一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

それから1週間滞在中に晴明達は秘密裏にありとあらゆる情報を聞き出し、政権奪還に向けて地盤固めをしていった。

実は今回同行した第3部隊の精鋭達の中に、一兵士と扮した秀英も忍び込ませていた為、話しは思った以上に進み、今の政権に不満を持っていた貴族や武人がいち早く反応し、仲間を増やす事に成功した。

表向きの平和条約を結ぶ為の話し合いも順調に進んで行ったが、晴明を手懐けようと試みる国王劉進には、ほとほと手を焼き晴明を疲弊させた。

劉進がありとあらゆる手段で晴明に迫るのを、寸でのところで助けるのは李生の役割となっていた。
だから晴明がブチ切れる事態にはならず、なんとか回避させる事が出来たのだったが…。

「あの、クソエロジジイめ!!次触って来やがったらぶっ殺してやる。」
与えられた部屋に戻って来た晴明が、皇帝ともあるまじき言葉で劉進を罵倒する。

「まぁまぁまぁ…いろいろありましたが、よく耐え忍びました。残るところ後1日ですから冷静に対処していきましょう。」
李生は慰めその頑張りを労う。

「そなたも止めに来るのがどんどん遅くなっていないか。俺がどうなっても良いのか?」
本当に嫌そうな顔で晴明が訴えてくる。

「私だってギリギリ殺さねかねないところで、どうにか止めてるんですから、こっちの身にもなって下さい。次入って来たら殺すぞって目で睨まれて脅されてるんですよ。」

そんな2人の毎晩の言い合いを、竜徹が酒を飲みながら笑って傍観している。

「3年前のあの戦の日々を思い出しますね。あの時もいつも2人は何かと揉めていた。最近は随分大人になったと思っていましたが、根は変わらずでちょっと安心しました。」
酔いも気持ち良く回ってきた竜徹が、昔を懐かしむ。

「何を懐かしがっているのだ。死に物狂いで生きていたあの時にはもう2度と戻りたく無い。その為に俺はこんなに我慢して耐えているのだ。」
この平和な世が未来永劫続く様にと願ってやまない。
それは、3人共に強く思う。

悪態を吐いて苛立ちを何とか吹き払った晴明は、冷静さを取り戻す。

明日で最後、やれるべき事は全てやり切りたいと作戦を練る。

「明日帰る前に洋と話しがしたい。」
晴明は香蘭の命を狙ったその刺客に一役かって貰いたいと思っていた。彼の弓の腕は確かだ。


そして今、洋は虎鉄と共に、少し前から香の国へ忍び込んで、情報収集に奔走していた。

香蘭を亡き者にしようとした主犯格、元防衛大臣香民(こうみん)の力を封じ込めなければならない。