唄も中盤にかかる頃、会場内の誰しもが鈴蘭の声に魅了され夢うつつの中、遂に刺客が動き出す。
これをいち早く察知した俺は、怯む事なく舞台に飛び出し刺客を一撃する。
突然の出来事に客席は騒ぎ出す。
我先にと逃げ惑う群衆の波に押され、舞台を照らしていたかがり火が倒れ縁幕に火が移る。
俺は咄嗟に鈴蘭を肩に抱き上げ、寧々に後を頼むと告げて走り出す。
逃げるは裏の雑木林。
他に刺客がいないとも限らない。人混みを避けるべきだと瞬時に判断した。
遅れを取ったが虎徹ら隠密達も俺を護る為、周りを囲んで走り出す。
しばらく走ると、数名の刺客が追いかけて来る気配に気付く。
彼らの動きから充分訓練された兵士だと分かる。
俺は冷静に判断して戦う事を避ける為、ひたすら走り続ける事を選ぶ。その速さは矢の如く。
誰よりも足には自信がある。
例え鈴蘭を抱えていても、何ら変わりなく走り抜ける。
これはひとえに、子供の頃から山々を駆け巡り、自由に遊び回っていた経験のお陰だ。
虎徹率いる隠密達が、襲い掛かって来る刺客を次々にバッタバッタと倒して行く。遂に剣を交える音が鳴り止み、やっとここで俺も足を止める。
「…ここまで、これば…大丈夫だ…。」
いち早く周りの状況を見渡し安全を確認後、そっと肩に担いでいた鈴蘭を下ろす。
彼女は足をふらつかせ座り込みそうになるから、それを瞬時に抱き止める。小さくて華奢な彼女は、1俵の米俵よりも軽いのでは無いかと思うくらい軽く、その儚さに不安を感じてしまうほどだ。
そう思う俺だが、彼女からしてみれば見知らぬ男だ…。抱き止めた腕から逃げ出そうとして、尻餅をついてしまう。
申し訳無さを感じながら、それでも俺にとっては何よりも大切な人なのだと、慎重に抱き上げて大きな木の根に座らせる。
きっと彼女は今、何が起きたのか理解出来ていない筈だ。それなのに見知らぬ俺に連れ去れ、怯えさせてしまっているだろう…。
あえて距離を少し取り、落ち着くのを少し待つ事にする。
俺もさすがに久しぶりに走ったせいで、息も切れ額から汗が噴き出してくる。
都に来てから体力が落ちたなと痛感する。
「あの…どなたか存じませんが…こんな、私なんかを、助けて頂き…ありがとうございました。」
少し冷静を取り戻しただろう鈴蘭の、可愛らしい声を聞き、俺は感動を覚え、初めて面と向かって彼女を見る。
舞台を見上げていた時には気付かなかったが、思いの外、華奢で小さくて可愛らしいお人形みたいだと見入ってしまう。
透けてしまうほどに白い肌は、暗がりの雑木林の中でも浮かび上がるくらい綺麗で、そのくせ紅く染めた唇は妖艶なほど艶やかで美しく、時を忘れて見惚れてしまいそうになる。
そんな俺の額の汗を、彼女は自らの布巾を差し出し、拭こうとまでしてくれる。
彼女のそんな優しさに感動し、一つ一つの仕草に釘付けになりながら、表向きは冷静を保ち出来るだけ丁寧に受け応える。
これをいち早く察知した俺は、怯む事なく舞台に飛び出し刺客を一撃する。
突然の出来事に客席は騒ぎ出す。
我先にと逃げ惑う群衆の波に押され、舞台を照らしていたかがり火が倒れ縁幕に火が移る。
俺は咄嗟に鈴蘭を肩に抱き上げ、寧々に後を頼むと告げて走り出す。
逃げるは裏の雑木林。
他に刺客がいないとも限らない。人混みを避けるべきだと瞬時に判断した。
遅れを取ったが虎徹ら隠密達も俺を護る為、周りを囲んで走り出す。
しばらく走ると、数名の刺客が追いかけて来る気配に気付く。
彼らの動きから充分訓練された兵士だと分かる。
俺は冷静に判断して戦う事を避ける為、ひたすら走り続ける事を選ぶ。その速さは矢の如く。
誰よりも足には自信がある。
例え鈴蘭を抱えていても、何ら変わりなく走り抜ける。
これはひとえに、子供の頃から山々を駆け巡り、自由に遊び回っていた経験のお陰だ。
虎徹率いる隠密達が、襲い掛かって来る刺客を次々にバッタバッタと倒して行く。遂に剣を交える音が鳴り止み、やっとここで俺も足を止める。
「…ここまで、これば…大丈夫だ…。」
いち早く周りの状況を見渡し安全を確認後、そっと肩に担いでいた鈴蘭を下ろす。
彼女は足をふらつかせ座り込みそうになるから、それを瞬時に抱き止める。小さくて華奢な彼女は、1俵の米俵よりも軽いのでは無いかと思うくらい軽く、その儚さに不安を感じてしまうほどだ。
そう思う俺だが、彼女からしてみれば見知らぬ男だ…。抱き止めた腕から逃げ出そうとして、尻餅をついてしまう。
申し訳無さを感じながら、それでも俺にとっては何よりも大切な人なのだと、慎重に抱き上げて大きな木の根に座らせる。
きっと彼女は今、何が起きたのか理解出来ていない筈だ。それなのに見知らぬ俺に連れ去れ、怯えさせてしまっているだろう…。
あえて距離を少し取り、落ち着くのを少し待つ事にする。
俺もさすがに久しぶりに走ったせいで、息も切れ額から汗が噴き出してくる。
都に来てから体力が落ちたなと痛感する。
「あの…どなたか存じませんが…こんな、私なんかを、助けて頂き…ありがとうございました。」
少し冷静を取り戻しただろう鈴蘭の、可愛らしい声を聞き、俺は感動を覚え、初めて面と向かって彼女を見る。
舞台を見上げていた時には気付かなかったが、思いの外、華奢で小さくて可愛らしいお人形みたいだと見入ってしまう。
透けてしまうほどに白い肌は、暗がりの雑木林の中でも浮かび上がるくらい綺麗で、そのくせ紅く染めた唇は妖艶なほど艶やかで美しく、時を忘れて見惚れてしまいそうになる。
そんな俺の額の汗を、彼女は自らの布巾を差し出し、拭こうとまでしてくれる。
彼女のそんな優しさに感動し、一つ一つの仕草に釘付けになりながら、表向きは冷静を保ち出来るだけ丁寧に受け応える。



