「そなたの主人は誰だ?」
単刀直入に晴明は聞く。
刺客である男は、その問いに口を開かない。
ここにいる全ての者を疑っていた。この中にもし主人が放った密告者がいたら婚約者の命は無い…。
「皆下がってくれ。こやつと一対一で話がしたい。」
晴明は直ぐに全てを読み取り、周りの者達を下がらせる。ゾロゾロとそれに従い家臣達が頭を下げて去っていく。
鉄格子を経て一対一に向かい合う。
「さて、これでそなたの懸念は取り除いた。」
そう言って皇帝晴明は、その身に纏う高価な衣装を気にも止めず、薄汚い床にドカッと座り胡座をかく。
目線が同じ高さになり、男は目を逸せないまま晴明を見つめ身動き一つしない。
「まずは、名は何と申す?」
少しの間の後、
「…江洋(コウヤン)…。」
「洋。そなたの与えられた任務は何だ?」
洋はこの時、この目の前にいる男に逆らうべきでは無い事を悟る。この圧倒的な存在感、上に立つ者が醸し出すオーラ、同じ床に座っていても何もかもが特別で、勝てる要素の一つもない。
そう思うと洋は、尋問に素直に答える事が最善策だと観念する。
「…月光一座の鈴蘭の暗殺。そして証拠としてそのペンダントを持ち帰る事…。」
「ペンダント…なるほど。
では、そなたはその前に2回暗殺未遂があった事を知っているか?」
「他にも鈴蘭の命を狙った暗殺未遂が…!?」
全くもって何も聞いていなかった…
自分以外に暗殺者が放たれていた事を、事前の情報も何も知らされぬまま踊らされていただけだと思い知る。
「その様子では、知らなかったらしいな。」
晴明は思考巡らせる。
婚約の儀の時の刺客は1人取り逃した。その取り逃した刺客からの情報は入っていないようだ。
収穫祭の時の刺客を考えても、何人か逃げ延び情報を主人に報告出来ている筈だ。それなのに洋という男は香蘭と晴明の繋がりすら何も知らなかったようだ。
失敗した者に未来は無いのか…
それとも戻らぬまま、まだこの国に潜んで香蘭の命を狙っているのか…?
ただ一つその事は、香蘭を狙った全ての刺客が組織で動く兵士では無い事を物語っていた。
「そなたはこのままでは捕虜に過ぎない。この状況から外に出られる方法はただ一つ。我々に協力する事だ。」
晴明が提案する。
「…もし、協力しなかったら?」
洋が恐る恐る聞く。
「我が国には死刑が無い。その代わり重罪には禁固100年の刑がある。死は一瞬、生きるは一生、生きているうちに日の目を見る事は無いだろう。」
洋はがくりと頭を下げて地面を見つめる。
『もしも計画が失敗した場合、死を持って忠誠を示せ。』
主人が最後に放った言葉が頭の中を駆け巡り、にこやか笑う婚約者の顔が走馬灯の様に浮かんでは消える。
こんな筈じゃなかった…
少しでも結婚資金を稼ぎたいと、密偵になる決意をした。主人に忠誠心なんてさらさら無い…
目の前にいる男はこの敵国の皇帝であり、最後まで生きる為に足掻けと言う。
信じるに値する男なのかは分からない。騙され踊らされるだけかもしれない…
ただ、このまま従わ無かったとしたら…死は直ぐ目の前だ。
そして、俺が帰らなければ婚約者は直ぐ殺されるだろう…
道は既に一つしか無い。
「分かり、ました。
俺は何をすれば…?」
洋は決心したかのように顔を上げた。
単刀直入に晴明は聞く。
刺客である男は、その問いに口を開かない。
ここにいる全ての者を疑っていた。この中にもし主人が放った密告者がいたら婚約者の命は無い…。
「皆下がってくれ。こやつと一対一で話がしたい。」
晴明は直ぐに全てを読み取り、周りの者達を下がらせる。ゾロゾロとそれに従い家臣達が頭を下げて去っていく。
鉄格子を経て一対一に向かい合う。
「さて、これでそなたの懸念は取り除いた。」
そう言って皇帝晴明は、その身に纏う高価な衣装を気にも止めず、薄汚い床にドカッと座り胡座をかく。
目線が同じ高さになり、男は目を逸せないまま晴明を見つめ身動き一つしない。
「まずは、名は何と申す?」
少しの間の後、
「…江洋(コウヤン)…。」
「洋。そなたの与えられた任務は何だ?」
洋はこの時、この目の前にいる男に逆らうべきでは無い事を悟る。この圧倒的な存在感、上に立つ者が醸し出すオーラ、同じ床に座っていても何もかもが特別で、勝てる要素の一つもない。
そう思うと洋は、尋問に素直に答える事が最善策だと観念する。
「…月光一座の鈴蘭の暗殺。そして証拠としてそのペンダントを持ち帰る事…。」
「ペンダント…なるほど。
では、そなたはその前に2回暗殺未遂があった事を知っているか?」
「他にも鈴蘭の命を狙った暗殺未遂が…!?」
全くもって何も聞いていなかった…
自分以外に暗殺者が放たれていた事を、事前の情報も何も知らされぬまま踊らされていただけだと思い知る。
「その様子では、知らなかったらしいな。」
晴明は思考巡らせる。
婚約の儀の時の刺客は1人取り逃した。その取り逃した刺客からの情報は入っていないようだ。
収穫祭の時の刺客を考えても、何人か逃げ延び情報を主人に報告出来ている筈だ。それなのに洋という男は香蘭と晴明の繋がりすら何も知らなかったようだ。
失敗した者に未来は無いのか…
それとも戻らぬまま、まだこの国に潜んで香蘭の命を狙っているのか…?
ただ一つその事は、香蘭を狙った全ての刺客が組織で動く兵士では無い事を物語っていた。
「そなたはこのままでは捕虜に過ぎない。この状況から外に出られる方法はただ一つ。我々に協力する事だ。」
晴明が提案する。
「…もし、協力しなかったら?」
洋が恐る恐る聞く。
「我が国には死刑が無い。その代わり重罪には禁固100年の刑がある。死は一瞬、生きるは一生、生きているうちに日の目を見る事は無いだろう。」
洋はがくりと頭を下げて地面を見つめる。
『もしも計画が失敗した場合、死を持って忠誠を示せ。』
主人が最後に放った言葉が頭の中を駆け巡り、にこやか笑う婚約者の顔が走馬灯の様に浮かんでは消える。
こんな筈じゃなかった…
少しでも結婚資金を稼ぎたいと、密偵になる決意をした。主人に忠誠心なんてさらさら無い…
目の前にいる男はこの敵国の皇帝であり、最後まで生きる為に足掻けと言う。
信じるに値する男なのかは分からない。騙され踊らされるだけかもしれない…
ただ、このまま従わ無かったとしたら…死は直ぐ目の前だ。
そして、俺が帰らなければ婚約者は直ぐ殺されるだろう…
道は既に一つしか無い。
「分かり、ました。
俺は何をすれば…?」
洋は決心したかのように顔を上げた。



