虎鉄が万世国へと帰路に着いた頃、別邸で過ごし始めた香蘭が、原因不明の高熱を出して寝込んでいた。
今朝起きて朝食を一緒に食べた時は何とも無いように見えた。
宮中で溜まりに溜まった書類の山を、黙々と捌いていた晴明に一報が届いたのが昼過ぎ、そこから怒涛の如く仕事をこなし何とか目処を付ける。
「これが終わったら別邸に帰る。」
先程から思考のほぼ全てを香蘭の事で占めていた晴明に遂に我慢の限界がやって来た。
「定時まであと3時間ございます。どうかご辛抱なさいませ。」
李生が机に置いた時計をチラリと見て冷静に言う。
「香蘭が高熱に1人苦しんでいるのだ。
きっと心細い思いをしている筈だ。婚約者の俺が駆け付けなくてどうする。」
晴明が苛立ちを隠す事無く訴えてくる。
これまで何事にも動じない冷静さで、時に感情を持ち合わせていないのかと心配になるほど冷酷さを見せてきた皇帝陛下が、香蘭に出会ってからというもの人間らしい一面を見せる様になった。
それは喜ばしい事だが、公務に支障が出るのはいささか頂けない。
側近である李生はそう思いため息を吐く。
「今日分の仕事は既にこなした。それに、香蘭が気になり仕事どころでは無いのだ。」
そう言う晴明は既に椅子から立ち上がり、制帽をかぶり始めている。
「後は頼む。俺は早馬で帰るから。」
李生の返事も待たずして風の如く出て行ってしまった。
残された李生は深くため息をはぁーと吐き捨て、
「皇太后様との面会はどうすれば…。」
と、1人ぼやく。
きっと陛下の事だ、覚えているのに忘れたフリしているのだろう…。
今朝起きて朝食を一緒に食べた時は何とも無いように見えた。
宮中で溜まりに溜まった書類の山を、黙々と捌いていた晴明に一報が届いたのが昼過ぎ、そこから怒涛の如く仕事をこなし何とか目処を付ける。
「これが終わったら別邸に帰る。」
先程から思考のほぼ全てを香蘭の事で占めていた晴明に遂に我慢の限界がやって来た。
「定時まであと3時間ございます。どうかご辛抱なさいませ。」
李生が机に置いた時計をチラリと見て冷静に言う。
「香蘭が高熱に1人苦しんでいるのだ。
きっと心細い思いをしている筈だ。婚約者の俺が駆け付けなくてどうする。」
晴明が苛立ちを隠す事無く訴えてくる。
これまで何事にも動じない冷静さで、時に感情を持ち合わせていないのかと心配になるほど冷酷さを見せてきた皇帝陛下が、香蘭に出会ってからというもの人間らしい一面を見せる様になった。
それは喜ばしい事だが、公務に支障が出るのはいささか頂けない。
側近である李生はそう思いため息を吐く。
「今日分の仕事は既にこなした。それに、香蘭が気になり仕事どころでは無いのだ。」
そう言う晴明は既に椅子から立ち上がり、制帽をかぶり始めている。
「後は頼む。俺は早馬で帰るから。」
李生の返事も待たずして風の如く出て行ってしまった。
残された李生は深くため息をはぁーと吐き捨て、
「皇太后様との面会はどうすれば…。」
と、1人ぼやく。
きっと陛下の事だ、覚えているのに忘れたフリしているのだろう…。



