一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

(晴明side)

久しぶりによく笑った。

鈴蘭との2人っきりの夕飯を終え、久々に腹が満たされ眠くまでなってくる。彼女との食事はいつだって、腹だけではなく心が満たされる。

この時間がいつまでも続けば良いなと願ってしまうから、自分の立場をなかなか言い出せないままだ。

「晴明様。お茶のお代わりは入りますか?
それとも…そろそろお休みの時間になられますか?」

鈴蘭に読み書きを教えてやると自分から言っておきながら、何も出来ずにいたから、寧々と勉強していると聞き、せめて読み聞かせて欲しいと、その教科書を手に鈴蘭が朗読する声を癒しの呪文のように聞いていた。

ずっと聞いていたい。それなのに…耳障りの良い彼女の声を聞き、不覚にも眠気に誘われる。

「申し訳ない…
そなたの声は眠り薬のような効果がある。ここ数日まとも寝れていなかったから…。
名残惜しいがそろそろ部屋に戻らねばならぬな。」

出来ればこのまま鈴蘭のそばで寝れたなら、どんなに幸せか…。そんな事まで考えてしまう始末だ。

「はい…。ここには5日ほどご祈祷を捧げるため、滞在すると聞いております。その間、もしもお時間がありましたら、いつでもこちらに来て下さいね。」

彼女が微笑みを浮かべながら可愛く言ってくれるから、睡魔に襲われて思考が回らない俺は、そんな彼女を抱きしめてしまう。

「このままずっと、この時間が続けばいいのに…」
抱きしめたまま本音をポツリと呟くと、

「本当ですね。」
ふふふっと可愛く笑って同意してくれるからどんどん欲が出てしまう。
そのままの体勢でゴロンと長椅子に寝転んで、このまま寝てしまいたいと彼女に甘えてしまう。

「晴明様…寝てしまわれますか?ここではお身体に触りますから…。どなたか呼びましょうか?」
さすがに彼女も心配になったのか、もぞもぞと俺の腕から逃れようとする。

「鈴蘭の心も無いまま…自分の物にしたいとは、思わないから…安心して…くれ。」
男の欲を目の前にして、理性を保っていられるのは睡魔がそれに勝っているからだ。

もう…思考回路が働かない。ただただ…このまま寝てしまいたい。

そんな記憶を最後に、俺は迂闊にも意識を手放した。