一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

その日から1か月を待たず、急速に香の国の革命も進展する事となる。

連絡を待っていた洋からついに香民が倒れたと一報が届く。

晴明はてっきり洋は毒矢で狙うと思っていたのだが、知り合いの女中を頼りに、毒盛り菓子を食べさせたと言う。

それは家中の中でさえ香民を憎む者がいたと言う事を物語る。

香民としてみれば、それだけ信頼していた者から裏切られた訳だが…。

毒菓子を食べた直後は1週間生死を彷徨い今は意識を取り戻したという。ただ、動く事話す事が容易に出来なくなり、不自由な日々を送っているらしい。

香民には子供が5人いるが、皆贅沢三昧育たれた上に、自分では何も出来ない愚息ばかりだから、このまま一族は衰退の一途を辿るだろうという事だ。


ついに実は熟した。
晴明はそう判断し、手始めに秀英の存在を知らしめる事にする。

「来週の吉日に、香の国の国王と聖国で会談を設ける。そこで無血開城を公約させてみせる。今回は俺の精神的安定の為にも香蘭も一緒に連れて行く。」

それには同行する誰もが了承した。

それもそのはず普段はにこりとも笑ない晴明が、香蘭がいる時だけは柔らかさを見せるからだ。
もちろんかって知ったる側近の李生や、右大臣の竜徹も両手を上げて喜びを見せた。

それなのに当の本人、香蘭が人目を気にしてなかなか首を縦に振らない。

「大変な他国との交渉事に、女子の私が着いて行っては晴明様の邪魔になり兼ねません。それに私は本もちゃんと読めないくらいの無学ですし…お役に立つ事も出来ません。」

「香蘭様どうでしょう、少し早い新婚旅行だと思っては?あなたがいてくれると我々も精神的にとても助かるのです。」

これには李生と竜徹が一生懸命説得する。

香蘭は皇帝である晴明が家臣に怖がられていることを知らない。だから何故そこまで2人が必死なのか分からないでいる。

「わ、分かりました…。お邪魔にならないように頑張りますので、よろしくお願います。」
最後にはその熱心さに押されて、その返事を返した。