今、話すべきだ。
頭の中でもう1人の俺が訴えてくる。
このタイミングで身分を明かさなければ卑怯では無いか?何も知らないままでは彼女を騙す事になる。
言わなければと思うのに、もう一方で今明かしたらその場でせっかく開かれ始めた彼女の心が、閉ざされてしまうのではないかと恐れる俺がいる。
「あの…、ありがとうございました。」
部屋の扉の前まで来て、遠慮気味に握られていた鈴蘭の手が離れて行く。
それに寂しさを覚えてつい引き止めてしまう。
「鈴蘭、明日の朝食は出来るだけ一緒に取ろう。ちゃんと話しておかなければならない話しもあるし、聞きたい事も沢山あるだろう。」
先延ばしにするのは卑怯だと思うが、どうしても臆してしまう。
「…はい、分かりました。」
小さくお辞儀をする彼女が、扉の向こうへと消えてしまいそうで堪らず抱きしめたくなる。それを寸でのところで耐え忍び、髪をひと撫ぜするだけに止まる。
会って言葉を交わせば、これまでとは違う気持ちが溢れ出し、日に日に愛おしさが滲み出しどうしても触れたくなってしまう。
『貴方の一方的な思いだけで、近付き過ぎるのはどうかと思います。』
警告音のように李生の言葉が頭を掠める。
おやすみの挨拶を交わし、1人寂しく自室へ戻る。
明日こそは話さなければと思いながら、夜は更けてゆく。
頭の中でもう1人の俺が訴えてくる。
このタイミングで身分を明かさなければ卑怯では無いか?何も知らないままでは彼女を騙す事になる。
言わなければと思うのに、もう一方で今明かしたらその場でせっかく開かれ始めた彼女の心が、閉ざされてしまうのではないかと恐れる俺がいる。
「あの…、ありがとうございました。」
部屋の扉の前まで来て、遠慮気味に握られていた鈴蘭の手が離れて行く。
それに寂しさを覚えてつい引き止めてしまう。
「鈴蘭、明日の朝食は出来るだけ一緒に取ろう。ちゃんと話しておかなければならない話しもあるし、聞きたい事も沢山あるだろう。」
先延ばしにするのは卑怯だと思うが、どうしても臆してしまう。
「…はい、分かりました。」
小さくお辞儀をする彼女が、扉の向こうへと消えてしまいそうで堪らず抱きしめたくなる。それを寸でのところで耐え忍び、髪をひと撫ぜするだけに止まる。
会って言葉を交わせば、これまでとは違う気持ちが溢れ出し、日に日に愛おしさが滲み出しどうしても触れたくなってしまう。
『貴方の一方的な思いだけで、近付き過ぎるのはどうかと思います。』
警告音のように李生の言葉が頭を掠める。
おやすみの挨拶を交わし、1人寂しく自室へ戻る。
明日こそは話さなければと思いながら、夜は更けてゆく。



