一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

「今夜の公演が終わったらそなたを身請けしたい。明日からは後宮が整うまでとりあえず別邸に。」

「はい…。不束者ですが、どうか末長くよろしくお願い致します。」
香蘭は抱きしめられたまま顔を煽り見る。

晴明は嬉しさと照れ臭さで戸惑いながら、
「こちらこそ。」
と、笑顔を向ける。

そこからの晴明の行動は早かった。
直ぐに寧々に伝えるや否や、副座長の承諾を得る為直談判する。
薄々何かを感じ取っていた副座長は、渋々ながら身請けの話しを受け入れる。

寧々から光の速さで兄に伝わり、別邸を仕切る寧々の母油淋に伝えられた。別邸はにわかに活気付き、ワイワイと皆が香蘭を迎え入れる為に動き出す。

それからしばらく香蘭は、部屋の窓からそっと祭りの様子を見て過ごす。

今までだって同じ光景を蚊帳の外から見ていたはずなのに、今日はそれよりも数倍心が痛い。
結局私はどこにいても、こういう運命なのかもしれないとさえ思い始める。

興奮気味に祭りから帰って来た寧々が、その様子を楽しそうに話しながら、露店で買ってきた美味しそうな食べ物を机いっぱい所狭しと並べる。

「陛下。先に毒味をさせて下さい。」
何処からともなくやって来た虎鉄が、抜かりなく2人が口にする全ての食べ物を毒味している。

「私、屋台の物を食べるのは初めてです。露店で売っている食べ物はこんなにも種類があるのですね。」
香蘭にとってどれも初めて見る食べ物ばかりで、椅子に座りながら嬉しそうに目を輝かせている。

香蘭としては、それだけでも少し祭りに参加出来た気がして嬉しく感じるのだ。

「全ての問題が解決したら、そなたと二人で各地の祭りに参加したいものだな。」

晴明はにこやかに微笑んでいるが、内心は本気で香蘭が今まで抱えていた寂しさや、悲しい思い出を全て汲み取り、楽しいものに塗り替えてやりたいと強く思う。

「国中のお祭りに出向くとなったら、公務どころではなくなりますよ。」
寧々は冗談半分で笑いながら聞き流がす。

「俺は至って本気だぞ。生涯をかけて国中の祭りに参加するのも、それはそれで楽しそうだ。」
軽口とも捉えられそうな事を簡単に言ってのけ、それを必ず成し遂げるのが晴明だ。

虎鉄はひそかにそれを肝に命じ、今後の護衛計画を少し見直さなければと、本気にとらえ頭を働かせていた。

「姐様、改めてご婚約おめでとう御座います。
姐様がいない舞台はきっと華が無くなったように寂しくなりますが、姐様のご決断を私も嬉しく思います。
どうか、末永く陛下共々私の事もよろしくお願い致します。」

「こちらこそ。寧々ちゃんが側にいてくれる事、とても心強いわ。これからもよろしくね。」

それから机に並んだ露店の珍しく食べ物を囲み、ささやかな宴のように夕食を晴明と2人楽しんだ。