一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

夕食会が終了後、与えられた客室に戻った晴明が、香蘭からなかなか離れなかったのは言うまでもない。

「彼奴は嫌いだ。生理的にも受け付けない。触られるだけで鳥肌が立って仕方がない。」
駄々っ子のようにそう言う晴明を、

「お疲れ様でございました。晴明様がそれほど毛嫌いするなんて珍しいですね。早く香の国の夜明けが来る事を願っています。」
遠回しに香蘭はそう言って慰める。

香蘭にとって国王劉進は両親を死に追いやった敵になるが、それを知ったのがつい最近の事だから、あまり実感というものは無い。

だから、復讐心も憎悪もイマイチ浮かんではこないが、代わりに晴明がこんなにも怒ってくれるのだから、それで報われているところもあった。

「明日には現実を突き付けて、地獄に突き落としてやるからな。」
晴明が子供のように憎悪を口にするのは、そんな香蘭の慰めにもなると思っての事だ。

香蘭によしよしと頭を撫ぜられると、甘える事もまんざらでは無いなと晴明はほくそ笑む。