3人での密会はとても有意義なものになった。
未来を見据えて語り合う晴明と秀英を、香蘭は暖かな眼差しで見つめていた。
それというのも香蘭が、難しい話し合いに私が居てはと席を外そうとするのに、晴明にここに居て欲しいと離しては貰えなかったからだ。
兵力や資金調達など具体的な話しを、私が聞いても良いのだろうかと思いながら香蘭は静かに耳を傾けていた。
あらゆる知恵や知識を惜しげも無く話し始める晴明は、まるで頭の中に本棚があるのでは?と思うほどの聡明さを見せられ気後れしてしまう。
こんな方の側にいるのが学もない私だなんて…。
学校にも通わせてもらえなかった香蘭だから、読み書きでさえ満足に出来ない自分が恥ずかしくなる。
2人の若き王の話し合いが中盤に入った頃、不意に晴明が香蘭に問う。
「香蘭、この革命を無血開城させたいのだ。どのように戦略するべきだと思う?」
突然の問いに香蘭は驚き瞬きを繰り返す。
「私…ですか?お兄様に問うべき質問では?」
戸惑いそう返す香蘭だが、
「そなたがもし、義兄の立場ならどうするのか興味がある。」
と言われてしまい、香蘭は困りながらも少し考える。
晴明様がこんな大事な場で、おからかいになる様な人ではないのだから、本気で学も知識も無い私に聞いているのだろ…。
話し合いの場を設けるにしても、城に攻め込まなければ始まらないのが世の革命だ。それを無血開城させるには……香蘭は無い知恵を絞って考える。
「…向こうから…開城する様に仕向ければ良いのでは?」
香蘭がそう答えると、
「そうするには、どの様に攻め込めば良いのだろうか?」
また、晴明が問う。
「自分よりも大きく強い者に…勝てないと思わせる様な…偉大な敵が来たら…きっと怖くて自分から逃げてしまうのでは…?」
「さすが、私の香蘭だ。」
晴明が急に嬉しそうに笑い出す。
秀英もつられた様笑い始めるから、意図が分からず香蘭は首を傾ける。
「私が考えている作戦を最も簡単に話してくれた。
実は秀英殿をその偉大な敵に見立てようと思っているのです?」
「私をですか?」
それには秀英もぽかんとした顔で晴明に問う。
「万世国はこの3年、平和を求め一度も戦をしていません。その一方で防壁を固める為に軍事力にも力を入れて来た。世界各国から最新の武器を買い、兵士を鍛え今や眠れる獅子となりました。その万世国が正式に味方につけば香の国の国王も恐れ慄き、戦わずして逃げ出すはずです。」
「しかし、それをどの様に知らしめるのですか?」
秀英にも寝耳に水のようで、驚きを隠せない。
「私と香蘭が大々的に結婚式を挙げれば、おのずと世間は注目するでしょう。そこで、軍事パレードさながらの演出をします。彼女の地位を確固たるものに出来ますし、秀英殿との結び付きを知れば、世の人は万世国が後ろに着いたと分かるでしょう。」
そう言う晴明の確信に満ちた堂々たる態度を秀英は見つめ、神々しさまで感じ始める。
それなのに…
「本音を言えば…香蘭を人前に晒す事に抵抗はあります。彼女の美しさを世の男達に知らしめる事になる。これ以上ライバルが増えるのは耐え難い…。」
晴明が本気で頭を抱えてそう言い始めるから、香蘭はふふふっと思わず小さく笑う。
「晴明様、お言葉ですが…私にそれほどの価値があるとは思いません。私はただの踊り子に過ぎず…いらぬ心配かと思います。」
「香蘭…笑い事では無いのだぞ。今まで私がどれだけ耐えて来たか…そなたを熱い目で観ている男達を、3年もの間何も出来ずに観ていたのだ。嫉妬で腑が煮え繰り返る日々を何とか抑えてここまで来たのだ。そして今、そなたが実は香の国の姫だったと知れば、その人気にもっと拍車がかかる。」
そんな本音を垣間見せる晴明を、秀英もまた親しみと信頼が湧く。
「貴方は大国を率いる完璧な皇帝なのかと思っていました。いつだって冷静で、その眼差しは自信に満ち溢れている。
たが、香蘭の事では悩み事が尽きぬただの1人の男だと、同情さえ湧いてくる。」
秀英もまたハハハっと笑って、温かい目で晴明を見る。
