宮殿に入り直ちに執務に取り掛かる。頭に浮かぶ邪念をどうにか振り払いたいと、黙々と机の上に溜まった書類を減らす作業をする。
「いつになくやる気でおられる。香蘭殿のご回復のお陰で陛下のやる気も増したようで良かったです。」
李生の満足そうな言葉が耳の横を掠めるが、それに返事を返す気も無くただ受け流す。
軽口を叩いているほど余裕は無い。
そろそろ帰って来るだろう虎鉄を気にして何度も執務室の扉を見つめる。
正午が回った頃、流石に少し腹が減ったと手を止め、机に置かれたお茶に手を伸ばす。
その時、風がブワッと吹いたかと思うと、目の前に跪き家臣の礼を取る虎鉄が現れた。俺は一瞬瞬きをして立ち上がる。
「ご苦労だった。思いの外、早く帰って来れたのだな。」
まずは礼をして無事に帰った事を安堵する。
「で、どのようだったか?」
どうしても先を急いで聞いてしまう。
「陛下のご察しの通りかと。
香蘭様は前国王のお子様でございます。側室愛蘭様のお子様で、18年前の内乱で母娘共に行方不明になったとの話でございます。
それゆえに香の国の元防衛大臣である香民(コウミン)が企てた事でございました。」
虎鉄からの話しを聞いて、晴明ははぁーと深い息を吐いて天を仰ぐ。
「今のところペンダントが見せ物だとはバレておりませんので、しばらくは安心かと。ただ、時間の問題ではありますが…。」
虎鉄はそう言って、少しばかりでも晴明の気分を上げようと心みる。
「しかし、なぜ香民は香蘭がペンダントを持っていると知っていたのだ?」
「私もその点について気になり調べてみたのですが、どうやら香蘭様の母である愛蘭様は、香蘭様を孤児院に預けた後に追手に捕まり、しばらく幽閉されていたようです。5年ほど幽閉されていたようですが、体調を崩され帰らぬ人に…。
その時に一目香蘭様に会いたいと、秘密裏に密偵を使って探していたようです。そこからペンダントの事が漏れ伝わったようです。」
「そうか…香蘭を母上に合わせてあげられたら良かったな…。」
今となってはどうしようも無い事だが…。
そして、心配なのはもう1人の香の国の後継者になる得る男、秀英殿の事。
「香の国の国王は自分の立場が脅かされていると察しているようだな。」
自分の地位を脅かす前国王の子供達を今のうちに消してしまおうと思っているのだから、もしかしたら秀英殿の企ても気付かれているのかと危惧する。
「その事も気になり探ってみたのですが、有力な情報は得られませんでした。
しかし香の国は今、王族貴族達ばかりが至福を肥やし、民が重税に苦しみ貧しい生活を強いられています。その為各地で農民一揆や反乱が相次ぎ、国政は不安定な状態です。
陛下、引き続き香の国に潜り情報収集をさせてください。」
珍しく虎鉄が願い出る。短い潜伏期間では充分な情報を得られず、不完全燃焼なのかもしれない。
「気持ちは分かるが、今は駄目だ。そなたには俺の側で護衛をして貰わなければならない。その代わり密偵を増やし引き続き情報収集をさせよう。
秀英殿の計画はこのまま続行だ。」
「御意に。」
虎鉄が膝を着き臣下の礼をとる。
「ご苦労だった。今日はこれでゆっくり休め。」
虎鉄への労いの言葉をかけ、早速秀英殿に必要な情報を届けるようにと李生に頼む。
李生と虎鉄が部屋を去り、俺は束の間1人になって考える。
香蘭は世が世なら香の国の姫だった…。
本人にどう伝えるべきか考えあぐねるが、結局悩んだところでどこからか漏れ出る情報ならば、早いうちに真実を俺の口から伝えるべきだと、椅子から立ち上がる。
「いつになくやる気でおられる。香蘭殿のご回復のお陰で陛下のやる気も増したようで良かったです。」
李生の満足そうな言葉が耳の横を掠めるが、それに返事を返す気も無くただ受け流す。
軽口を叩いているほど余裕は無い。
そろそろ帰って来るだろう虎鉄を気にして何度も執務室の扉を見つめる。
正午が回った頃、流石に少し腹が減ったと手を止め、机に置かれたお茶に手を伸ばす。
その時、風がブワッと吹いたかと思うと、目の前に跪き家臣の礼を取る虎鉄が現れた。俺は一瞬瞬きをして立ち上がる。
「ご苦労だった。思いの外、早く帰って来れたのだな。」
まずは礼をして無事に帰った事を安堵する。
「で、どのようだったか?」
どうしても先を急いで聞いてしまう。
「陛下のご察しの通りかと。
香蘭様は前国王のお子様でございます。側室愛蘭様のお子様で、18年前の内乱で母娘共に行方不明になったとの話でございます。
それゆえに香の国の元防衛大臣である香民(コウミン)が企てた事でございました。」
虎鉄からの話しを聞いて、晴明ははぁーと深い息を吐いて天を仰ぐ。
「今のところペンダントが見せ物だとはバレておりませんので、しばらくは安心かと。ただ、時間の問題ではありますが…。」
虎鉄はそう言って、少しばかりでも晴明の気分を上げようと心みる。
「しかし、なぜ香民は香蘭がペンダントを持っていると知っていたのだ?」
「私もその点について気になり調べてみたのですが、どうやら香蘭様の母である愛蘭様は、香蘭様を孤児院に預けた後に追手に捕まり、しばらく幽閉されていたようです。5年ほど幽閉されていたようですが、体調を崩され帰らぬ人に…。
その時に一目香蘭様に会いたいと、秘密裏に密偵を使って探していたようです。そこからペンダントの事が漏れ伝わったようです。」
「そうか…香蘭を母上に合わせてあげられたら良かったな…。」
今となってはどうしようも無い事だが…。
そして、心配なのはもう1人の香の国の後継者になる得る男、秀英殿の事。
「香の国の国王は自分の立場が脅かされていると察しているようだな。」
自分の地位を脅かす前国王の子供達を今のうちに消してしまおうと思っているのだから、もしかしたら秀英殿の企ても気付かれているのかと危惧する。
「その事も気になり探ってみたのですが、有力な情報は得られませんでした。
しかし香の国は今、王族貴族達ばかりが至福を肥やし、民が重税に苦しみ貧しい生活を強いられています。その為各地で農民一揆や反乱が相次ぎ、国政は不安定な状態です。
陛下、引き続き香の国に潜り情報収集をさせてください。」
珍しく虎鉄が願い出る。短い潜伏期間では充分な情報を得られず、不完全燃焼なのかもしれない。
「気持ちは分かるが、今は駄目だ。そなたには俺の側で護衛をして貰わなければならない。その代わり密偵を増やし引き続き情報収集をさせよう。
秀英殿の計画はこのまま続行だ。」
「御意に。」
虎鉄が膝を着き臣下の礼をとる。
「ご苦労だった。今日はこれでゆっくり休め。」
虎鉄への労いの言葉をかけ、早速秀英殿に必要な情報を届けるようにと李生に頼む。
李生と虎鉄が部屋を去り、俺は束の間1人になって考える。
香蘭は世が世なら香の国の姫だった…。
本人にどう伝えるべきか考えあぐねるが、結局悩んだところでどこからか漏れ出る情報ならば、早いうちに真実を俺の口から伝えるべきだと、椅子から立ち上がる。



