ただ母は後宮は嫌いだと、あのような場所には2度と戻らないと言いながら、いつも都の方を見つめ涙を流していた。上皇を本気で愛していたのだろうか…。
「お前の側室らも同じ気持ちではなかろうか?」
不意に上皇后に言われ言葉を無くす。
「彼女らが嫁いで来てから、お前は一度も渡りをしない。その上、香の国へと貢物のように差し出され、何のために後宮にいるのか分からなくなっているやも知れん。」
晴明は指摘を受けて唖然とする。
これまで彼女達の事を蔑ろにして来た事は自覚している。彼女達の父親から押し付けられ仕方なく側室にしたが、いつでも出て行ってくれれば良いと助言はした。
自分は誰も愛さぬと断固拒否を押し通して来た。それでも実家に帰らず後宮に居続けるのは、母のような気持ちだと言うのだろうか…?
その上、新たに正妃にしたいと香蘭を連れて来たのだが、彼女達から見たらどう映ったか…
そう思うと、急に良心の呵責に苛まれる。
彼女達1人1人と向き合わねばいけないのかも知れない…。
「確かに、貴方に言われて気が付いた。香蘭を正妃にする前に彼女達と向き合わねばならないと…。
ありがとうございます。私はどうも女心に疎い…指摘されるまで気付くことが出来ませんでした。」
素直に自分の非を認め謝ると、
「悔しいが、お前には上に立つ者としての才覚がある。何より人を惹きつける力が長けておる。
…お前が正妃を迎えたらわらわはここを出て隠居しようと思っておる。上皇は多分もう無理じゃ…。」
上皇の復活を願って止まなかった彼女の本音を聞く。
俺が思っていたよりも実は賢い人なのかも知れない。自分の身の置き方を理解して、肩肘張って生きて来た上皇后の本心を垣間見れた気がした。
「分かりました。自ら表舞台から身を引くならば、貴方がこれまでやってきた悪事に目を瞑る事も検討しましょう。」
そう釘を打ってその場を後にする。
皇帝になって3年、上皇后とここまで腹を割って話した事は無かった。敵だとみなし心を見せず、いつだって彼女の前では気を張っていた。
歩み寄ると言う事が少し出来たのではないかと、若干心が晴れる。
「フン…青二歳が…!」
この時は、そう呟いた上皇后の言葉を聞きとる事が出来なかった。
「お前の側室らも同じ気持ちではなかろうか?」
不意に上皇后に言われ言葉を無くす。
「彼女らが嫁いで来てから、お前は一度も渡りをしない。その上、香の国へと貢物のように差し出され、何のために後宮にいるのか分からなくなっているやも知れん。」
晴明は指摘を受けて唖然とする。
これまで彼女達の事を蔑ろにして来た事は自覚している。彼女達の父親から押し付けられ仕方なく側室にしたが、いつでも出て行ってくれれば良いと助言はした。
自分は誰も愛さぬと断固拒否を押し通して来た。それでも実家に帰らず後宮に居続けるのは、母のような気持ちだと言うのだろうか…?
その上、新たに正妃にしたいと香蘭を連れて来たのだが、彼女達から見たらどう映ったか…
そう思うと、急に良心の呵責に苛まれる。
彼女達1人1人と向き合わねばいけないのかも知れない…。
「確かに、貴方に言われて気が付いた。香蘭を正妃にする前に彼女達と向き合わねばならないと…。
ありがとうございます。私はどうも女心に疎い…指摘されるまで気付くことが出来ませんでした。」
素直に自分の非を認め謝ると、
「悔しいが、お前には上に立つ者としての才覚がある。何より人を惹きつける力が長けておる。
…お前が正妃を迎えたらわらわはここを出て隠居しようと思っておる。上皇は多分もう無理じゃ…。」
上皇の復活を願って止まなかった彼女の本音を聞く。
俺が思っていたよりも実は賢い人なのかも知れない。自分の身の置き方を理解して、肩肘張って生きて来た上皇后の本心を垣間見れた気がした。
「分かりました。自ら表舞台から身を引くならば、貴方がこれまでやってきた悪事に目を瞑る事も検討しましょう。」
そう釘を打ってその場を後にする。
皇帝になって3年、上皇后とここまで腹を割って話した事は無かった。敵だとみなし心を見せず、いつだって彼女の前では気を張っていた。
歩み寄ると言う事が少し出来たのではないかと、若干心が晴れる。
「フン…青二歳が…!」
この時は、そう呟いた上皇后の言葉を聞きとる事が出来なかった。



