ひっそりと佇む華宮殿は、皇帝である晴明でさえも今まで足を入れた事はなかった。
邸内は怖いくらいシンと静まり返り、冷んやりとした廊下には足元を照らす行燈だけが、ぽつんぽつんと置かれている。
案内する李生の後ろを歩きながら、晴明は遠過ぎると気持ちだけが早る。
長い長い廊下の1番奥、そこだけが暗がりから明るく浮かび上がっている。
扉先には護衛が2名。
先の収穫祭の時も晴明に同行していた、見知った兵達だから、事情を良く知る者達で守られている事が分かりホッする。
「ご苦労。下がって良いぞ。」
晴明がそう兵達に声をかける。
「…御意に。」
と、兵達は家臣の礼を取り暗がりに去って行く。
「鈴蘭殿、入るぞ。」
晴明は声をかけて、自らの手で扉を開ける。
するとそこは扉しかない板の間で…
もう一度その扉を開ける。
するとまた扉が続く。
「この扉…いったい何重あるのだ?」
苛立ちを隠す事無く李生に問う。
「あと、2回ほど…。なにせ華宮ですから。」
李生がそう言って、晴明の変わりにと先を急ぎ扉を開ける。
「この扉で最後です。」
黒光りする漆塗りの重々しい扉が見えて来る。
「なんなんだまったく…もっと近道は無いのか⁉︎」
晴明の苛立ちはピークに達していた。
「なんせ大切な正妃様のお部屋になる場所ですから、仕方ないです。」
そう嗜める李生に、
「俺だったらこんな部屋は作らない。」
と、言い放つ。
後宮を建てたのは先々代の皇帝だ。その伝統ある建物にケチをつける皇帝は、未だかつていなかっただろうと李生は苦笑いする。
邸内は怖いくらいシンと静まり返り、冷んやりとした廊下には足元を照らす行燈だけが、ぽつんぽつんと置かれている。
案内する李生の後ろを歩きながら、晴明は遠過ぎると気持ちだけが早る。
長い長い廊下の1番奥、そこだけが暗がりから明るく浮かび上がっている。
扉先には護衛が2名。
先の収穫祭の時も晴明に同行していた、見知った兵達だから、事情を良く知る者達で守られている事が分かりホッする。
「ご苦労。下がって良いぞ。」
晴明がそう兵達に声をかける。
「…御意に。」
と、兵達は家臣の礼を取り暗がりに去って行く。
「鈴蘭殿、入るぞ。」
晴明は声をかけて、自らの手で扉を開ける。
するとそこは扉しかない板の間で…
もう一度その扉を開ける。
するとまた扉が続く。
「この扉…いったい何重あるのだ?」
苛立ちを隠す事無く李生に問う。
「あと、2回ほど…。なにせ華宮ですから。」
李生がそう言って、晴明の変わりにと先を急ぎ扉を開ける。
「この扉で最後です。」
黒光りする漆塗りの重々しい扉が見えて来る。
「なんなんだまったく…もっと近道は無いのか⁉︎」
晴明の苛立ちはピークに達していた。
「なんせ大切な正妃様のお部屋になる場所ですから、仕方ないです。」
そう嗜める李生に、
「俺だったらこんな部屋は作らない。」
と、言い放つ。
後宮を建てたのは先々代の皇帝だ。その伝統ある建物にケチをつける皇帝は、未だかつていなかっただろうと李生は苦笑いする。



