一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

「そなたは本当に美味しそうな顔をして食べる。ずっと見ていたいくらいだ。」
若晴明様からフッと笑いかけられ少し緊張が解けた気がした。

「すいません…女子（おなご）がガツガツ食べるのは、はしたないですよね…。」
ずっと見られていたなんて…恥ずかしくて真っ赤になって俯いてしまう。

「いや、そんな事はない。俺はただ嬉しいんだ。
一座では満足に食事が取れないと、寧々から聞いていたから心配していた。」

晴明様には私の事が、寧々ちゃんを通じて何だって筒抜けだったみたいで、それこそ居た堪れない気持ちになる。

そういえば…と思い出し、パッと顔を上げ晴明様を見やる。
「あの…もしかして…
寧々ちゃんに甘いものを届けてくださっていましたか？」

座長の怒りに触れた日は夕飯抜きがよくあったけど…そんな日に寧々ちゃんがおまんじゅうやおだんごなど甘いものを、よくどこからともなくもらって来て私にだけこっそり渡してくれた事を思い出した。

「…少しでも腹の足しになればと思って…。」
なぜだか晴明様は照れ臭そうにそう言ってそっぽを向いてしまう。

「貴方様が差し入れてくださっていたなんて、何も知らず…いつも美味しく頂いていました。ありがとうございます。」

今までずっと私は独りぼっちだと思っていた。
こうして知らないところで誰かに見守られいた事を知る由もなかった…。

そう思うと気持ちが一杯いっぱいになってきて、瞬きをしたら涙が今にも溢れ落ちそうになってしまう。

「俺はただ、少しでもそなたの力になりたいと…。」晴明様がそっと私に目線を戻す。
すると今にも泣き出しそうな私に、なぜか動揺して慌てて立ち上がりこちらに近付いて来てくれる。

「鈴蘭殿に泣かれると心が痛い。
もう終わった事は気にする必要はない。それよりも、今ちゃんと食べるんだ。」
そう言って私の頬にそっと触れ、目頭の涙を拭ってくれる。

私も気持ちをなんとか落ち着かせ、残りの朝食を黙々と食べ勧める。