いつか、この全ての案件をどうにか終えて、我々の帰るべき場所に帰りたい。
密かにそう思っている。
それは1年先か…10年先か…はたまた生きているうちに成し遂げられるのか…。
遠い未来に思いを馳せて、馬車は宮殿へと到着する。
内乱が終わり3年が経つ。
今やっと国は平和を取り戻し、かつて賑やかだった頃に戻りつつある。
しかし、この国が抱えている情勢は難問ばかりだ。
隣国とは10年間休戦をし続けている状態、地方は今年干ばつが続き不作で喘いでいる民がいる。至急の援助が必要だ。
それなのに、都市部と地方とを繋ぐ大動脈の道が、雪崩にあって通り抜け出来ない状態が3日続いている。
この冬の寒さで凍てつく辺境地に、好んで働きに行く奴なんていない。
国の兵を集めてでも、雪を退け地方に早く食料を運ばなくてはならない。
「勝座山の雪崩だが、第六部隊の兵士を送れないだろうか?彼らは冬山に長けた集団だ。何なら臨時報酬に危険手当も付けたらいい。いち早く開通を目指すべきだ。」
早朝の会議で、皇帝である俺が声を張る。
なぜ大の大人が集まって、誰も皆、顔色ばかりを伺ってばかりで声を上げる者がいないのだ。
この政権は腐っている。己の欲私欲だけに業を成した奴どもが、強い者に巻かれて意見の一つも述べる事が出来ないでいる。
出来ればまず、古臭い身分制度を撤廃したい。
知識や能力の有る者が国を動かすべきである。
今こそ古き悪き者を追い出し、能力のある者、正しき者が意見出来る政権にしなければ、この国は衰退の一途を辿るだろう。
「誰か、意見を述べる者はいないのか。
下級であっても身分は問わない。ここは新しき良き知恵を述べる場所でもある。」
若き皇帝の低くよく通る声が広い会議の間に響き渡る。
勇気を持って手を挙げたのは若き武官、洸 龍傑(こうりゅうけつ)だ。彼とは3年前の内乱の際、俺と酒を酌み交わし意見を交わした間柄でもある。
「洸 龍傑、意見を述べてみよ。」
強き賢い王を演じる俺は、武官達の前では堂々と話す事を心掛けている。
今や若き武官達には『眠れぬ獅子』と異名を付けられ、恐れられながらも、尊敬される存在となった。
だが、古き武官達には、歯に衣着せぬ物言いは煙たがられている事も承知の上だ。
上に立つものは嫌われてなんぼだ。
皆に好かれるような柔な皇帝は今の世には要らない。
欲しいのは民を惹きつけ先導し、より良い道へと導く事の出来る強き王だ。
「陛下、恐れながら申し上げます。
陸路が駄目なら、とりあえずの物資を海路で送るのはどうでしょうか?今、この都に大きな貨物船が数隻停泊しております。他国の船舶も入れれば10数隻になります。民間、他国問わず協力を仰ぐのはどうでしょうか?人道支援となれば、快く引き受けてくれる船もいる筈です。」
「それは良い考えだ。しかし飢餓で苦しむ村々は海から離れた場所にある。船で運んだ後、陸路を渡るに馬車はどうする?」
「近隣の港からは巡回戦術で町々を経由して、運ぶのです。隣町までなら行けると言う荷馬車もあるでしょうし。可能なら騎馬隊を貸し出して頂ければ、国としても株が上がる。」
「ふん。そんな地方の民ごときに好かれて何が得する?手間がかかる上に、国の兵士を戦以外で使うなんて恥ずかしい事この上無いわ。」
父の代から勢力を伸ばす古柱の1人、楚 光源(そこうげん)が面白く無いと声を上げる。
「では、光源殿に尋ねる。他に良い案はあるのか?」
「それは…出来るだけ早く…雪を取り除けば良いだけの事…。」
「それでは遅いのだ。地方の民こそこの国の宝だ。1日でも早く彼らを助け無ければ、百姓一揆でも起きたらそれこそ兵士が疲弊する。」
俺は鋭く指摘する。
皇帝陛下に言われては、罰が悪いとばかり光源は口をつぐむ。
「龍傑、早速お主の案を後で詰めよう。
騎兵隊団長と第六部隊の部隊長も集まってくれ。それではこれで閉会する。」
この後も若手から意見が数件出て、まだまだこの国も捨てたもんじゃ無いと晴明は少し安堵した。
白熱した会議は正午にやっと終わり、昼会食を挟みながら若手のみで意見をすり合わせ、なんとか夕方には援助の荷を運んでくれる船舶も10隻見つける事が出来た、明日の早朝出発予定だ。
それに、雪崩現場には第六部隊総勢100名正午に出動し、明日には仕事に入ると夕方連絡を受ける。
