「大丈夫か⁈」
引き寄せられて晴明の腕の中…
香蘭は薄い沐浴着1枚の状態だから、思いがけない密着度に心臓がドクンと波打つ。
「…足元が滑りやすいから気をつけて。」
ぎゅっと抱きしめられて片手でヒョイと持ち上げられる。
「ご、ごめんなさい。あ、あの歩けますから…。」
顔の近さにドギマギして、香蘭の心拍数は急上昇だ。
「少し深い場所がある。大人しく運ばせてくれ。」
耳元近くで喋る晴明の声にゾクっと身体が勝手に反応して、その広い肩にただしがみ付くしか無かった。
どんどん奥に進んで行くと、晴明の胸の高さまで潜り込む。こんなに深いのかと香蘭は少しの怖さを感じて、思わず、しがみ付く腕に力を込めてしまう。
「大丈夫だ。もう少し行くと程よい深さだったから。」
晴明がフッと笑って香蘭を安心させる。
「ここら辺なら良いだ。」
そっと下ろされ足が付く。
「あ、ありがとうございます。」
香蘭がお礼を言って見上げると、晴明の優しい笑顔が降り注ぐ。
「周りを見てみろ。」
そう言われて、そっと周囲に目を凝らす。
サーっと優しく吹く風が、湯煙をフワッと巻き上げて瞬間視界がパッと開ける。
「うわぁ…綺麗…。」
ため息にも似た感嘆を上げて香蘭は、周りの景色に釘付けになる。
そこは見渡す限り真っ白な花が咲き乱れ、月明かりに照らされて浮かび上がって見える、まるで桃源郷のようなところだった。
香蘭はその光景に感動して、しばらくうっとり見つめ続ける。
「綺麗だな…。」
晴明がポツリと落とした言葉で我に帰る。
「本当に…綺麗なところです。」
感動を分け与えた気がして嬉しくなって、満面の笑顔で晴明を見上げる。
「綺麗なのはそなたの事だ。この景色に溶け込んで、まるで天女のように神々しい…。」
「えっ…⁇」
思わぬ賛美を受けて香蘭は固まる。
晴明が目を細めてじっと見て来るから恥ずかしくなって、バシャンと湯船に慌ててしゃがみ込む。
ハハハハっと楽しそうに笑いながら晴明も湯に浸かり、香蘭を引き寄せ自分の膝の上に座らせる。
「せ、晴明様は…凄く私を、過大評価しすぎです…。」
近すぎる距離に香蘭はそっぽを向いて抗議する。
「そなたが自分を軽く見過ぎているのだ。決して大袈裟ではないぞ。」
晴明だって、それについてはいささか不服で抗議する。
濡れてしまった香蘭の髪を丁寧に耳にかけて、ふわふわの餅のような頬に触れる。
「そなたの頬の触り心地が好きだ。触れるだけで一瞬で疲れが吹き飛ぶ。それにこのサラサラとした絹のような髪も、この柔らかな唇も…」
軽くチュッと音を立てて唇が重なる。
「誰にも触れられたくないし、触れさせたくない。…たとえ義兄だとしても。」
そこに男女の感情がないとしても、全てが嫉妬の対象になるのだと、晴明自身も今日気付く。
「お義兄様は家族なのですから、気にしなくても良いのでは?」
香蘭はおかしそうに笑うから、
「笑い事ではない。」
と、晴明が真顔で言う。
「出来るだけ早く婚礼の儀を執り行いたい。俺のものだと世界に向けて知らしめたいのだ。
俺と結婚してくれるか?」
そっと抱き寄せられて、その暑さに熱ってしまう。
「はい…。不束者ですが、末永くよろしくお願致します。」
香蘭は晴明の腕の中、心地の良い安堵感に浸りながらそう告げる。
「ありがとう、これまで以上に大切にする。
だからそなたも、もっと俺に心を開いてくれ。わがまま言って困らせるくらい全部曝け出してくれ。」
「わがまま…ですか?」
「香蘭は俺に遠慮しすぎている。不満でも苦情でも要望なんでも受け止める。」
晴明は、いつだって遠慮して自分の気持ちを隠してしまう香蘭が、どうしたら本音を聞かせてくれるのか、それを導き出せない自分の不器用加減にも、ほとほと呆れていたから、良い機会だと直球で投げかける事にした。
少し考えてから、
「では…あの、腕の傷を見せて下さい。」
と、香蘭が出した要望は的外れで…
「俺の事はどうでも良いのだが…。」
と、晴明は呆気に取られる。
