「ずっと気になっていたのです。もうとっくに良くなっていたのかと…まだ、傷が痛むのですか?」
自分を庇ったせいで、大事な御身を傷つけてしまったと、香蘭にとって決してどうでも良い事では無いのだ。
渋々というように、晴明は傷を隠すように巻いていた包帯を取り傷を晒す。
「何度も言うが、そなたがこの傷について負い目を負う事は何も無い。男にとって傷跡は名誉の勲章なのだから、誇るべき事なのだ。」
くれぐれもというように念を押し、なかなか見せてくれない。だから、香蘭も腰を浮かして少し強引に覗き込む。
傷口は思っていたよりも痛々しく、火傷跡のように黒くただれてそこにあった。
「…痛そう…。」
香蘭はそう小さく呟く言葉を無くす。
「毒矢の傷はどうしたって治りが遅いんだ。見た目よりそう痛くも無いから気にしなくて良い。」
そう言う晴明を尻目に、
「傷に効く温泉だと言ってましたから、傷口にかけてみても良いですか?」
香蘭は晴明の膝から立ち上がり、両手でお湯をすくって聞いてくる。
温泉の効能なんて気休め程度だと思っている晴明だが、香蘭の真剣さに好きにして良いと身を任せる。
それよりも気になってしまうのは香蘭の姿で…
大きな布を胸元で紐で縛るだけの簡単な沐浴着だから、丁度胸の谷間が晴明の目線の高さで、どうしたって視界に入ってしまうのだ。
これは本人に伝えない方が良いのか…?
確かに…こういう時、女心というものに疎い自分は何が正解か分からないが…。
言わずに見てしまうのも卑怯だろうと、晴明は自分の中で自問自答する。
後ろめたい気持ちが少しでもあるのでは良くないと、意を決して香蘭に伝える事にする。
「…香蘭、その…目のやり場に困るのだが…。」
香蘭は手を止めキョトンとこちらに向いて首を傾げる。
「その…胸元が…。」
晴明は言葉を探りながら目を泳がす。
やっと気付いた香蘭は、
「ひゃあっ!?」
と、小さく悲鳴をあげて、胸元を押さえて湯船にバシャンと座り込む。
「お、お見苦しいものを…申し訳ございません。」
晴明に背中を向けて、耳まで真っ赤にして心臓はバクバクだ。
「いや…こちらとしては悪い気はしないのだが。」
晴明はそう言って、徐々に遠ざかろうとする香蘭を後から抱き上げ、また膝の上に乗せて逞しい腕で囲ってしまう。
香蘭はますます恥ずかしくなって、両手で顔を覆ってしまう。
自分を庇ったせいで、大事な御身を傷つけてしまったと、香蘭にとって決してどうでも良い事では無いのだ。
渋々というように、晴明は傷を隠すように巻いていた包帯を取り傷を晒す。
「何度も言うが、そなたがこの傷について負い目を負う事は何も無い。男にとって傷跡は名誉の勲章なのだから、誇るべき事なのだ。」
くれぐれもというように念を押し、なかなか見せてくれない。だから、香蘭も腰を浮かして少し強引に覗き込む。
傷口は思っていたよりも痛々しく、火傷跡のように黒くただれてそこにあった。
「…痛そう…。」
香蘭はそう小さく呟く言葉を無くす。
「毒矢の傷はどうしたって治りが遅いんだ。見た目よりそう痛くも無いから気にしなくて良い。」
そう言う晴明を尻目に、
「傷に効く温泉だと言ってましたから、傷口にかけてみても良いですか?」
香蘭は晴明の膝から立ち上がり、両手でお湯をすくって聞いてくる。
温泉の効能なんて気休め程度だと思っている晴明だが、香蘭の真剣さに好きにして良いと身を任せる。
それよりも気になってしまうのは香蘭の姿で…
大きな布を胸元で紐で縛るだけの簡単な沐浴着だから、丁度胸の谷間が晴明の目線の高さで、どうしたって視界に入ってしまうのだ。
これは本人に伝えない方が良いのか…?
確かに…こういう時、女心というものに疎い自分は何が正解か分からないが…。
言わずに見てしまうのも卑怯だろうと、晴明は自分の中で自問自答する。
後ろめたい気持ちが少しでもあるのでは良くないと、意を決して香蘭に伝える事にする。
「…香蘭、その…目のやり場に困るのだが…。」
香蘭は手を止めキョトンとこちらに向いて首を傾げる。
「その…胸元が…。」
晴明は言葉を探りながら目を泳がす。
やっと気付いた香蘭は、
「ひゃあっ!?」
と、小さく悲鳴をあげて、胸元を押さえて湯船にバシャンと座り込む。
「お、お見苦しいものを…申し訳ございません。」
晴明に背中を向けて、耳まで真っ赤にして心臓はバクバクだ。
「いや…こちらとしては悪い気はしないのだが。」
晴明はそう言って、徐々に遠ざかろうとする香蘭を後から抱き上げ、また膝の上に乗せて逞しい腕で囲ってしまう。
香蘭はますます恥ずかしくなって、両手で顔を覆ってしまう。



