こうとする。
「ここは鈴蘭殿の為に用意した部屋なのだから、出て行くのは俺の方だ。」
彼女が起き上がるのを慌てて止める。
「いえ、その…隣の続き間にお布団を敷いてもらっているので…そちらに行きます。
その…やはり、この状況は良くないのでは…。」
恥ずかしそうに頬を染める彼女を見て、残念な気持ちをひた隠し腰を起こす。
「そうだな…。この状況は、俺の気持ちを一方的に押し付けてるだけかもしれない。」
「いえ…あの…私も決して嫌ではないのです。ただ…慣れなくて…恥ずかしくて…。」
真っ赤なった顔を両手で隠してしまう。
「嫌われていないのなら安堵した。
俺は自室に戻るから、そなたはもう少しゆっくり寝てれば良い。」
頭を優しく撫ぜて、俺は重い腰をあげ寝台から降りる。
昨夜寝る前に脱がしてくれたのであろう上着が、綺麗に畳まれていた。それを手に取り、自分で身なりを整えようとする。
すると鈴蘭も慌てて起きて来て、俺の身なりを一緒に整えてくれる。そんな彼女をよく見たら、自分は薄手の着物一枚だから、俺は慌てて近くに掛けてある打ち掛けを羽織らせる。
「ありがとうございます…。」
恥ずかしそうにお礼を言う、彼女が愛しくて仕方がない。
俺が廊下までの扉を開けて歩き出せば、
「廊下までお供します。」
と、ついて来てくれる。
この時ほど、5重もの扉があって良かったと思った事はないだろう。
「あの…その、またお会い出来る時間があれば足を運んで下さいませ。」
「ああ、もちろんだ。時間を見つけて必ず来よう。」
そう約束を交わして最後の扉の前で、しばしの別れを告げる。
「そのような格好でいつまでもいたら、本当に風邪を引いてしまう。さぁ、早く寝台に戻ってもう一眠りして欲しい。」
足元をよく見ると裸足だったから、驚き慌てて自分の下履きを脱ぎ彼女に履かせる。
それは彼女にはいささか大き過ぎたが、ついそこまでの距離だから問題ないだろうと思う。
「だ、大丈夫です。それでは晴明様が寒くなってしまわれます。」
こう言う事にはいつだって、なかなか首を縦に振らない強情さがある。
「俺は靴下も履いているから大丈夫だ。次に来た時に返してくれたら良いから。」
半ば強引に履かせて、その場を足早に立ち去る。
同じ場所にいるのだから、時間を遣り繰りすれば直ぐに会えるとこの時はたかを括っていた。



