「若、別邸に到着しますよ。起きてください。」
李生の声を遠くに聞き俺はパッと目を覚ます。
「……寝てたか…?」
ぼんやりする頭で周りを見渡す。知らぬ間に寝落ちしていた。
「ほんの5分か10分です。それほど疲れが溜まっているのですよ。早く鈴蘭殿に会って癒されて下さい。」
笑いを含む声で言われ、揶揄われているのかと李生を見やる。
「夕飯は自室に運びますか?」
「とりあえず…鈴蘭殿に会ってから考える。」
「かしこまりました。」
馬車を降り別邸の玄関に足を運ぶと、朝と変わらず使用人達が綺麗に列をなして迎えてくれる。
その中に鈴蘭を探すが姿が見えない。
今朝、並ばなくて良いと告げたのだが、彼女の姿が見えない事にがっかりする俺がいた。
「お帰りなさいませ、若様。」
歩み寄って来る女中頭の油淋に帽子を手渡し、
「鈴蘭殿はどうしている?今日1日楽しめていただろうか?」
聞きたいのはただ一つ鈴蘭の事で…
ふふっと含み笑いをしながら油淋が答える。
「鈴蘭様ですが少し足の怪我が腫れていらして、大事をとって部屋で休んで頂いております。
朝から寧々と一緒に商人が持ち込んだ品々を見て楽しんでおいででしたよ。」
「何か、欲しい物は見つかっただろうか?」
「それが…寧々が言うには、遠慮されてしまってなかなか欲しいと言われなかったようで、綺麗と言われた物や2度ほど手に取った物は、とりあえず買ったそう
です。」
やはり遠慮してしまったかと、少し残念な気持ちになるが、彼女らしいとも思い納得する。
「そうか。…なかなかに手強いな。」
俺は苦笑いを返しながら、早く鈴蘭に会いたいと足早に邸宅に入り、着替えも後回しに彼女のいる客間にと足を運ぶ。
「お帰りなさいませ、若様。」
寧々が客間の入口に椅子を並べて警護するかのように座っていた。
「鈴蘭殿はどうした?」
「夕方過ぎからお休みになっております。
まだ、夕飯も召し上がられていませんのでお声がけしてみましょうか?」
寧々が気を利かせそう言って来る。
「いや、俺が行く。寧々は下がってよい。」
寧々は楽しそうに微笑み礼をして足早に去って行った。
「鈴蘭殿?…入るぞ。」
3回ほど声をかけたところで応答は無い。
少し心配になってそっと中を覗く。
暗がりの部屋の中、小さな灯篭の灯りを頼りに彼女の寝台にそっと近付く。しかし、そこに彼女は居なくて…少しの不安が胸を燻る。
どこに…?
部屋の中をキョロキョロと目を凝らして見渡すと、部屋を温めている火鉢の近くにある長椅子に、小さな寝息を聞く。
俺は心底安堵して起こさぬようにそっと近付く。
暖かな毛布に包まれて、スースーと眠る鈴蘭の可愛らしい寝顔を見つける。側に寄りそっと跪きしばらくその姿を覗き見る。
寝顔も変わらず愛らしい。
寝ている時の方が幾分幼く見えるだろうか。顔に被るひと房の髪をそっと耳にかけてやると、少し小さくみじろぐから、その姿さえ可愛らしくて時間を忘れて寝顔を堪能する。
しばらくして寧々が扉の隙間から、そっと声をかけて来る。
「お夕飯の準備が整いました。姐様は私がお側におりますので、若様はお夕飯を召し上がって下さいませ。」
「ありがとう。…無理に起こさなくて良いからな。」
そう念を押して俺は客間から出る。
一緒に夕飯は叶わなかったが、その代わり貴重な寝顔を堪能出来て満足した。
李生の声を遠くに聞き俺はパッと目を覚ます。
「……寝てたか…?」
ぼんやりする頭で周りを見渡す。知らぬ間に寝落ちしていた。
「ほんの5分か10分です。それほど疲れが溜まっているのですよ。早く鈴蘭殿に会って癒されて下さい。」
笑いを含む声で言われ、揶揄われているのかと李生を見やる。
「夕飯は自室に運びますか?」
「とりあえず…鈴蘭殿に会ってから考える。」
「かしこまりました。」
馬車を降り別邸の玄関に足を運ぶと、朝と変わらず使用人達が綺麗に列をなして迎えてくれる。
その中に鈴蘭を探すが姿が見えない。
今朝、並ばなくて良いと告げたのだが、彼女の姿が見えない事にがっかりする俺がいた。
「お帰りなさいませ、若様。」
歩み寄って来る女中頭の油淋に帽子を手渡し、
「鈴蘭殿はどうしている?今日1日楽しめていただろうか?」
聞きたいのはただ一つ鈴蘭の事で…
ふふっと含み笑いをしながら油淋が答える。
「鈴蘭様ですが少し足の怪我が腫れていらして、大事をとって部屋で休んで頂いております。
朝から寧々と一緒に商人が持ち込んだ品々を見て楽しんでおいででしたよ。」
「何か、欲しい物は見つかっただろうか?」
「それが…寧々が言うには、遠慮されてしまってなかなか欲しいと言われなかったようで、綺麗と言われた物や2度ほど手に取った物は、とりあえず買ったそう
です。」
やはり遠慮してしまったかと、少し残念な気持ちになるが、彼女らしいとも思い納得する。
「そうか。…なかなかに手強いな。」
俺は苦笑いを返しながら、早く鈴蘭に会いたいと足早に邸宅に入り、着替えも後回しに彼女のいる客間にと足を運ぶ。
「お帰りなさいませ、若様。」
寧々が客間の入口に椅子を並べて警護するかのように座っていた。
「鈴蘭殿はどうした?」
「夕方過ぎからお休みになっております。
まだ、夕飯も召し上がられていませんのでお声がけしてみましょうか?」
寧々が気を利かせそう言って来る。
「いや、俺が行く。寧々は下がってよい。」
寧々は楽しそうに微笑み礼をして足早に去って行った。
「鈴蘭殿?…入るぞ。」
3回ほど声をかけたところで応答は無い。
少し心配になってそっと中を覗く。
暗がりの部屋の中、小さな灯篭の灯りを頼りに彼女の寝台にそっと近付く。しかし、そこに彼女は居なくて…少しの不安が胸を燻る。
どこに…?
部屋の中をキョロキョロと目を凝らして見渡すと、部屋を温めている火鉢の近くにある長椅子に、小さな寝息を聞く。
俺は心底安堵して起こさぬようにそっと近付く。
暖かな毛布に包まれて、スースーと眠る鈴蘭の可愛らしい寝顔を見つける。側に寄りそっと跪きしばらくその姿を覗き見る。
寝顔も変わらず愛らしい。
寝ている時の方が幾分幼く見えるだろうか。顔に被るひと房の髪をそっと耳にかけてやると、少し小さくみじろぐから、その姿さえ可愛らしくて時間を忘れて寝顔を堪能する。
しばらくして寧々が扉の隙間から、そっと声をかけて来る。
「お夕飯の準備が整いました。姐様は私がお側におりますので、若様はお夕飯を召し上がって下さいませ。」
「ありがとう。…無理に起こさなくて良いからな。」
そう念を押して俺は客間から出る。
一緒に夕飯は叶わなかったが、その代わり貴重な寝顔を堪能出来て満足した。



