一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

「そなたに合わせたい人がいる。」
跪いたままの体勢で香蘭に告げる。

「…どなたですか?」

俺の心はどうしたって騒つくが、避けては通れない事だと決心する。
「実は今、秘密裏に香の国の前国王の血を引く者を我が国で匿っている。名は秀英殿と言う。そなたとは腹違いの兄妹になる筈だ。」

「私に…義兄が…?」
香蘭はポカンとした顔で首を傾けながら俺を見つめてくる。

「ああ。そなたとは多分5、6歳年上だから、もしかしたら秀英殿はそなたの事を覚えているかもしれない。」
天涯孤独な運命なのだと思って生きてきた香蘭にとって、兄がいるだなんて現実味がないのだろう。

「会ってみたいか?それとも今更会いたくないか?」
彼女の思いを汲み取りたいと聞いてみると、

「会ってみたいとは思いますが…少し怖い気がします。」
率直に今の気持ちを伝えてくるから、

「そうだな。では、会うか会わないかは秀英殿に託そう。」
そう伝えると立ち上がり彼女の横に座り直す。
俺が今彼女にしてやれる事はこの冷たい手を温めてあげる事ぐらいだ。それしか出来ない自分がもどかしいが…。

賽は投げられた。後は運命が動く時、瞬時に判断し動くのみ。

その後、香蘭と2人少し早めの昼食を取り、寧々に追い立てられるように宮殿に戻った。
夕方頃には秀英殿のところから戻って来た李生から意向を聞く。

「秀英様は是非会いたいと申しておりました。香蘭様が生きていた事を大変喜んでいらっしゃいました。」
そう報告を受けひとまず安堵する。

彼にとっても邪魔な存在になり得ない義妹を、どう思うか若干心配していたのだが、彼はやはり俺の見越した通り器が広い男だ。

きっと義兄として香蘭にとって良き理解者になってくれる事だろうと納得した。