引き寄せられて晴明の腕の中…
香蘭は薄い沐浴着1枚の状態だから、思いがけない密着度に心臓がドクンと波打つ。
「…足元が滑りやすいから気をつけて。」
ぎゅっと抱きしめられて片手でヒョイと持ち上げられる。
「ご、ごめんなさい。あ、あの歩けますから…。」
顔の近さにドギマギして、香蘭の心拍数は急上昇だ。
「少し深い場所がある。大人しく運ばせてくれ。」
耳元近くで喋る晴明の声にゾクっと身体が勝手に反応して、その広い肩にただしがみ付くしか無かった。
どんどん奥に進んで行くと、晴明の胸の高さまで潜り込む。こんなに深いのかと香蘭は少しの怖さを感じて、思わず、しがみ付く腕に力を込めてしまう。
「大丈夫だ。もう少し行くと程よい深さだったから。」
晴明がフッと笑って香蘭を安心させる。
「ここら辺なら良いだ。」
そっと下ろされ足が付く。
「あ、ありがとうございます。」
香蘭がお礼を言って見上げると、晴明の優しい笑顔が降り注ぐ。
「周りを見てみろ。」
そう言われて、そっと周囲に目を凝らす。
サーっと優しく吹く風が、湯煙をフワッと巻き上げて瞬間視界がパッと開ける。
「うわぁ…綺麗…。」
ため息にも似た感嘆を上げて香蘭は、周りの景色に釘付けになる。
そこは見渡す限り真っ白な花が咲き乱れ、月明かりに照らされて浮かび上がって見える、まるで桃源郷のようなところだった。
香蘭はその光景に感動して、しばらくうっとり見つめ続ける。
「綺麗だな…。」
晴明がポツリと落とした言葉で我に帰る。
「本当に…綺麗なところです。」
感動を分け与えた気がして嬉しくなって、満面の笑顔で晴明を見上げる。
「綺麗なのはそなたの事だ。この景色に溶け込んで、まるで天女のように神々しい…。」
「えっ…⁇」
思わぬ賛美を受けて香蘭は固まる。
晴明が目を細めてじっと見て来るから恥ずかしくなって、バシャンと湯船に慌ててしゃがみ込む。
ハハハハっと楽しそうに笑いながら晴明も湯に浸かり、香蘭を引き寄せ自分の膝の上に座らせる。
「せ、晴明様は…凄く私を、過大評価しすぎです…。」
近すぎる距離に香蘭はそっぽを向いて抗議する。
「そなたが自分を軽く見過ぎているのだ。決して大袈裟ではないぞ。」
晴明だって、それについてはいささか不服で抗議する。
濡れてしまった香蘭の髪を丁寧に耳にかけて、ふわふわの餅のような頬に触れる。
「そなたの頬の触り心地が好きだ。触れるだけで一瞬で疲れが吹き飛ぶ。それにこのサラサラとした絹のような髪も、この柔らかな唇も…」
軽くチュッと音を立てて唇が重なる。
「誰にも触れられたくないし、触れさせたくない。…たとえ義兄だとしても。」
そこに男女の感情がないとしても、全てが嫉妬の対象になるのだと、晴明自身も今日気付く。
「お義兄様は家族なのですから、気にしなくても良いのでは?」
香蘭はおかしそうに笑うから、
「笑い事ではない。」
と、晴明が真顔で言う。
「出来るだけ早く婚礼の儀を執り行いたい。俺のものだと世界に向けて知らしめたいのだ。
俺と結婚してくれるか?」
そっと抱き寄せられて、その暑さに熱ってしまう。
「はい…。不束者ですが、末永くよろしくお願致します。」
香蘭は晴明の腕の中、心地の良い安堵感に浸りながらそう告げる。
「ありがとう、これまで以上に大切にする。
だからそなたも、もっと俺に心を開いてくれ。わがまま言って困らせるくらい全部曝け出してくれ。」
「わがまま…ですか?」
「香蘭は俺に遠慮しすぎている。不満でも苦情でも要望なんでも受け止める。」
晴明は、いつだって遠慮して自分の気持ちを隠してしまう香蘭が、どうしたら本音を聞かせてくれるのか、それを導き出せない自分の不器用加減にも、ほとほと呆れていたから、良い機会だと直球で投げかける事にした。
少し考えてから、
「では…あの、腕の傷を見せて下さい。」
と、香蘭が出した要望は的外れで…
「俺の事はどうでも良いのだが…。」
と、晴明は呆気に取られる。



