一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

別室に運ばれた香蘭は、しばらく晴明にしがみついたまま肩を震わしていた。

「…急に突き付けられた現実に頭がついていかないのだ。泣きたい時は思いっきり泣くべきだ。」
晴明はただただ抱きしめて優しく背中を摩るしかない。

香蘭はしばらくヒックヒックと泣きじゃくり、段々と気持ちが落ち着いていく。

「…ごめんなさい、晴明様…。」
真っ赤な目で見つめられ晴明は心が痛くなる。

「俺に、謝らないでくれ。
むしろ謝るべきは俺の方だ。知っていながら全てを秀英殿に託してしまった…。俺が徐々に話して伝えるべきだったかもしれない。」

香蘭は涙を手で無理矢理拭い取り、首を横に振る。

「いいえ。晴明様のお陰で…天涯孤独の身の筈の私に…兄妹がいた事を知ったのですから。晴明様は何も悪くありません。」
息絶え絶えに、それでも一生懸命に話す香蘭の、額にコツンと晴明は自分の額を合わせる。

「そなたの悲しみが俺に移れば良いのに…。」
呟きにも似た声でそう言って、しばらく寄り添ってくれる。その優しさにまた涙が出そうになる。

「晴明様…もう大丈夫です。
あの…お兄様の方に先に…私は、落ち着いたら…直ぐ行きますから…。」

香蘭は、気丈にもそう言って笑顔を作り晴明の背中を押す。そうしなければ優しい婚約者はきっと、いつまでも寄り添って時間の許す限り傍にいようとしてしまうから…。

「分かった。それがそなたの願いなら叶えてやらねばならないな。」
晴明は後ろ髪引かれる思いで立ち上がり、香蘭の頬をサラリと撫ぜて部屋を出て行った。