一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

「えっ…ええっー⁉︎」
小さく驚きの声を上げた香蘭が、顔を見るまでもなく晴明だと瞬時に分かる。
「せ、晴明様…⁈」
でも、何故ここに…?どうして見つかってしまったの…?
疑問ばかりが頭を掠め、1人パニックに陥っていた。

「…香蘭…会いたかった。」
晴明はそんな香蘭を一目も憚らずぎゅっと抱きしめ離さない。

「少し話がしたい、ここで待て。」
側にいる家臣達にそう告げた晴明は、片手で軽々香蘭を持ち上げサーっと風の如く走り去る。

香蘭は訳が分からずその逞しい肩に抱きつくしか術はない。

「ここなら大丈夫そうだ…。」
そう晴明の呟く声を聞き、香蘭はそっと下ろされる。

恐々目を開けて香蘭は、辺りを恐る恐る見渡す。

「…ここは…?」
先程までの群衆が嘘のようにひっそりとした場所で、周りを見渡しても暗くてよく分からない。
ただ、心細くて離れる事も出来ないでいた。

ポチャン…ポチャン…と、雫が井戸に落ちるような音を聞く。

「ここは、宮廷の隠し通路だ。家臣でさえも知る者は少ない。今、灯りを付けるから少し待って。」
思いがけず優しい晴明の声が響く。

会って早々、咎められると覚悟をしていた香蘭だから、拍子抜けして戸惑い佇む。

「あの…勝手に来た事、怒ってないのですか?」
恐る恐るそう聞くと、

「会いたい気持ちが先だって、咎める気持ちは瞬間に消え失せた。」
側にあった行燈な火が灯る。

「よく、顔を見せてくれ。」
行燈の灯りを頼りに香蘭の柔らかな頬に触れる。

ビクッと肩を振るわすけれど、表情は微笑み拒んでいるふうには見えない。