密かにそう思っている。
それは1年先か…10年先か…はたまた生きているうちに成し遂げられるのか…。
遠い未来に思いを馳せて、馬車は宮殿へと到着する。
内乱が終わり3年が経つ。
今やっと国は平和を取り戻し、かつて賑やかだった頃に戻りつつある。
しかし、この国が抱えている情勢は難問ばかりだ。
隣国とは10年間休戦をし続けている状態、地方は今年干ばつが続き不作で喘いでいる民がいる。至急の援助が必要だ。
それなのに、都市部と地方とを繋ぐ大動脈の道が、雪崩にあって通り抜け出来ない状態が3日続いている。
この冬の寒さで凍てつく辺境地に、好んで働きに行く奴なんていない。
国の兵を集めてでも、雪を退け地方に早く食料を運ばなくてはならない。
「勝座山の雪崩だが、第六部隊の兵士を送れないだろうか?彼らは冬山に長けた集団だ。何なら臨時報酬に危険手当も付けたらいい。いち早く開通を目指すべきだ。」
早朝の会議で、皇帝である俺が声を張る。
なぜ大の大人が集まって、誰も皆、顔色ばかりを伺ってばかりで声を上げる者がいないのだ。
この政権は腐っている。己の欲私欲だけに業を成した奴どもが、強い者に巻かれて意見の一つも述べる事が出来ないでいる。
出来ればまず、古臭い身分制度を撤廃したい。
知識や能力の有る者が国を動かすべきである。
今こそ古き悪き者を追い出し、能力のある者、正しき者が意見出来る政権にしなければ、この国は衰退の一途を辿るだろう。
「誰か、意見を述べる者はいないのか。
下級であっても身分は問わない。ここは新しき良き知恵を述べる場所でもある。」
若き皇帝の低くよく通る声が広い会議の間に響き渡る。
勇気を持って手を挙げたのは若き武官、洸 龍傑(こうりゅうけつ)だ。彼とは3年前の内乱の際、俺と酒を酌み交わし意見を交わした間柄でもある。
「洸 龍傑、意見を述べてみよ。」
強き賢い王を演じる俺は、武官達の前では堂々と話す事を心掛けている。
今や若き武官達には『眠れぬ獅子』と異名を付けられ、恐れられながらも、尊敬される存在となった。
だが、古き武官達には、歯に衣着せぬ物言いは煙たがられている事も承知の上だ。
上に立つものは嫌われてなんぼだ。
皆に好かれるような柔な皇帝は今の世には要らない。
欲しいのは民を惹きつけ先導し、より良い道へと導く事の出来る強き王だ。
「陛下、恐れながら申し上げます。
陸路が駄目なら、とりあえずの物資を海路で送るのはどうでしょうか?今、この都に大きな貨物船が数隻停泊しております。他国の船舶も入れれば10数隻になります。民間、他国問わず協力を仰ぐのはどうでしょうか?人道支援となれば、快く引き受けてくれる船もいる筈です。」
「それは良い考えだ。しかし飢餓で苦しむ村々は海から離れた場所にある。船で運んだ後、陸路を渡るに馬車はどうする?」
「近隣の港からは巡回戦術で町々を経由して、運ぶのです。隣町までなら行けると言う荷馬車もあるでしょうし。可能なら騎馬隊を貸し出して頂ければ、国としても株が上がる。」
「ふん。そんな地方の民ごときに好かれて何が得する?手間がかかる上に、国の兵士を戦以外で使うなんて恥ずかしい事この上無いわ。」
父の代から勢力を伸ばす古柱の1人、楚 光源(そこうげん)が面白く無いと声を上げる。
「では、光源殿に尋ねる。他に良い案はあるのか?」
「それは…出来るだけ早く…雪を取り除けば良いだけの事…。」
「それでは遅いのだ。地方の民こそこの国の宝だ。1日でも早く彼らを助け無ければ、百姓一揆でも起きたらそれこそ兵士が疲弊する。」
俺は鋭く指摘する。
皇帝陛下に言われては、罰が悪いとばかり光源は口をつぐむ。
「龍傑、早速お主の案を後で詰めよう。
騎兵隊団長と第六部隊の部隊長も集まってくれ。それではこれで閉会する。」
この後も若手から意見が数件出て、まだまだこの国も捨てたもんじゃ無いと晴明は少し安堵した。
白熱した会議は正午にやっと終わり、昼会食を挟みながら若手のみで意見をすり合わせ、なんとか夕方には援助の荷を運んでくれる船舶も10隻見つける事が出来た、明日の早朝出発予定だ。
それに、雪崩現場には第六部隊総勢100名正午に出動し、明日には仕事に入ると夕方連絡を受ける。



