公演前まで穏やかな時間が流れ、徐々に支度をするに連れ緊張感が増していった。
鏡の前に座り化粧を施しながら香蘭は思う。
踊りや唄を取ってしまえば私はちっぽけなただの女に過ぎない。
芸事以外に何も取り柄がなく晴明様の役に立つどころか、今は知らない刺客に命を狙われるただの厄介者だ。
この国で1番大切な方の命を晒してまで、守られる資格なんて私にはない…。
出来れば人知れず、ひっそりと生きていくべきではないかとも思ってしまう。
だけど…既に離れ難く…彼のいない世界で1人生きていける自信もない。
「どうすれば…。」
1人小さく言葉を吐いて香蘭は俯く。
「姐様、どうされましたか?」
近くに支度を手伝っていた寧々が、それに気付き香蘭に声をかける。
「大丈夫なんでもないわ。
…最後だと思うと少し緊張してきたの。」
香蘭は慌てて取り繕い何んでもないと微笑む。
幕が上がるまで後少しとなり、踊り子達は舞台の端に整列すると、暗転代わりの幕持ち達がザワザワと動き出し舞台に幕をかける。
その後に踊り子達は舞台へ急いそと歩みを進める。観客席からはきっと黒い影が幕に写っているのだろう。
観客からの声援がより一層大きくなる。
お囃子の横笛が奏始めると、先程までのザワつきが急にシーンと静まり返る。
バザッという幕を下ろす音と共に、かがり火の松明が一気に燃え上がり、舞台に立ち並ぶ踊り子達が明るく浮かび上がる。
始めはゆっくりと扇子を旗めかせながら踊る。そして、終盤に近付くほどクルクルと舞台狭しと踊り周る。
香蘭だけはこの舞台が最後だと噛み締めながら、湧き上がる思いをひた隠し、懸命に踊っていた。
そして終盤…
香蘭の唄の番となり、衣装を着替え舞台の中央に立つ。
観覧席からは大きな歓声と共に、香蘭の芸名『鈴蘭』の名を呼ぶ声があちこちから聞こえてくる。
香蘭はいつになく緊張していた。
これで本当に最後なんだ…と、辛かった思い出が走馬灯のように脳裏をかすめる。
優しい琴の音がなり始め心を込めて歌い出す。
既に視界は涙のせいでよく見えない。
ただ、最前列には晴明と寧々それに虎鉄が見守ってくれている。その気配を感じるだけで心強い。
沢山のありがとうの気持ちを込めて全3曲を歌い切り、ホッと静かに息を吐く。
そして香蘭は深くお辞儀をして、拍手喝采の中舞台を後にした。
鏡の前に座り化粧を施しながら香蘭は思う。
踊りや唄を取ってしまえば私はちっぽけなただの女に過ぎない。
芸事以外に何も取り柄がなく晴明様の役に立つどころか、今は知らない刺客に命を狙われるただの厄介者だ。
この国で1番大切な方の命を晒してまで、守られる資格なんて私にはない…。
出来れば人知れず、ひっそりと生きていくべきではないかとも思ってしまう。
だけど…既に離れ難く…彼のいない世界で1人生きていける自信もない。
「どうすれば…。」
1人小さく言葉を吐いて香蘭は俯く。
「姐様、どうされましたか?」
近くに支度を手伝っていた寧々が、それに気付き香蘭に声をかける。
「大丈夫なんでもないわ。
…最後だと思うと少し緊張してきたの。」
香蘭は慌てて取り繕い何んでもないと微笑む。
幕が上がるまで後少しとなり、踊り子達は舞台の端に整列すると、暗転代わりの幕持ち達がザワザワと動き出し舞台に幕をかける。
その後に踊り子達は舞台へ急いそと歩みを進める。観客席からはきっと黒い影が幕に写っているのだろう。
観客からの声援がより一層大きくなる。
お囃子の横笛が奏始めると、先程までのザワつきが急にシーンと静まり返る。
バザッという幕を下ろす音と共に、かがり火の松明が一気に燃え上がり、舞台に立ち並ぶ踊り子達が明るく浮かび上がる。
始めはゆっくりと扇子を旗めかせながら踊る。そして、終盤に近付くほどクルクルと舞台狭しと踊り周る。
香蘭だけはこの舞台が最後だと噛み締めながら、湧き上がる思いをひた隠し、懸命に踊っていた。
そして終盤…
香蘭の唄の番となり、衣装を着替え舞台の中央に立つ。
観覧席からは大きな歓声と共に、香蘭の芸名『鈴蘭』の名を呼ぶ声があちこちから聞こえてくる。
香蘭はいつになく緊張していた。
これで本当に最後なんだ…と、辛かった思い出が走馬灯のように脳裏をかすめる。
優しい琴の音がなり始め心を込めて歌い出す。
既に視界は涙のせいでよく見えない。
ただ、最前列には晴明と寧々それに虎鉄が見守ってくれている。その気配を感じるだけで心強い。
沢山のありがとうの気持ちを込めて全3曲を歌い切り、ホッと静かに息を吐く。
そして香蘭は深くお辞儀をして、拍手喝采の中舞台を後にした。



