一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

そして婚礼の儀当日。

空はスッキリと晴れ渡り少し暑くて汗ばむくらいの陽気だった。

朝早くから宮殿の門が開放され、大階段前の広場には沢山の群衆がこのめでたい日を祝いに集まっていた。

晴明と香蘭は真っ白な純白の婚礼衣装に身を包み、2人手を取り合って大階段の踊り場に儲けた舞台でにこやかに手を振る。

大観衆の声援が青空に響き渡った。

上皇は椅子に座りながらではあるが、2人の晴れ舞台に参加できるほどの回復を見せている。

上皇后は相変わらずの感じだが、香蘭が香の国の前国王の忘形見だと知り、その身分に拍車がかかった為に、口には出さないが渋々認めているようだ。

彼女も香の国の革命以来すっかり大人しくなり、謀略無人な振る舞いも無くなった。

それどころか、近頃では上皇に寄り添い甲斐甲斐しく世話する姿も見受けられるようだ。

その為、奥宮を追い出す計画は保留となり、今は様子見という感じで落ち着いている。
上皇后は生き延びる為にどこまでも強かに、その都度姿を変える術を持っているようだ。

得体の知れない彼女の事だ。このまま目の届く監視下に居てくれた方が、都合が良いのかもしれないと、晴明も思い直した。


そして、沢山の観衆の前、緊張で身を震わせていた香蘭だったが、やはりそこは今まで踊り子として舞台に立っていた経験値が物をいい。始まってしまえは堂々としたもので、晴明もホッと安堵した。

舞台の上、晴明な香蘭耳元に囁く。

「これで晴れて今日から夫婦だ。こんな面倒な立場の男を選んでくれてありがとう。幾久しくどうか側にいて欲しい。」

香蘭も満面の笑みでそれに応える。

「私の方こそです。しがない踊り子だった私を見い出してくださりありがとうございます。どうか末永く可愛がって下さいませ。」

可愛がる…!?の言葉に晴明の心はドキンと踊る。
驚きをたたえた顔で見つめられ、香蘭は何が間違ったのかと目を踊らす。

「あの…何が間違えていましたか?」
恐る恐るそう聞くと、

「今の…言葉はどう言う意味か分かっているのか?」
と、晴明に聞かれる。

「えっと…寧々ちゃんがそう言うと良いって…。」

「…なるほど…。」
家臣達のいろいろが含まれている言葉だと受け取り、フッと晴明は笑う。

「では、今夜から存分に可愛がるから覚悟してくれ。」
不適な笑顔を投げられて、やっと香蘭はハッとして顔を赤らめた。