一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

そのまま香蘭の部屋へと思い、廊下を一緒に歩いていると、

「陛下、お勤めお疲れ様でございました。
しいては一度お部屋に戻り沐浴を済まされお着替えを…。式たりですので手順を踏んで頂きたく思います。」
形式に忠実な宦官に捕らえられ、泣く泣く香蘭の手を離す。

「陛下、お部屋でお待ちしております。」
香蘭に丁寧にお辞儀をされて、焦燥に駆られる。

いつだって常に思い通りにならないのが後宮であり、全ての事柄に段取りと式たりを伴う。
堅苦しい事この上ない…。

香蘭とは少しの間も離れたくないのだが…。

ハァーと深いため息だけ吐いて、段取り通りに自分の部屋に一旦戻る。

全ての手順を踏んで、身を清め、やっとの事で香蘭の居る華宮殿に向かおうとするが、また宦官に止められてくどくどと注意される。

「まず今宵ですが、香蘭様の部屋に泊まってはなりません。いかがわしい行為も禁物です。香蘭様はまだ婚約者であり、婚姻の儀を交わしておりませんので…。」
あれこれと注意事項を言い渡されて、心がどんどん疲弊する。

俺はただ、香蘭に会いたいだけだ。

いかがわしい行為などするつもりもないが、出来れば添い寝し癒されたい。それすらも許されないのか後宮は…。

「分かっている…みなまで言うな。」
やや口調は厳しくなってしまう。

「明日は、6時起床になります。お早めにお戻り下さい。」
宦官から念には念を押されてやっと解放される。

香蘭の部屋へと続く長い廊下を一目散に走り抜けたい衝動に駆られるが…。
何人か着いて来る女中達を振り切る訳にも行かず諦める。

ただ足速に、気持ちは既に思い人の所へと…。