晴明達はというと、新婚旅行という名目で、聖国の観光地を思う存分堪能し、その後帰路に着きまた忙しく執務に追われる毎日を過ごす。
今までと違う事といえば、香蘭が別邸から華宮殿に移り住んだお陰で、晴明は仕事の合間を縫って、会いに行ける近さに居てくれる事だ。
そこで香蘭本人立っての願いである読み書きそろばんと、妃に必要な花嫁修行をしている。
学ぶ事の楽しさを初めて感じ、充実した毎日を送っていた。
寧々と始めた結婚衣装の刺繍も、どうにか明日の婚礼の儀に間に合いそうだ。
「香蘭はいろいろと忙し過ぎではないか?
昨夜も遅くまで刺繍をしていたし、これでは明日の本番前に倒れてしまうのでは無いかと心配でならない。」
執務室で明日の婚礼の儀に備えて、国内外から来る来賓者達の確認をしていると、ふと晴明が手を止めて李生にボヤく。
「ご本人は学ぶ事を楽しそうにされておられましたが?何かご不満でも?」
李生は手も留めず淡々と聞いてくる。
「楽しそうにしているから俺も下手に言えないのだ。本来ならきっと1日前は明日に備えてのんびりと過ごすべきではないか?」
「そうお思いでしたら本人に直接言われては?
私からなんて絶対嫌ですからね。私だって香蘭様に嫌われたくないですから。」
先手必勝とばかり李生はそう言う。
「俺だって嫌われたくない…。」
今朝も今日こそ言おうと意気込んでいたのだが、嬉しそうに刺繍を見せてくれる香蘭に、何も言えなくなってしまった。
「寧々殿も付いているのですから、ちゃんと考慮してくれてますよ。」
李生は他人事のようにしらっとしている。
「…少し様子を見てくるかな。」
「ちょっと…まだ来て2時間も経ってませんって!」
何かにつけて香蘭に会いに行ことする晴明を、李生は慌てて追いかけ扉の前で両手を広げる。
「お前が直接言えって言ったじゃないか…。」
「今じゃなくてです…この分じゃなかなか終わりませんよ。それじゃなくても通常の書類決済が滞っているのに…。誰ですか?こんな中間決済の忙しい時に婚礼の儀を捩じ込んだのは。」
李生に嗜めるられて罰が悪い。
そのタイミングで廊下から声がかけられる。
その声に浮き足だって、晴明は李生を押し退け自ら扉を開ける。
「香蘭!今、そなたのところに行こうと思っていた。どうかしたのか?」
晴明は、会いたいと思っていた香蘭が自らやって来てくれた事に、嬉しさを隠す事無く満面の笑みで迎えた。
香蘭は目を丸めて驚きの顔を見せる。
それを今日も可愛いなと思いながら優しげに微笑み、手を引っ張り執務室の応接用の長椅子に座らせる。
「お忙しいところごめんなさい…。あの、婚礼の衣装の刺繍が終わったので、晴明様に袖を通して頂きたくて…。」
申し訳なさそうな顔でそう言うから、
「おお、ついに完成したか!是非見せてくれ。」
晴明は大袈裟なくらい嬉しそうに立ち上がり、早速衣装に袖を通す。
上等な絹で折った衣装は、純白の生地に黄金の刺繍が生える。皇帝紋を囲むように鶴が飛び立つ壮大な大作だった。
「これは素晴らしい!お2人だけで仕上げたなんて凄いですね。」
刺繍を始めて見た李生も感嘆の声を上げる。
「昨夜も遅くまで頑張っていたから香蘭の体調が心配だ。
そうだ、仮眠室で横になって行くと良い。」
香蘭は晴明に半ば強引に手を引っ張られて、執務室と続き間になっている仮眠室に連れて行かれる。
そこは6畳ほどの小さな個室で、寝台だけがポツリと置いてあった。外からの光を遮る為、暑い布地に囲まれていて、仮眠をとるにはとても良い環境だった。
導かれるまま香蘭はその寝台に横になり、晴明もなぜか一緒に横になる。
「晴明様…大丈夫ですか?」
明日の婚礼を前にしてきっと忙しいだろうにと、香蘭は慮る。
「香蘭が寝るまで寄り添っていたい。明日も晴れきっと目が回るくらい忙しいからな。」
晴明もここ数週間は公務に追われ忙しく、あまり2人の時間もなかったから香蘭不足で疲弊していた。
彼女が寝付くまで添い寝するつもりが、いつの間にか本寝してしまい。昼過ぎ李生に叩き起こされたのは言うまでもない。
今までと違う事といえば、香蘭が別邸から華宮殿に移り住んだお陰で、晴明は仕事の合間を縫って、会いに行ける近さに居てくれる事だ。
そこで香蘭本人立っての願いである読み書きそろばんと、妃に必要な花嫁修行をしている。
学ぶ事の楽しさを初めて感じ、充実した毎日を送っていた。
寧々と始めた結婚衣装の刺繍も、どうにか明日の婚礼の儀に間に合いそうだ。
「香蘭はいろいろと忙し過ぎではないか?