未来を見据えて語り合う晴明と秀英を、香蘭は暖かな眼差しで見つめていた。
それというのも香蘭が、難しい話し合いに私が居てはと席を外そうとするのに、晴明にここに居て欲しいと離しては貰えなかったからだ。
兵力や資金調達など具体的な話しを、私が聞いても良いのだろうかと思いながら香蘭は静かに耳を傾けていた。
あらゆる知恵や知識を惜しげも無く話し始める晴明は、まるで頭の中に本棚があるのでは?と思うほどの聡明さを見せられ気後れしてしまう。
こんな方の側にいるのが学もない私だなんて…。
学校にも通わせてもらえなかった香蘭だから、読み書きでさえ満足に出来ない自分が恥ずかしくなる。
2人の若き王の話し合いが中盤に入った頃、不意に晴明が香蘭に問う。
「香蘭、この革命を無血開城させたいのだ。どのように戦略するべきだと思う?」
突然の問いに香蘭は驚き瞬きを繰り返す。
「私…ですか?お兄様に問うべき質問では?」
戸惑いそう返す香蘭だが、
「そなたがもし、義兄の立場ならどうするのか興味がある。」
と言われてしまい、香蘭は困りながらも少し考える。
晴明様がこんな大事な場で、おからかいになる様な人ではないのだから、本気で学も知識も無い私に聞いているのだろ…。
話し合いの場を設けるにしても、城に攻め込まなければ始まらないのが世の革命だ。それを無血開城させるには……香蘭は無い知恵を絞って考える。
「…向こうから…開城する様に仕向ければ良いのでは?」
香蘭がそう答えると、
「そうするには、どの様に攻め込めば良いのだろうか?」
また、晴明が問う。
「自分よりも大きく強い者に…勝てないと思わせる様な…偉大な敵が来たら…きっと怖くて自分から逃げてしまうのでは…?」
「さすが、私の香蘭だ。」
晴明が急に嬉しそうに笑い出す。
秀英もつられた様笑い始めるから、意図が分からず香蘭は首を傾ける。
「私が考えている作戦を最も簡単に話してくれた。
実は秀英殿をその偉大な敵に見立てようと思っているのです?」
「私をですか?」
それには秀英もぽかんとした顔で晴明に問う。
「万世国はこの3年、平和を求め一度も戦をしていません。その一方で防壁を固める為に軍事力にも力を入れて来た。世界各国から最新の武器を買い、兵士を鍛え今や眠れる獅子となりました。その万世国が正式に味方につけば香の国の国王も恐れ慄き、戦わずして逃げ出すはずです。」
「しかし、それをどの様に知らしめるのですか?」
秀英にも寝耳に水のようで、驚きを隠せない。
「私と香蘭が大々的に結婚式を挙げれば、おのずと世間は注目するでしょう。そこで、軍事パレードさながらの演出をします。彼女の地位を確固たるものに出来ますし、秀英殿との結び付きを知れば、世の人は万世国が後ろに着いたと分かるでしょう。」
そう言う晴明の確信に満ちた堂々たる態度を秀英は見つめ、神々しさまで感じ始める。
それなのに…
「本音を言えば…香蘭を人前に晒す事に抵抗はあります。彼女の美しさを世の男達に知らしめる事になる。これ以上ライバルが増えるのは耐え難い…。」
晴明が本気で頭を抱えてそう言い始めるから、香蘭はふふふっと思わず小さく笑う。
「晴明様、お言葉ですが…私にそれほどの価値があるとは思いません。私はただの踊り子に過ぎず…いらぬ心配かと思います。」
「香蘭…笑い事では無いのだぞ。今まで私がどれだけ耐えて来たか…そなたを熱い目で観ている男達を、3年もの間何も出来ずに観ていたのだ。嫉妬で腑が煮え繰り返る日々を何とか抑えてここまで来たのだ。そして今、そなたが実は香の国の姫だったと知れば、その人気にもっと拍車がかかる。」
そんな本音を垣間見せる晴明を、秀英もまた親しみと信頼が湧く。
「貴方は大国を率いる完璧な皇帝なのかと思っていました。いつだって冷静で、その眼差しは自信に満ち溢れている。
たが、香蘭の事では悩み事が尽きぬただの1人の男だと、同情さえ湧いてくる。」
秀英もまたハハハっと笑って、温かい目で晴明を見る。



