「姐様は今日はこれで帰りましょうか?」
寧々が突然香蘭に問いかける。
「はっ!?」
いち早く反応したのは晴明で、
「何故そんなに直ぐに帰るのだ?
まだ香蘭と話し足りない。出来れば今夜は後宮に泊まって欲しいくらいだ。」
晴明は乞うように香蘭の前に跪き、彼女の顔を覗き込む。
「姐様は本日お忍びで来ております。晩餐会に招待されてはいませんし、何よりこの状態の姉様を人前に出すのは可哀想です。」
まだ立ち直れない香蘭はずっと俯いて両手で顔を隠したままだから、
そうだな…これ以上香蘭を一目に晒すのは忍びない。と、晴明も思う。
だけど、2週間ぶりに会ったのだから積もる話しもしたいし、何より離れたく無いのだ。
「晩餐会は出なくても良い。
だけど今夜は後宮で過ごしてもらえないだろか?」
晴明はそう伝えて、顔が見たいと香蘭の顔を覆っている手を優しく剥がす。
やっと目が合う。それだけで、心が躍り笑顔が溢れる。
「何も泊まる用意が無いので…。それに試合を終えてお疲れでしょうし。」
朝から何戦も試合を重ね、疲れていない訳がないと心配になる。
「疲れなどそなたが居てくれれば一瞬で吹き飛ぶ。服は急ぎ用意させるし、俺の為だと思って今宵はそばに居てくれないか?」
そこまで言われてしまうと断り切れなくなり、こくんと頷く。
晴明がホッとしたところで、寧々が冷たく言い放つ。
「お言葉ですが陛下。ここ2週間毎日のように側室の所へ渡られていると噂で聞きました。その真相はいかに?」
晴明は驚き顔で寧々と香蘭を交互に見る。
「やましい事など何も無い。
ただ、彼女らが後宮から心置きなく出てもらえるよう、交渉している最中なのだ。俺の事を疑っていたのか?」
慌てて香蘭の顔色を伺う。
宮使いの者達が噂しているのは気付いていたが、ムキになって否定するのも逆に怪しいと放っておいたのがいけなかった…。
「晴明様を疑っていた訳では…。
ただ、お顔を一目、見たかっただけです。」
香蘭としては晴明を疑った事は一度も無い。ただ、少し嫉妬のような気持ちが湧いたのは事実だ。
こんなにも魅力的な男性なのだから、未だ空いたままの正妃の座を狙って、いろいろな誘惑がある事も…。
武道大会の会場で、いやと言うほどその人気っぷりを目の当たりにした。決勝戦を見守る群衆の中には、煌びやかなら衣装を身につけた淑女達も多くいた。
彼女達は晴明の一挙手一投足に黄色い声援を送り、キャーキャーと色めき立っていた。
少し晴明がこちらを見て微笑みを浮かべただけで、騒つくその淑女達の群れに、香蘭は初めてモヤモヤとした嫉妬を覚えた。
同時に、こんなにも凄い人に愛されているのだという事実を実感した瞬間もあった。
誰もが憧れ、少しでもお近付きになりたいと思う人が、今目の前に跪き私なんかの顔色を伺ってくれている。その優越感にも似た安堵のようなものを抱く。
「後宮でお待ちしております。」
そう思うと自然と言葉が出た。
この人の誠実で真っ直ぐな気持ちに、逃げてばかりいた自分が恥ずかしく申し訳なく思う。
「ありがとう。出来るだけ早く終わらせて、そなたのところに戻るから待っていてくれ。」
晴明は満面の笑みでそう告げる。
寧々が突然香蘭に問いかける。
「はっ!?」
いち早く反応したのは晴明で、
「何故そんなに直ぐに帰るのだ?
まだ香蘭と話し足りない。出来れば今夜は後宮に泊まって欲しいくらいだ。」
晴明は乞うように香蘭の前に跪き、彼女の顔を覗き込む。
「姐様は本日お忍びで来ております。晩餐会に招待されてはいませんし、何よりこの状態の姉様を人前に出すのは可哀想です。」
まだ立ち直れない香蘭はずっと俯いて両手で顔を隠したままだから、
そうだな…これ以上香蘭を一目に晒すのは忍びない。と、晴明も思う。
だけど、2週間ぶりに会ったのだから積もる話しもしたいし、何より離れたく無いのだ。
「晩餐会は出なくても良い。
だけど今夜は後宮で過ごしてもらえないだろか?」
晴明はそう伝えて、顔が見たいと香蘭の顔を覆っている手を優しく剥がす。
やっと目が合う。それだけで、心が躍り笑顔が溢れる。
「何も泊まる用意が無いので…。それに試合を終えてお疲れでしょうし。」
朝から何戦も試合を重ね、疲れていない訳がないと心配になる。
「疲れなどそなたが居てくれれば一瞬で吹き飛ぶ。服は急ぎ用意させるし、俺の為だと思って今宵はそばに居てくれないか?」
そこまで言われてしまうと断り切れなくなり、こくんと頷く。
晴明がホッとしたところで、寧々が冷たく言い放つ。
「お言葉ですが陛下。ここ2週間毎日のように側室の所へ渡られていると噂で聞きました。その真相はいかに?」
晴明は驚き顔で寧々と香蘭を交互に見る。
「やましい事など何も無い。
ただ、彼女らが後宮から心置きなく出てもらえるよう、交渉している最中なのだ。俺の事を疑っていたのか?」
慌てて香蘭の顔色を伺う。
宮使いの者達が噂しているのは気付いていたが、ムキになって否定するのも逆に怪しいと放っておいたのがいけなかった…。
「晴明様を疑っていた訳では…。
ただ、お顔を一目、見たかっただけです。」
香蘭としては晴明を疑った事は一度も無い。ただ、少し嫉妬のような気持ちが湧いたのは事実だ。
こんなにも魅力的な男性なのだから、未だ空いたままの正妃の座を狙って、いろいろな誘惑がある事も…。
武道大会の会場で、いやと言うほどその人気っぷりを目の当たりにした。決勝戦を見守る群衆の中には、煌びやかなら衣装を身につけた淑女達も多くいた。
彼女達は晴明の一挙手一投足に黄色い声援を送り、キャーキャーと色めき立っていた。
少し晴明がこちらを見て微笑みを浮かべただけで、騒つくその淑女達の群れに、香蘭は初めてモヤモヤとした嫉妬を覚えた。
同時に、こんなにも凄い人に愛されているのだという事実を実感した瞬間もあった。
誰もが憧れ、少しでもお近付きになりたいと思う人が、今目の前に跪き私なんかの顔色を伺ってくれている。その優越感にも似た安堵のようなものを抱く。
「後宮でお待ちしております。」
そう思うと自然と言葉が出た。
この人の誠実で真っ直ぐな気持ちに、逃げてばかりいた自分が恥ずかしく申し訳なく思う。
「ありがとう。出来るだけ早く終わらせて、そなたのところに戻るから待っていてくれ。」
晴明は満面の笑みでそう告げる。



