一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜


宮廷の敷地内、広い中庭にある庭を抜け竹林を進むとひっそりと石造りの建物が薄暗いジメジメとした場所に建っていた。

そこは宮廷でも知る者は少なく、体罰や懲罰の為に建てられた監獄になっている。

24時間門番が常駐していて厳しく出入りを取り締まり、誰が見てもただならぬ場所だと分かるくらい、重苦しい雰囲気を醸し出していた。

「陛下、お疲れ様でございます。」
その門で待っていたのは陛下である晴明の腹臣、李生とその部下数名、そして隠密虎鉄の忠実な家臣達が列を成して皇帝晴明を迎え入れる。

「堅苦しい挨拶は要らない。今の状況の報告を。」
皇帝晴明は、跪き家臣の礼をとろうとする家臣達を片手を挙げて止め先を急ぐ。

「朝から拷問を繰り返しておりますが、一向に口を割らず。絶食3日目、敵の体力も消耗しております。」

「例の紋についての反応は?」

「眉一つ動かさず、かなりの訓練を重ねて来ている者です。ただ、口元に忍ばせていた毒薬を見つけ奪い取ったので、自ら命を断つ事は出来ない状態です。」

「分かった。私が直接話しを聞く。その者のところへ案内しろ。」

皇帝晴明は揺るぎない強い皇帝だ。

初め演じていたに過ぎないが、今ではそれも板につき、敵味方無く誰もが恐れをなすほどの冷酷な皇帝となっていた。

一部の側近である家臣のみが本当の姿を知っているに過ぎない。

皆が平伏し皇帝晴明の後に続く。

石段を降りて行くと薄暗いジメジメとした牢屋が続く地下に到着する。

「こちらでございます。」
案内を受け持っていた兵が皇帝晴明に跪き家臣の礼を取る。

長い暗い廊下の1番隅にひときわ仄暗い牢屋があり、鉄格子の向こう側に、白い囚人服着せられて冷たいゴザの上に正座し、両手を後ろ手に縛られた男が鋭い目付きでこちらを睨み付けていた。