華宮殿の敷居を跨げば後はもう放って欲しいと、
「もう良い下がれ。」
と、冷たく命令を下す。
スーッと音も立てずに下がっていく女中達を一瞥し、ハーッと息をひとつ吐き、気持ちを立て直して香蘭の待つ部屋へと急ぐ。
「香蘭、入るぞ。」
扉を自ら開けて中に入ると、部屋の中は行燈一つが灯るだけで。そのすぐ側の机に伏せる香蘭の後ろ姿を見つける。
無理もない、今日は朝から忙しかっただろう事は容易に分かった。それに付け加えて俺の為に差し入れも作ってくれたのだから昨夜も寝れていないだろう。
そっと抱き上げ寝台に運べば、俺とて睡魔に襲われる。ほんのひと時なら許されるだろうと彼女の側に横たわる。
あどけない寝顔に癒されながらうたた寝をする。これが至福のひと時なのだと実感しながら、いつの間にか深い眠りに付いていた。
明け方近く、何か不審な雰囲気に目が覚める。
薄っすらと目を開けると隣りで寝ていた香蘭は居ない…。
ハッと飛び起き薄暗がりに目を凝らすと…
宦官がぽつんと1人立っていた。
不気味な怖さを感じて身震いする。
それから宦官からくどくどと説教を受け、結局その後香蘭と一度も会えぬまま宮廷に行く時間となる。
「李生、香蘭に伝えて欲しい。今日の正午に国内外に向けて香蘭が香の国の前国王の娘だと、大々的に発表する。今後、警備が1番堅い後宮に住まいを移して欲しいと。」
迎えに来た李生に告げると、
「昨夜、お話しにならなかったのですか?」
と、驚かれる。
「不覚にも、お互い疲れていた為寝入ってしまったのだ。」
「それはそれは…残念でしたね。だけどそんな大事な話しは直接話すべきです。」
「それが簡単には出来なくなった…。
側室への渡りのせいで、香蘭とは距離を置くように宦官から言われたのだ。婚約者とは結婚まで会うのに制限があるそうだ。
後宮は今や式たりや秩序でがんじがらめだ。早く後宮解体を急がなければならない。」
深いため息を吐いた俺に、
「それはそれはご愁傷様です。
後宮では宦官の考えが絶対ですから、まず婚礼の儀の前に、香蘭様と2人出会う事は叶いませんね…」
李生に軽く言われて頭を抱える。
「出来るだけ早く動かなくては、このままでは香蘭不足で俺が生き絶える。」
古くからの友人でもある李生にだけは本心を露とする。
「それは困ります。貴方には長生きして頂かなくては私の死活問題に関わって来ますから。
分かりました。なんとかして後宮の掟を掻い潜って香蘭様と密会出来るようにして見せましょう。」
友人の力強い言葉を聞き少しの希望が生まれた。
「もう良い下がれ。」
と、冷たく命令を下す。
スーッと音も立てずに下がっていく女中達を一瞥し、ハーッと息をひとつ吐き、気持ちを立て直して香蘭の待つ部屋へと急ぐ。
「香蘭、入るぞ。」
扉を自ら開けて中に入ると、部屋の中は行燈一つが灯るだけで。そのすぐ側の机に伏せる香蘭の後ろ姿を見つける。
無理もない、今日は朝から忙しかっただろう事は容易に分かった。それに付け加えて俺の為に差し入れも作ってくれたのだから昨夜も寝れていないだろう。
そっと抱き上げ寝台に運べば、俺とて睡魔に襲われる。ほんのひと時なら許されるだろうと彼女の側に横たわる。
あどけない寝顔に癒されながらうたた寝をする。これが至福のひと時なのだと実感しながら、いつの間にか深い眠りに付いていた。
明け方近く、何か不審な雰囲気に目が覚める。
薄っすらと目を開けると隣りで寝ていた香蘭は居ない…。
ハッと飛び起き薄暗がりに目を凝らすと…
宦官がぽつんと1人立っていた。
不気味な怖さを感じて身震いする。
それから宦官からくどくどと説教を受け、結局その後香蘭と一度も会えぬまま宮廷に行く時間となる。
「李生、香蘭に伝えて欲しい。今日の正午に国内外に向けて香蘭が香の国の前国王の娘だと、大々的に発表する。今後、警備が1番堅い後宮に住まいを移して欲しいと。」
迎えに来た李生に告げると、
「昨夜、お話しにならなかったのですか?」
と、驚かれる。
「不覚にも、お互い疲れていた為寝入ってしまったのだ。」
「それはそれは…残念でしたね。だけどそんな大事な話しは直接話すべきです。」
「それが簡単には出来なくなった…。
側室への渡りのせいで、香蘭とは距離を置くように宦官から言われたのだ。婚約者とは結婚まで会うのに制限があるそうだ。
後宮は今や式たりや秩序でがんじがらめだ。早く後宮解体を急がなければならない。」
深いため息を吐いた俺に、
「それはそれはご愁傷様です。
後宮では宦官の考えが絶対ですから、まず婚礼の儀の前に、香蘭様と2人出会う事は叶いませんね…」
李生に軽く言われて頭を抱える。
「出来るだけ早く動かなくては、このままでは香蘭不足で俺が生き絶える。」
古くからの友人でもある李生にだけは本心を露とする。
「それは困ります。貴方には長生きして頂かなくては私の死活問題に関わって来ますから。
分かりました。なんとかして後宮の掟を掻い潜って香蘭様と密会出来るようにして見せましょう。」
友人の力強い言葉を聞き少しの希望が生まれた。



