一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

「陛下…⁉︎」
急に部屋を飛び出した晴明を追いかけるように李生も走る。

そんな事はお構いなしに、晴明は必死で香蘭の跡を探す。

見失ったか⁉︎
2階の控え室から階段を降り先程見ていた辺りを見渡すのだが、既にそこに姿は無く。やはり、まぼろしだったのかと諦めの心が浮かんでくる。

それでも、人波に飲まれ流されながら万が一の希望を持って、女中姿の香蘭を探す。だけど小さな香蘭は人混み紛れて見つかりようが無い。

「晴明様…!勝手に出歩いてはなりませぬ。」
やっと追いついた李生が、息を切らして近寄って来る。だけど晴明はそれどころでは無く、辺りにキョロキョロ目を凝らし、彼女の姿を探し続ける。

ああ…そうだ!寧々がきっと側にいる筈だ。
晴明はそう思い、懐から小さな竹笛取り出して2回吹く。これは密偵を呼ぶ時に使う物で、密偵以外は聞き取る事ができない音が出る。

サァーっと辺りに風が吹いたかと思うと、いの一番に虎鉄が現れる。

「寧々は?香蘭の側にいないのか⁉︎
この会場に香蘭が来てるのか⁉︎」
晴明は矢継ぎ早だに虎鉄にそう聞く。

「はい…実は2人で、お忍びで来られています。…どうかくれぐれも香蘭殿をお咎めになりませぬよう…寧々が連れ出したのです。」

「そうだろうな。」
と晴明は言う。
香蘭はまず何をするにも他人の目を気にして、迷惑をかけたく無いと己を律する筈だ。

無鉄砲な寧々の案にただ乗っただけだと思うのだが…今や暗殺説が流れる香蘭を、こんな人混みに連れ出すのはやはり無茶だと寧々を咎めたい。

だけど会いたい気持ちが先走り、それどころでは無いくらい気持ちが昂る。

「寧々達は何処だ?」
虎鉄が無言で指差す方を見る。
人混みを掻き分け歩み寄ると、そこに女中姿の彼女を見つける。

「…鈴蘭!」
咄嗟に起点が効いて本名を呼ぶ事を避けるが、振り返った彼女を瞬間抱きしめる。