「これはこれは、どうやら楽しい宴になりそうですな。」
ガラガラっと扉が開き美味しそうな匂いと共に、白髪に立派な髭をたくわえた初老の男がやって来た。
「師匠!お久しぶりです。忙しさにかまけて長らく会いに来れず申し訳ありません。」
晴明がサッと立ち上がりその男の元へと駆け寄るから、これはもしかしてと香蘭も慌てて立ち上がり、膝をついて頭を下げる。
秀英はどなただろうか?と首を傾げながらも立ち上がり頭を下げた。
「晴明殿もご立派になられて、人里離れて暮らす隠居の身の私でもそなたの活躍は耳にするぐらいだ。」
そう言って朗らかな微笑みを浮かべる。
そんな初老の男に晴明は惜し気もなく臣下の礼をとって挨拶をする。
「このような密会の場を提供して頂きありがとうございます。こちらでお願いしたのは他でもなく、恩師である貴方様に私の大事な者達に会って頂きたかった事が1番です。」
よく通る声で晴明が話し出し、香蘭と秀英を紹介する。
「この様な辺鄙な場所によう来られました。
私はこの寺の主人、宇徳(ウトク)と申す。既に表舞台から足を洗ったおいぼれです。あまり畏まらずにして頂けるとありがたい。」
優しく微笑む宇徳のき穏やかな空気が流れる。
そして夕方、ささやかながらご馳走が用意され4人のみの宴がもたらされた。
宇徳(ウトク)法師はとても愉快な人物で、この先を担う若者達を大きな心で包んでくれた。
「ところで、香蘭殿は不憫ないか?
この男、富と頭は申し分ないが男女のことになると少々疎いところがある。何か困ったことがあれば、いつでも私を訪ねてくれと良いぞ。」
縁もたけなわになった頃、宇徳法師が香蘭に聞いてくる。
「晴明様にはとても良くして頂いております。こんな立派な方に私なんかが不釣り合いではと…多少気後れしてしまいますが…。」
香蘭が申し訳なさそうに言うから、それをこっそり聞いていた晴明が、間髪入れずに言ってくる。
「何を申すか。私にはそなたしかいないのだと、何度も言って聞かせたつもりなのに、未だにその様に思っているのか…。
師匠、どうにか彼女を説き伏せて頂きたい。私の言葉に嘘偽りない事を。」
困り顔で宇徳に訴えてる。
「晴明はこの見た目だから、子供の頃から異性の目を惹いていたが、あの頃から鈍かった。
それもそのはず興味ある物、大事な物には一直線で、真っ直ぐ前しか見ていないのだから。今ではそれが香蘭殿、あなたなのだと私はお見受けしました。
だから、大丈夫です。あなたの事が晴明の核となり、平和をもたらし国のためとなるのです。」
「そんな…大それた事を…。」
香蘭は頬を赤らめる。
晴明は分かったかというように香蘭に頷き笑いかけ、やれやれと安堵する。
「羨ましい限りです。私もそんな伴侶を見つけたいものです。」
本当に羨ましそうに2人を見つめる。
「いつかあなたも出会える筈だから、大丈夫。進むべき道をひたすら走り続けなさい。」
先見の目があるのか宇徳がそう言うから、不思議と本当に大丈夫だと思えてしまう。
だからつい、秀英は宇徳に聞いてしまう。
「私にも香蘭のような良い伴侶が見つかるでしょうか?」
「求める者は意外とすぐ近くにあるものです。既にもう出会っているかもしれませんよ。」
意味あり気には宇徳はそう言って笑う。
ガラガラっと扉が開き美味しそうな匂いと共に、白髪に立派な髭をたくわえた初老の男がやって来た。
「師匠!お久しぶりです。忙しさにかまけて長らく会いに来れず申し訳ありません。」
晴明がサッと立ち上がりその男の元へと駆け寄るから、これはもしかしてと香蘭も慌てて立ち上がり、膝をついて頭を下げる。
秀英はどなただろうか?と首を傾げながらも立ち上がり頭を下げた。
「晴明殿もご立派になられて、人里離れて暮らす隠居の身の私でもそなたの活躍は耳にするぐらいだ。」
そう言って朗らかな微笑みを浮かべる。
そんな初老の男に晴明は惜し気もなく臣下の礼をとって挨拶をする。
「このような密会の場を提供して頂きありがとうございます。こちらでお願いしたのは他でもなく、恩師である貴方様に私の大事な者達に会って頂きたかった事が1番です。」
よく通る声で晴明が話し出し、香蘭と秀英を紹介する。
「この様な辺鄙な場所によう来られました。
私はこの寺の主人、宇徳(ウトク)と申す。既に表舞台から足を洗ったおいぼれです。あまり畏まらずにして頂けるとありがたい。」
優しく微笑む宇徳のき穏やかな空気が流れる。
そして夕方、ささやかながらご馳走が用意され4人のみの宴がもたらされた。
宇徳(ウトク)法師はとても愉快な人物で、この先を担う若者達を大きな心で包んでくれた。
「ところで、香蘭殿は不憫ないか?
この男、富と頭は申し分ないが男女のことになると少々疎いところがある。何か困ったことがあれば、いつでも私を訪ねてくれと良いぞ。」
縁もたけなわになった頃、宇徳法師が香蘭に聞いてくる。
「晴明様にはとても良くして頂いております。こんな立派な方に私なんかが不釣り合いではと…多少気後れしてしまいますが…。」
香蘭が申し訳なさそうに言うから、それをこっそり聞いていた晴明が、間髪入れずに言ってくる。
「何を申すか。私にはそなたしかいないのだと、何度も言って聞かせたつもりなのに、未だにその様に思っているのか…。
師匠、どうにか彼女を説き伏せて頂きたい。私の言葉に嘘偽りない事を。」
困り顔で宇徳に訴えてる。
「晴明はこの見た目だから、子供の頃から異性の目を惹いていたが、あの頃から鈍かった。
それもそのはず興味ある物、大事な物には一直線で、真っ直ぐ前しか見ていないのだから。今ではそれが香蘭殿、あなたなのだと私はお見受けしました。
だから、大丈夫です。あなたの事が晴明の核となり、平和をもたらし国のためとなるのです。」
「そんな…大それた事を…。」
香蘭は頬を赤らめる。
晴明は分かったかというように香蘭に頷き笑いかけ、やれやれと安堵する。
「羨ましい限りです。私もそんな伴侶を見つけたいものです。」
本当に羨ましそうに2人を見つめる。
「いつかあなたも出会える筈だから、大丈夫。進むべき道をひたすら走り続けなさい。」
先見の目があるのか宇徳がそう言うから、不思議と本当に大丈夫だと思えてしまう。
だからつい、秀英は宇徳に聞いてしまう。
「私にも香蘭のような良い伴侶が見つかるでしょうか?」
「求める者は意外とすぐ近くにあるものです。既にもう出会っているかもしれませんよ。」
意味あり気には宇徳はそう言って笑う。