昨夜も遅くまで刺繍をしていたし、これでは明日の本番前に倒れてしまうのでは無いかと心配でならない。」
執務室で明日の婚礼の儀に備えて、国内外から来る来賓者達の確認をしていると、ふと晴明が手を止めて李生にボヤく。
「ご本人は学ぶ事を楽しそうにされておられましたが?何かご不満でも?」
李生は手も留めず淡々と聞いてくる。
「楽しそうにしているから俺も下手に言えないのだ。本来ならきっと1日前は明日に備えてのんびりと過ごすべきではないか?」
「そうお思いでしたら本人に直接言われては?
私からなんて絶対嫌ですからね。私だって香蘭様に嫌われたくないですから。」
先手必勝とばかり李生はそう言う。
「俺だって嫌われたくない…。」
今朝も今日こそ言おうと意気込んでいたのだが、嬉しそうに刺繍を見せてくれる香蘭に、何も言えなくなってしまった。
「寧々殿も付いているのですから、ちゃんと考慮してくれてますよ。」
李生は他人事のようにしらっとしている。
「…少し様子を見てくるかな。」
「ちょっと…まだ来て2時間も経ってませんって!」
何かにつけて香蘭に会いに行ことする晴明を、李生は慌てて追いかけ扉の前で両手を広げる。
「お前が直接言えって言ったじゃないか…。」
「今じゃなくてです…この分じゃなかなか終わりませんよ。それじゃなくても通常の書類決済が滞っているのに…。誰ですか?こんな中間決済の忙しい時に婚礼の儀を捩じ込んだのは。」
李生に嗜めるられて罰が悪い。
そのタイミングで廊下から声がかけられる。
その声に浮き足だって、晴明は李生を押し退け自ら扉を開ける。
「香蘭!今、そなたのところに行こうと思っていた。どうかしたのか?」
晴明は、会いたいと思っていた香蘭が自らやって来てくれた事に、嬉しさを隠す事無く満面の笑みで迎えた。
香蘭は目を丸めて驚きの顔を見せる。
それを今日も可愛いなと思いながら優しげに微笑み、手を引っ張り執務室の応接用の長椅子に座らせる。
「お忙しいところごめんなさい…。あの、婚礼の衣装の刺繍が終わったので、晴明様に袖を通して頂きたくて…。」
申し訳なさそうな顔でそう言うから、
「おお、ついに完成したか!是非見せてくれ。」
晴明は大袈裟なくらい嬉しそうに立ち上がり、早速衣装に袖を通す。
上等な絹で折った衣装は、純白の生地に黄金の刺繍が生える。皇帝紋を囲むように鶴が飛び立つ壮大な大作だった。
「これは素晴らしい!お2人だけで仕上げたなんて凄いですね。」
刺繍を始めて見た李生も感嘆の声を上げる。
「昨夜も遅くまで頑張っていたから香蘭の体調が心配だ。
そうだ、仮眠室で横になって行くと良い。」
香蘭は晴明に半ば強引に手を引っ張られて、執務室と続き間になっている仮眠室に連れて行かれる。
そこは6畳ほどの小さな個室で、寝台だけがポツリと置いてあった。外からの光を遮る為、暑い布地に囲まれていて、仮眠をとるにはとても良い環境だった。
導かれるまま香蘭はその寝台に横になり、晴明もなぜか一緒に横になる。
「晴明様…大丈夫ですか?」
明日の婚礼を前にしてきっと忙しいだろうにと、香蘭は慮る。
「香蘭が寝るまで寄り添っていたい。明日も晴れきっと目が回るくらい忙しいからな。」
晴明もここ数週間は公務に追われ忙しく、あまり2人の時間もなかったから香蘭不足で疲弊していた。
彼女が寝付くまで添い寝するつもりが、いつの間にか本寝してしまい。昼過ぎ李生に叩き起こされたのは言うまでもない。



